第94話・ベアルの現状
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「えへへ・・・カイトとおそろい♪」
「・・・・良かったな。」
「いいな、わたしもおそろいしたいな。」
「ヒカリ、この服は、領主か監督官のみが着ることを許される、特別な礼服です。 私でも、着ることはかないませんのよ?」
「ふーん? お姉ちゃんが着られないなら、いいやーー」
おそろいの、白い宮廷衣装のような服を着る、カイトとノゾミ。
それをうらやましがる、魔族のヒカリ。
それを押しとどめる、カイトの妻のアリア。
先日の『ノゾミ伯爵爆誕事件』から、早いもので二日。
今日は、ここベアルで住民に、ソギクの話ついでに、領主の挨拶を俺がした後、バルアへ転移して、そこでも領主の挨拶をする予定だ。
その二日で、両方の街に、お触書みたいなのをあちこちに貼って、事前告知したらしい。
ここまでの二日間、アリアには『領主の挨拶』の、猛特訓をさせられた。
いや、あれは死にそうになったね。
当初は、ノゾミもこれに参加していたのだが、途中何回も寝たので退場させられたのだ。
結果、カイトがバルアの挨拶分まで、覚えることとなったのだが・・・・
(皆様、今日はお日柄もよくえ~~~~~と・・・・)
カイトは、移動中の今も覚えさせられた、領主の挨拶を、心の中で復唱していたのだが・・
(わたしが、この街の領主の、カイト・・・あれ、なんか違う?? いや、良いよな?)
二日の特訓程度では、カイトでは覚えられようはずもなく、しょっぱなから内容を忘れてしまっていた。
オツカレサマである。
(よし、こうなったらベアルでは、『ソギク作って、街を大きくしましょう!!』 バルアでは、『俺がこの街の監督官だぞ☆』でいいよな?)
いいわけあるかい。
それでは、どこかのバカな大道芸人である。
でも、カイトはバルアの街で、大道芸人まがいのことをして、若干有名になってしまっているので、あながち間違いでもないだろう。
当の本人は、知る由もないが。
アリアから教えてもらった、領主の挨拶の内容を、まったく思い出せないカイトは、これで妥協することにしたのだった。
アリアに言ったら、メチャ怒られるので。
大丈夫。
話の大事なことは、忘れていない!!
カイトは、屋敷の扉を開け放ち、外に設置されている挨拶台へと、進んで言った・・・
◇◇◇
「領主様。 私にはそんなに広大な畑を管理するなど、無理ですじゃ。」
「わしのところも、二年ほど前に嫁夫婦が出稼ぎに王都へ行ってしまってなあ・・・」
「あたしも、女手一つじゃあ・・・・」
「領主様の言いつけなら、わしはこの老体に鞭打ってがんばりますぞい!!」
目の前にいるのは、ベアルの住民35人。
残りの3人は、病気で来られないらしかった。
まあ、それはいい。
予想していたことだ。
しかし・・・・・・・・
「なあ、この街の住人って、もしかして老人ばかりなのか?」
「は! 申し上げます!! 60代以上の方が34人。 40代の方が3人。 10代の方が1人となっております!!」
俺が、後ろを向いて質問をすると、騎士の一人がそう、報告してきた。
超高齢社会だった。
少し考えれば、分かる話である。
この寂れた街に、どんな人間が残るというのか、という事。
働き盛りの男手が、仕事のないこの街に、残っているはずがなかった。
とどのつまり、残っているのは病人と、老人くらいだ。
ベアルの、ソギク栽培その後、産業発展計画は、早くも頓挫した。
にわかに、ヤル気まんまんの、ご老人が幾名か見受けられるが、無理はさせられない。
カイトはまたも、自分の考えの浅さに首をしめらることとなった。
魔の森の一部を、カイトが開墾してそれを領民に与える。
領民には、高く売れる作物を栽培してもらい、それを暫定的に領主が買い取り、市場に流通させる。
もちろん、適正価格で買い取る。
この街が発展するまでの、応急措置だ。
なるほど。
商会ギルドのないこの街で、異議を唱えるものは少なそうだ。
だが、それに従事する者・・・・・
つまり、この街の住人の実態が、かなり大問題だった。
彼らに合わせ、少ない土地を開墾するという手もあったが、それでは街の復興にも程遠い。
とどのつまりである。
「分かりました・・・・ 皆さん、後から具体的な計画や、皆さんに合った作業量の調整などを行ってみます。 今日はお集まりいただき、ありがとうございました。」
人数も少ないせいか、パラパラと豆でも取りこぼしたような、そんな音が屋敷前に響き渡る。
領主様の挨拶は、予定より、何十分も早く終わってしまった。
本来なら、ここでその、具体的な計画とかを、この住民たちと話し合う場を、設けるつもりだったのである。
しかし現実は、超高齢社会のせいで、今の計画のままでは、実行に移せなかった。
集まってくれた街の住民たちも、「よっこらせ!」という声とともに、家路についていく。
その一連の行動が、街の再興計画の頓挫を、暗に示していた。
ヤバい・・・どうしよう?
「カイト様? 演説ご苦労様です、と言いたい所ですが、後半は仕方ないにせよ、前半のアレはなんですか? 私がお教えした演説はどこへ行ったのですか? ・・・カイト様? もしや・・・・・・」
般若のような顔を、こちらへ向けてくるアリア。
例の、お母さんモード発動である。
・・・ヤバい。 こっちもどうしよう・・・・・・
この後、カイトは演説終了予定時刻まで、アリアの特訓を、こってりと受け続けるのだった・・・・
なかなか話が、進みません・・・・・・




