第二十八話 雑談
「さて、これからのことだが――」
王は夕食の最中にそう切り出した。
夕食は、竜肉のソテーがメインだった。竜という超希少な魔獣の肉を使った料理。マジでおいしいかったです。
「――当面は大量の技能獲得を目安に動いていこうと思う」
ここには、俺と王とアルしかいないので、堂々と【特殊技能】のことを話せる。
「そうだな。僕もそう思うよ。やっぱり、技能は沢山あるだけいいし……」
「でも、僕の【技能奪取】は相手から技能を取ってしまうんですよ」
俺がそう言った瞬間、王はニヤリと笑った。悪戯を思いついた子供のようだ。
「囚人から技能を取ればいい。王城の地下牢には、凶悪な犯罪者どもが沢山いる。そういう奴らの技能を奪えるのなら好都合だ。中には帝国の兵士もいるしな」
なるほど。それならいい。
「ところで、今日の分はもう創ったんだよな」
「はい。【聖王国語】を創りました」
「なら、明日は【技能融合】を創ってほしい」
王はそう言ってきた。
「王? あれって確か【特殊技能】じゃありませんでしたか?」
「あぁ。でも、試してみる価値はあるだろう。というか、ランクが足らないのなら、Ⅱに上げればいいだけだし」
「まさか、裏技を使わせる気ですか?」
「あぁ。勿論」
何やら話が進んでいるな。あっ、このサラダおいしい。ソースと野菜がマッチしている。
「まぁ、明日はそれを試してくれ」
「あっ、はい。わかりました」
明日の獲得予定の技能は【技能融合】か。
「よし、じゃあ、次は帝国についてか」
「帝国についてですか?」
俺は訊ねる。
「あぁ、そうだ。アルが見つけた中でも【異界勇者】になれそうな者は一人しかいなかったんだろ」
「間違いありませんよー。【裏技能】だと思うんですけどね。あの女の子。普通に表にさえ、【特殊技能】持ってたしね」
「ちなみにその能力は何なんですか?」
「あぁ。翔の方がこのままいけば有利なんだよな。【次元召喚】。何でも呼び出すことができる。普通の能力だ」
えっ、何それ。普通に強そうなんだけど……
「もう一個は……」
「あぁ、【源流魔術】。こっちは結構いいやつっぽい。初めて見たやつだから確証はないけどね」
そっちも普通に強そうなんだけど。絶対、それ負けるやつだよね。俺負けるよね。
「ふむ。敵は【王之欠片】もないか。やっぱり勝てるんじゃないか」
フラグにしか聞こえてきませんが、どうしろと、俺にどうしろと?
「まぁ、王。こいつは技能を沢山獲得していけるわけですから、理論上最強の【異界勇者】じゃないですか。最悪、こっそりと相手から技能を奪ればいいだけですし」
「それもそうか。それではご馳走様でした。だったけ、日本とやらの文化は」
「そうだよ。ご馳走様でした」
俺も軽くごちそうさまと呟く。
明日からどうなるんだろう。




