第二十七話 王城に住むことになった
「はい。僕はこっちにつきます」
俺はそう言った。というかそうする方がいい。アルが現在ついているのはこっち。帝国には、頼れる身がない。少なくともあちらにはもう一人いるわけだからね。
「よかった。帝国は大量人物の異世界召喚を行ったからな。四十名ほどが召喚された様だ」
そうだったのか。というかそれほどの人間を召喚しても、【異界勇者】って出てこないんだな。がチャでいうところの最高レアリティ的なところなんだろう。
「というわけで、今後どうしていきたいのだ。君がやりたいことをできる限りサポートしていくつもりだが……」
王はそう言ってくれる。とは言っても、そこまで欲しいものはない。
「まぁ、住む場所も無いだろう。アルの『塔』に住むわけにもいかないだろうしね。王城に住みなよ」
「え?」
「正気ですか!?」
俺と隊長の声が重なる。
「あぁ、正気だとも。というかアルにも住んで欲しいんだけどね。今日のところは君からの了承が得られただけでいい。これからサポートしていこう」
王はで出口に向かって歩き出した。彼は立ち去る瞬間に、呟いた。
「【特殊技能】は知っている。今日の夜、地下牢まで来い」
ボソッと隊長に聞こえないように言った。
どういうことだ。
「じゃあ、今度また……」
出口から王は出て行った。と同時にメイドが現れる。
「お部屋にお連れします」
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メイドに連れられて来たのは、広い部屋だった。
フカフカそうなの大きなベッドが置かれている。俺一人では小さいぐらいだろう。他にも装飾品が部屋に鏤められている。
「こちらの部屋が寝室となります」
「ということは他の部屋もあるの?」
「はい。異世界人の中でも人気な浴室もあります。ただ、浴室は少し離れて、三階の王族用の大浴場を使うようにと、王より言われおりますので」
ふむ。王族用の大浴場に……へ、へぇー、すごいなー……
「俺なんかが王族用の大浴場使っていいの?」
「勿論でございます。現在のあなたの立場を貴族の立場に置き換えると、公爵レベルの権限は普通にあります。あなたが一言、土地が欲しいと言えば、土地を与えられるでしょうし、最高級の素材が欲しいと言えば貰えるでしょう。そのぐらい、貴方には期待がかかっています」
ふ、ふーん。へ、へぇー。もう、なんか終わってる気がする。俺にそんな期待掛けられても、俺の胃が痛くなるだけだから。
「食事は食堂、二階の食堂になります。今日は王族と一緒に食べるようにと言われております」
ふむ。ご飯も王族と一緒に……もう、お腹が痛くなってきた。
「明日の朝は王族の皆様と一緒に朝食をとられた後に、この世界の講義と親衛隊による訓練が予定されています」
明日は忙しそうだな。講義、勉強の時間と訓練。日本の頃よりずっと大変そうだ。
「宿のスイートルームにはキャンセルを入れるそうです。アルフレッド様はそちらにお泊まりになるそうです」
メイドはそう言った。
なんというか、育て上げられている感がある。キッチリとした仕事人だ。
「というわけで今日からよろしくお願いします。専属メイドとして、きっちり働けさせて頂きます。カケル様」
そう言って、彼女は微笑んだ。




