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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第6章 この街に新産業を!!
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第89話・バルア

これからも、がんばっていきます!!

感想など、ありましたら、どんどんお寄せください!!

「私、感服いたしました!!  さすがは大公様です!!」


「あ~~、分かったから、そろそろ止めてくれない?  恥ずかしいからさ。」


「は・・!! し、失礼しました!!」


俺が、ダダ漏れる『大公様、スゴイ』の話をさえぎると、後ろの騎士三人が、敬礼で俺に無礼をわびてくる。

このやり取りは、今日で十回目。

形式上、俺は今大公なので、貴族の移動用の服を着ている。

といっても、かなりきらびやかな服で、動きづらいったらありゃしない。


メイドさん二人までいるので、まるでまだ、べアルへ向かっている道中みたいな気がする。

しかもその二人は、すごくでかいリュックを背負っているのだ!!

中身はパンパン。

非常食とか、簡易テントだとかが入っているらしい。

俺たち一行は、いったいどこの魔境へ向かうと言うのだろうか?


女性二人にこんなものを持たせるのは、男として忍びないので、騎士の人たち同様、持ってあげようとしたら、断られた。

アリアや、メイド長に怒られるんだってさ。

ちなみに、メイド長とはクレアさんのことである。

俺への忠誠が強すぎて、こんな事態になっているらしい。

そんなに俺に忠誠を誓うほどのことを俺は、彼女にしただろうか?


それはともかく。


「昨日は大変でございましたね、大公様。」


「ああ、今日もな。」


一同が俺に、苦笑いを返してくる。

ちなみに、ノゾミやヒカリも今は、ベアルでお留守番だ。


あれから、お姉ちゃんことアリアを、一緒に連れて行くと聴かないヒカリ。

ノゾミが行くのも、不満があったらしい。

と、いうわけで三人とも置いて行くことにしたのだが、ゴネるゴネる。

最終的に、せっかく直した屋敷を一部、破壊するまでの大ゲンカに。


一晩が過ぎ、ノゾミが譲歩じょうほすることで決着がついた。

何と言うか・・・・・・・

今日、俺が出発するときの、ノゾミの捨てられた子猫のようなシュンとした表情は、今思い出すだけでも胸が締め付けられる。

いや、早く終わらせて、すぐ帰ればいいだろう!


街道からバルアは、そう遠くはないらしく、しばらく歩いて森を抜けると、目の前には一段低いところに、大きな港湾都市が広がっていた。


「大公様。 あれがバルアの街です。 今見えている海の向こうの対岸も、我がアーバン法国の領土となっております。」

騎士の一人が、俺にそんな説明をしてくる。

目の前に広がる、バルアという街が面した海は、とてもきれいだった。

一面真っ青に染まった海は、表面が太陽に照らされて、キラキラと宝石のように輝いている。


実は、王都も海に面した街なのだが、海はきれいではない。

日本の首都圏近くにある、某海岸のように、海が黒いのだ。

はじめて見たとき、かなりガッカリしたと申し添えておく。


「さあ行くぞ!! いざ海に!!」


目的を完全に忘れたバカイトは、ズビシッと、バルアを指差し、意気揚々と街の見えるほうへ向かって行った。

これには、使用人たちも、苦笑いを隠しきれなかった。



◇◇◇


「ソギクの種ですか?」


「ええ、なるべく沢山たくさん欲しいのですが。」


今俺たちは、ギルドへ来ている。

と言っても、俺がよく行っていた、冒険者ギルドではない。

来ているのは、商会ギルドだ。

この街の流通品のほぼすべてを、この場所で取り仕切っている。

卸問屋のような場所だ。

そこの受け付けの女性に、ソギクの種がないか聞いたら、渋い顔をされた。


俺は何か、変な事でも言ったろうか?

は!?

もしや、貴族の服を着ているから、足元を見られている!!??

だめだ、だめだ!!!

貴族だけど、今はお金なんてないよ!?


「実はつい先ほど、ある商人の方が大量に買われてしまって・・・・・ 今、倉庫は空なのです。」


なーーーーーーーーー!!????


「次の入荷は、一ヵ月後となっているのですが・・・・・ それまで待ちますか?」


待てません。

鉄道を一か月分先延ばしなんて、イヤです。


「もしくは、その商人に直接買い付けると言う形になりますが・・・・・」


よし、そうしよう!!

すぐさま、受付嬢さんに、その商人の居所を教えてもらう。


「あの、カイト様? 差し出がましいようで恐縮なのですが、それでは仕入れ値が高騰こうとうしてしまいますが・・・・・」


メイドの一人が、不安そうに俺を見上げてくる。

だが・・・


「心配するな!!  値切ればいい!!」


得意満面で、メイドに対し、そう言い放ったカイト。

一応言っておくが、カイトはものを値切ったことなんか人生経験上、無い。

ましてや相手は、商人。

アホなカイトは、頭が八十パーセント『鉄道』に埋め尽くされ、そこのところを考えていなかった。

ここにアリアがいれば、きっとこの愚行ぐこうを止めさせていたことだろう。


だが幸か不幸か、彼女はここにはいなかった。


意気揚々と、スキップ交じりで商人のいると言う場所へと、歩を進めるカイトであった。

使用人たちは、苦笑している。


こうして、カイトの不安しかない『種の買い付け』という、そんなに難しくは無いはずのミッションを遂行すいこうするのだった・・・・・



バルアは、もう少し続きます。

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