第93話・バルア監督官
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「ノゾミ・・・・のようですわね。」
アリアが目の前に、紙を広げ、ノゾミの名を口にした。
・・・・・・・・・・・ん? 今俺たち、何の話していたっけ?
え~~~~っとぉ・・・・・・
そうそう!
バルアで国王様から、何か書状見たいのを受け取ったんだっけ。
それで、今はアリアに読んでもらってるんだった。
俺が読んでも、分からない内容とか、ありそうだからね。
その内容は確か・・・・
思い出した、思い出した。
ベアルの領主を選出するんだっけ??
確かその者の名は・・・のところでアリアが、いったん言葉を区切ったんだっけ?
・・・・・。
いや待て。
そこでなぜノゾミの名が出てくる??
まさか・・・・・
俺が『まさか・・・』と言った表情を、アリアに向けると、彼女はコクリとうなづいた。
そこには、諦めたような感じも見受けられる。
「そのまさかですわ、カイト様。 あなたが今しがた行った、バルアの領主がノゾミになってしまったということですわ。」
言っていることが分かりません。
ちょっと・・・・・いや待って?
それって決定なの??
ノゾミが、領主様??
「伯爵の称号を、与えられるようですわね。」
「え、何? 私に何か、くれるの??」
アリアの『与えられる』という言葉に呼応し、キラキラした目を俺に向けてくるノゾミ。
国王様がね、『バルア』って言う街をくれるらしいよ。
ついでに伯爵様にしてくれるんだってさ。
あまりにも分からない事態に、しばし思考を止める俺。
しかし、アリアの言葉はそれでとどまることはなかった。
「・・・・以上がこの書状の内容になりますが、これは建前ですわね。」
「建前?」
「ええ。 領主一人には、ひとつの領地しか与えられぬ決まりになっているのです。 ですが、父上・・国王は、バルアの地も、あなたに押し付けたかったようですわ。」
王様からの、書状をくるくると巻き、ノゾミに手渡すアリア。
ノゾミは、それを武器とでも誤認したのか、ブンブンと振っている。
楽しいことでも見つけたかのように、ヒカリもそれを借りて、同じことをする。
国王からの書状が、トンデモ無い扱われようである。
「ちょうど、程よい人材がいなかったようですわ。 先日のお姉・・ルルアムの一件以来、貴族の汚職調査が進んでいますからね。 そのあおりが強いのでしょう。」
「ちょ・・・・待ってくれ!! だからってどうして、ノゾミなんだよ!? アリアにも、兄弟姉妹とかいただろ!?」
アリアは、王位継承権第十五位とか聴いたことがある。
つまり、上には十四人いるはずだ。
その誰かに、あげればいいだろう。
・・・・領地をあげるあげないって、なんか変だけど。
「お姉さま四人は、すでに他国などへ、嫁いでおります。 十人の兄弟や従兄弟のうち、半分ほどが汚職に手を染めていたようですわね・・・・」
哀愁漂う感じに、そう言うアリア。
すごいな・・・・
そこまでの政治腐敗って・・・
いや、この場合は、『貴族腐敗』か?
「残った従兄弟二人は、すでに領地を所有しておりますし、兄四人もすでに領地持ちか、王位継承のために王宮に居ります。 適任がいなかった、と言われればそれまでですわ。」
「アリアとか、他の身内は・・・・?」
「・・・・・・カイト様。 私はあなたの妻ですわ。 領地を賜ることなどできません。 私の身内も、さっき言った者たちか、すでに隠居していつ死んでしまうやも分からない、ご老体の者ばかりです。 新たに領地を、というのは難しいでしょう。」
「俺に、押し付けるって言うのは・・・?」
「文字通りですわ。 建前上はノゾミが領主で、実際の監督は、あなたが行うのです。」
なんてこったい。
こっちは、ベアルだけでも死にそうなのに。
ノゾミが領地をもらって、それを俺が監督??
わけが分からん。
たしかに、俺でもヤバいのに、ノゾミが領主なんて無理があるように思う。
っていうか、ノゾミは決して、この領地から出ようとしないだろう。
俺や、アリアがいる限りは。
「ちなみにですが、これをつき帰すことはかないませんわよ??」
「え、なんで!?」
いま、まさにそうしようとしていたのですが!!
クーリングオフって、七日間は有効なはずだよ!?
日本の知識だけど。
「・・・ふつう、これは本人が受け取る前に、国王が内容を読み上げるのです。 その上で承諾した場合にのみ、書状は受け取るものなのです。 ・・・だというのに、あなたという人はまったく・・・」
うなだれるアリア。
クーリングオフ、不能らしい。
だから、あの時王様は、さらっと何か言った後、俺に書状を押し付けて、逃げるように去っていったのか・・・
「こういった書状は、地位のある代理人が受け取ることも容認されているのです。 それが、あなた様ですわ。」
俺を、ちょっと責めるようにそう言い放つアリア。
怖い。
その目、怖いです、アリアさん。
しかし・・・・いったい何が、何がどうなって・・・・!
「・・・俺が、あのバルアまで・・・・?」
自分を指差して、再度質問をする俺。
俺は、知らぬ間にトンデモ無いことをしてしまったらしい。
現実逃避をしたいがために、アリアに質問したのだが・・・・
「ええ、そうですわ。 仕方がありません。 カイト様、この街の再興も含めて、がんばってまいりましょう。」
現実は非情だった。
ベアル領主兼、バルア監督官。
俺にそんな称号(?)がついてしまった瞬間だった。
そして・・・・・
「カイト、この髪留め、似合ってるかな?」
「・・・ああ。 似合ってるぞ?」
「えへへ・・・ お土産、ありがとうね?」
おそらく、歴史上初めての人外の、貴族(伯爵)様誕生の瞬間だった。
あの、ヘラヘラ笑っていた王様には今度、厳重に抗議に行きたい。
作者自身、『マジかい。』って思ってます。
これからも、よろしくお願いいたします。




