第91話・なんかもらった?
これからもがんばっていきます!!
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「バルカン伯様!! 緊急事態です!!」
バルアは、気候も温暖で、この屋敷の部屋のドアも、開け放たれたままになっている。
私は、この街の領主たる、バルカン・ゼド・バルア伯爵である。
人呼んでバルカン伯じゃ!!
愚民共よ、よく覚えておくがいい。
私は将来、この国を牽引する尊き存在なのだからな!!
私はそんな寛大な領主なので、いきなり入ってきたこのバカ秘書にも、お咎めは無しじゃ。
そんな愚民一人にかまっている時間は無いのでな。
「なんじゃ、騒々しい。 もっと落ち着いてから、報告は持ってこんか。」
「申し訳ございません、バルカン伯様。 しかし、まずいことになりました。」
「まずいことじゃと? まさか、国へ上納する税金を一部、横流ししていたことがバレたわけではあるまいな?」
他にも、バレたらまずいことならいくらでもある。
まあ、バレても政府高官に賄賂でも送って、もみ消してもらうがな。
それぐらいは、日常茶飯事じゃ。
緊急事態というほどでもない。
「違います。 国王陛下が、この街へご到着されたとの事です!! 用件は、バルカン伯様の解爵だとか・・・・」
「な・・・なんじゃと!!????」
今までも、お忍びという形で国王が、この領地を訪れることは幾度かあった。
だが、今回は違う。
解爵。
つまり、貴族としての地位を奪われるということ。
しかも国王御自ら、その勅状を・・・・・・・
そんな、バカな・・・・・!!!
今までは・・・
「た・・確かめるぞお!!!」
「お・・お待ちください、バルカン伯様!!」
こうしてはいられない。
早く事実関係を確かめて、財産をすべて、隠さねば!!
守銭奴領主は、大急ぎで屋敷から、王都方向に向かう城門へと向かった・・・
◇◇◇
「昨夜は、申し訳ございませんでした。 大公様。」
「いいって、いいって。 あと、その『大公様』って呼び方を直してくれるとうれしいな。」
「ありがとうございます。 たいこ・・・・いえ、カイト様。」
俺の数歩後ろを歩むメイドさんが、俺に恐縮至極といった感じで、声をかけてくる。
昨日、無事にソギクの種を手に入れた俺達。
まだ昼過ぎだったこともあり、今から転移でべアルへ帰ろうとしたところで、メイドさんの一人の顔色が、非常に悪いことに気がついた。
体調が優れないのかと、聞いてみると、どうやらそうではなく、今夜の宿を取ってしまったという事らしい。
もう少し、交渉に時間がかかるかもしれないと思った彼女は、いつの間にやら、宿を予約してしまったようだ。
当然、俺の名で。
宿というのは、当日に宿泊キャンセルすると、キャンセル料を結構取られる。
相場は、七割くらいだろうか?
かといって、これを知らん振りすると、名前に傷がつく。
簡単に言うと、その町で金輪際、宿に泊まれなくなるのだ。
で、俺は思った。
キャンセル料を取られるくらいなら、宿泊したほうが得じゃないか、と。
どうせ、この街に来ることはそう、無いだろうし、今はウキウキ気分だ。
こんないい街、観光位していきたい。
アリアだったら、キャンセル料払ってトンズらしていただろうが、俺的にはそれは惜しい。
ということで、この街に泊まることになり、俺は他の五人とともに遊びまくった。
もちろん、荷物は全部、俺のアイテム・ボックスに放り込んで・・・・
海に行ったり、カフェでお茶をしたり、魔法で大道芸人まがいの事をしてみたり。
他にもいろいろ。
実に楽しかった。
と、いうわけで今日こそはベアルに帰る日だ。
俺たちばかり、遊んでしまって非常に申し訳ないので、屋敷の人たちにお土産を買って帰る事にする。
ノゾミには、魚の形をした髪留めでいいかな?
ヒカリには、このクラーケンの皮でいいかな?
アリアは・・・・・難しいな。 安物買ったらゴミと間違われてしまいそうだ。
騎士の皆さんには、鞘袋かな?
メイドさんたちには、この魚風のブローチを・・・
シェフには、魚の干物でいいかな?
そんなことを考えているうちに、あっという間に時間は昼になった。
せっかくだから、昼食もここで摂ってから帰ろうとしたところで、街の中央を通る、街道が妙に騒がしいことに気がついた。
何かあったのだろうか?
そう思い、ヒョコッとヤジウマ達の間から、顔をのぞかせてみると・・・・
ちょうど、王様が乗った馬車が、俺の目の前を通り過ぎるところであった。
ヤバい。
今、何かすごく不吉な予感がした。
サッと首を引っ込めた俺。
しかし、場所もそれに呼応するように、俺の前辺りで停車した音が聞こえた。
ここで逃げると、面倒くさい事になりそうなので、俺も動きを止める。
ササッと、俺の前にいたヤジウマ達が、兵士に道を開けられる。
「おお!! やはりカイト殿ではないか!! このようなところで会うとは奇遇ですな!!」
わははっと、俺に向かって両手を広げて歓迎の意を表してくる国王様。
当然、俺達は注目の的である。
「おや、アリアはいないのですかな?」
周囲の視線をまったく気にかける様子も無く、キョロキョロと、辺りを見回す王様。
「今日は、ちょっとした買い物で、赴いただけですから。 アリアは家で留守番です。」
途端に、残念そうな表情になる王様。
俺がいるから、アリアもいると思ったのだろう。
会いたかったのかな?
「そうか・・・ べアルはなにも無い街だからな・・・・」
あんたが言うな、という言葉がのどまで出て来るのをこらえる。
「しかし安心せよ!! もう大丈夫じゃ!! ここであったのも何かの縁!! これをそなたに託す、よく励むように!!」
「はあ・・・・?」
王様が、そういって差し出してきたのは、赤いリボンで結ばれた、筒状のナニカ。
なんだか賞状っぽい。
「ではスズキ公よ! また会おう!!」
「はあ・・・・?」
そう言い残し、王様は再び馬車に乗り組み、ガラガラと音をたてて、去っていった。
いったい、何だったのだろうか?
俺はその賞状を、ロクに確認しようともせず、そのままベアルへと戻った・・・・
そもそも、国王がなぜ、この街にいたのか、ちゃんと少しは考えるべきだったと思う・・・
前半と、後半で一日のブランクがあります。
バルカンが猛ダッシュしていた頃、カイト達はハントさんと交渉中でした。




