第92話・国の勅状
これからもがんばっていきます!!
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「あなたは、馬鹿なのですか?」
「はい、ごめんなさい。」
俺の目の前で、仁王立ちして腕を組むアリア。
帰ってきて早々、玄関くぐった途端にこれだ。
おれは、自然と正座の体制をとってしまった。
「今、この街の財政は逼迫しております。 それはご存知ですね?」
「・・・・・はい。」
ご存知です。
領地の住民38人の力は伊達ではありません。
「今は、小銅貨一枚たりとも惜しい限りです。 だというのに・・・・・ なんですか!? このガラクタは!!?」
そう言って、彼女が指差すのは、俺がお土産にと、バルアからみんなに買ってきた数々の品。
といっても、一人一個ずつなのでさほど多くは・・・・
いや、結果として量は多くなったけど、高い品ではないから問題は無いように思う。
「カイト様。 下々の者たちのことも考え、メイドや騎士達の分まで用意したその考えには賛同いたしますわ。 ですが、時と場所を考えてくださいまし!! 」
「はい、ごめんなさい。 次から気をつけます。」
このお土産の数々は、冒険者をやっていた頃の稼ぎから代金は出したので、問題は無いはず。
無いはずだが、アリアの言い分はごもっともなので、反省だ。
「そしてこの種!! あなたはいったい何を考えているのですか!!」
ん?
それはお約束のソギクの種だよ?
「あなたはいったい、どれだけの範囲を耕作地にする気ですか!!??? これでは、このべアル領すべてを耕作地にしても種が余ってしまいます!!!」
えーーーーーーーーーーー!!???
三袋だよ!?
一袋の大きさは、身長170センチくらいのアリアの三分の二くらい。
そんなに多くは見えないのに!?
「ソギクの種は、一粒一粒がとても細かいのです。 少しの量を撒くだけで、多くのソギクが実るのです。」
そう言って、アリアは手のひらに袋の中身をすくって見せた。
・・・本当に小さい。
ちょっとの鼻息で、飛んでしまいそうなぐらい小さい。
「こんなにたくさん、使い切れませんわ! いったいあなたは、バルアでいくら散財してきたのですか!!?」
はて、宿泊費と、お土産代のもろもろを合わせたらいくらになるだろうか?
「え~~っと・・・・銀貨三枚くらいだったかな?」
そういった途端、さらに表情を厳しくさせるアリア。
え・・・・やっぱり使いすぎた??
「カイト様。 怒りませんわ。 私は怒りませんから、正直に言ってください。 これだけのものを買ってきておいて、銀貨三枚で済むはずがありませんわ。」
ギコギコと、般若のような顔をこちらに向けてくるアリア。
美女の相乗効果からか、怖さは一級品だ。
「ち・・・違う、違う!! まずは話を聞いてくれ!!」
「なんですか? うそつきはゴブリンの始まりですわよ?」
ともかく、このままでは食い殺される未来しか思い浮かばない。
言い訳がましく、バルアでの出来事などを、かいつまんで説明すると、徐々に彼女の表情も柔らかくなっていった。
っていうか、最後にはどーでもいい話でも聞くかのような感じになった。
一緒に行った、メイドさんたちからの証言もあって、俺がうそをついていないことは証明された。
「・・・・分かりましたわ。 あなたが、ありえないくらいに運が良くて、おバカな事がよ~~~く、分かりましたわ。」
怒られることは無かったが、ディスられた。
俺ってそんなに、バカだろうか?
今度、イリスさん辺りにでも聞いてみよう。
「それで? 父上から受け取ったというその書状は、どこへしまったのですか?」
「ああ、それならここに・・・」
なんか大事っぽい気がしたので、服の裏ポケットに入れておいていたのだ。
アイテム・ボックスで運ぶより、こうして運ぶほうが、持ち運ぶときに『大事』って気がしてさーーー。
そう、気分の問題だ。
「おや、まだ中身は確認されていなかったのですね・・・・ 中身を拝見しても、よろしいですか?」
「うん、いいよ~~~~~?」
こういうときは、アリアも俺に一応、許可を求めてくる。
一応今は、俺の顔を立ててくれているらしい。
でも、正直な話、彼女が俺を今はどう思っているのか、かなり心配だ・・・・
「・・・・・・・・・!!!!!???????????」
リボンを解き、中身を広げて真ん中辺りまで読み進めたところで、硬直してしまったアリア。
何か、あったのだろうか?
するとアリアが、俺のほうへ未だかつて見たことも無いほど青い表情で、俺に視線を向けてきた。
「・・・・・・どったの?」
「カイト様は・・・この内容はご存知なのですか?」
そう言って、書状を指差すアリア。
「いいや? いきなり国王様の押し付けられたから。」
『よろしく頼む』とか言われたから、魔物退治でもしろとか書いてあるのかな?
途端に、さらに表情を暗くするアリア。
頭まで抱えだして・・・いったい何があったというのだ!?
「はああ・・・・・カイト様らしいですわね。 ここには、こう書いてあるのですが・・・・・」
要約すると、あのバルアの街のバルカンとか言うバカ貴族が、貴族を辞めさせられたらしい。
なんか、不正ばかりしていたんだとさ。
うむ。 悪者には天罰じゃ。
でも、それって俺には関係なくない??
「彼は、あの街の領主だった者です。 それが解爵されたとなると、バルアを監督する、新しい領主が必要となるらしいですわ。」
そうだろうね。
誰がするのか知らないけど、がんばってね。
あの街きれいだったから、汚さずにいてくれるとうれしいかな?
「そこで、国の議会で話し合いがされたようですわ。 誰を後任にするか・・・・と。」
ふーーーーーん。
「決まったので、こうして勅状をしたためたようですわ。」
ん?
勅状??
命令書ってやつ??
何でそんなものを俺に?
アレかな。
『この人を領主にするから、賛成してあげて?』みたいな。
喜んで、賛成してあげましょう。
国が推す位なら、よほどの大人物に違いない。
「その者の名はーーーー・・・・・・。」
『中身は、きちんと確認してから受け取りましょう。』
そんな言葉をこの日、俺は学んだのだった・・・・・
区切りが悪くてごめんなさい。
次話は、明日に投稿いたします。




