第十話 戦闘観戦
俺は歩きながら、熊を探してた。もし倒せるならそうしてしまいたい。ここで過ごすにしろ、あの熊は凶悪だ。あれだけ技能を奪っていたのに心配って、俺は心配性なのかなと思い始めてしまう。
「てか、どこにいるんだよ。全然いないじゃんか」
俺は愚痴る。本当に全然いない。死んでるならいい。だって、害悪にしかならないから。俺に被害はいらない。
「どうする?」
自問する。
薄暗い洞窟の中で過ごすのは嫌だしな。どっちにしろ、ここから出る必要はある。出口を探す必要はある。でも、出口なんて、すぐ見つかるだろう。最悪、ぶち抜けばいい。
「グォオオ!」
遠くの方で叫び声がした。
俺は行ってみることにした。
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そこでは、絶賛、戦闘中だった。二体のモンスターが争ってる。
二足歩行の醜悪な緑色の生物。ゲームでの名前ならゴブリン。多分、そうだろう。そいつらが五体ぐらい。
もう一方が、真っ白な毛に包まれた狼。しかし、所々血を浴びて、紅くなっている。こっちは一体。
俺は遠くから眺めていよう。
まず、ゴブリンが短剣を振るう。それを狼が避け、狼が叫ぼうとした。
「グォオオ!!!」
咆哮だ。それにより、火、水、土の球が具現化する。一斉にそれはゴブリンたちに向かう。
でも、それでゴブリンたちは終わらなかった。間一髪に等しいほどに避ける。一匹命中、四匹外れという結果になった。
ゴブリンは諦めずに剣を振るう。
しかし、狼の方が恐らく格上だ。魔術を使えるなんて、すごすぎる。ボスキャラ的な扱いだろう。
「ゴブ!」
謎の掛け声。ゴブリン語かなにかで合図をとった。
そして、一斉に剣を投げた。
「は?」
剣を投げたら、武器なくなるじゃん。
俺はそう思った。しかし、ゴブリンたちは投げた剣に向かって走り出した。
そうはさせまいと狼は魔術を放つ。カラフルな攻撃が宙を舞って、ゴブリンを狙う。残りの四名は戦闘慣れをしているのか。そう簡単には当たらなかった。
ゴブリンたちは地面に落ちた剣を拾うと同時にそのまま狼に突き刺す。
「グォ!!!」
鮮血が飛び散り、白い毛が紅く染まっていく。
「あいつ、やったのか」
俺は呟く。しかし、俺は夢中になって、気付かなかった。後ろから迫りくる熊に。
「グォオオオ!」
……あっ、【探索】で熊さんいるのがわかるよ。うん。なんで後ろにいるんですか?
「うぉっ!」
俺は熊の攻撃をギリギリで躱していく。が、狼とゴブリンが戦闘している広場のような空間に出てしまった。
……やべぇ
俺は思わず、震える。
「ウォオオン!」
熊の叫び声に狼も叫ぶ。こちらを向いて、人間と認識したからか、俺を敵対視するように臨戦態勢になっている。
「ゴブ? ゴブ!」
ゴブリンもこちらを向いて、剣を構えた。
あっ、この状況って詰んでない。
全員と戦闘ですか?
俺は泣き顔になりながら、構えた。




