第88話・新産業準備
これからもがんばっていきます!!
感想など、ありましたらどんどんお寄せください!!!
「カイト様。 昨夜は大変失礼しました。 一昼夜でカイト様が、この街の再建策が思いつくはずがないと考えておりましたので、あのような態度をとってしまいました。」
俺に謝りながら、ディスって来るという、器用な真似をするアリアは、とりあえず昨夜、俺がおかしくなったと言った事を謝ってきた。
「お兄ちゃん、ごめんね? 真夜中にお兄ちゃんが奇声を上げたから、てっきりパーになっちゃったかと思ったの。」
上目遣いに、魔族のヒカリも俺をバカにしてくる。
ヒカリ!
おれは奇声なんか発してはいないぞ!?
この街の再建策が分かったことに、喜びを感じていただけだ!!
目の前にいる屋敷のメイドさんをはじめとした使用人の皆さんも、俺に謝ってくる。
昨夜は、かなり散々なことを言われたので、これくらいは当然だ。
「しかし、よくこの街でならソギクが育つと思い立ちましたわね? もしかして前から、目星をつけていらっしゃったのですか?」
「いや、目星って言うか・・・」
そこまで言葉を発したところで、言うが早いか、俺の言葉をさえぎるようにノゾミが、言葉をかぶせてきた。
「私が昨日、カイトに提案したんだよ?」
「まあ、そうだったんですの!? おかしいと思いましたわ。 カイト様がこんな、私ですら気がつかなかったことに気が付くなど、ありえませんからね。」
ノゾミ、すごい!!と言いつつ、アリアが再び俺をディスりまくる。
アリアよ。
あまり言いたくないことなのだが、君は俺の嫁だよね??
どうしてそう、俺をバカにするんだい?
王宮での、あの一幕は、演技だったのかい??
そう思いつつ、アリアが俺にプロポーズ(?)してきたときのことを思い出す。
・・・・・・・。
あれがもし、演技だったというなら俺はもう、誰も信じられない。
でも、あれからというもの、アリアは俺を説教して、バカにしてくることしかない。
なんというか・・・・・
そう、王宮での一幕はマボロシだったのではないか、とさえ思えてくる。
「しかしカイト様。 ノゾミのこの話を聞いて、『イケル!!』とおっしゃった、あなたの眼は本物ですわ。 これからもその意気でがんばってくださいまし!」
ノゾミをベタ褒めした後、俺を少し褒めてくれるアリア。
喜んでいいのか不明だが、ディスられてはいないので、笑顔で返す。
アリアも満足げだ。
さて。
「アリア。 早速住民の人たちに、この計画を話したいのだけれど、住民をこの屋敷の前に集められるかい?」
善は急げ。
早速カイトは、この栽培計画を実行に移すことに決定した。
そのためには、住民たちの合意が必要不可欠なので、すべきはそこからだ。
だが・・・・・
「カイト様、お待ちください。 すべきことをひとつ飛ばしておられます。 まずは、開墾の道具などが必要です。 その上で、植える種がなければ栽培などできません。」
・・・・・・・ごもっともです。
カイトは平常運転だった。
種がないのに、作物を栽培など、できるわけがない。
でも、開墾は俺の魔法で広い範囲をバコッと一気にしてしまえばよい。
だからと言って開墾の道具は必要なのだが。
ふう~~~と、ため息をひとつ吐くとアリアは騎士の一人に、何かを指示した。
「カイト様、騎士の数人に種の買い付けをさせてきます。 よろしいですね?」
アリアの言葉は、
よろしいですか、ではなく、よろしいですね。
俺に選択肢はないようだ。
だが俺にも発言くらいさせてほしい。
「ま・・・待ってくれ!! 買い付けってどこに行くんだ??」
「そうですわね・・・ 帝国のほうが近いのですが、国外へ買い付けとなると、手続きが面倒なのでバルア辺りに行かせるつもりですが? あそこはあらゆるものが集まる貿易都市ですし。」
聞いたことがある。
というか、ここべアルへ至る街道の途中で、『バルア』と書かれた看板みたいなのを見かけた。
そこまでは転移が使える。
「よし、なら俺が転移で近くまで送るよ!! そのほうが早いだろう??」
この言葉で、部屋にいる全員が固まってしまった。
ノゾミと、ヒカリを除いて。
「大公様。 お言葉はうれしいのですが、ここからバルアは遠いのです。 城の魔導師でも、ここまでの長距離移動はかないません。」
やさしげな表情で、いまさっき、アリアから買い付けの命令を受けた騎士の一人が、そんなことを言ってきた。
あ、信じてねえな、このヤロウ。
っていうか、なんでアリアまで疑いのまなざしを向けて来るんだ!?
お前は知っているだろう!!
俺が転移が使えるのを!!
「カイト様、あなたはバルアへ行った事があるのですか?」
ああ、なるほど。
そっちね。
「大丈夫だ。 ここに来るとき、バルアと書かれた分かれ道を見つけた。 そこまでは転移できる!!」
アリアに、胸を張ってそう言う。
納得したのか、アリアも『なるほど』と言って、それ以上は追求してこなかった。
人数にも、運ぶ荷物量も、カイトの転移には関係ないので、まさにうってつけだった。
だが、そこにはかなり、どうでもいい問題があった。
「カイトが行くなら、私も行くからね?」
ノゾミがそう、俺に詰め寄ってくる。
まあ、そうなるよな。
ノゾミ一人くらいなら問題ないだろう。
「お兄ちゃんが行くなら、私も行く!!」
黒い髪をなびかせ、ヒカリもノゾミ同様、付いてくると宣言する。
ヤレヤレ・・・・
しょうがないな。
一人が二人になっても、問題はないだろう。
カイトは、魔族を街に連れて行ったりなんかしたら、どうなるかをまったく考えていなかった。
しかも、話はここでは終わらなかった。
「お姉ちゃんも行くでしょ!? 一緒じゃなきゃイヤだよ?」
「え!? いえ私は、その・・・・・」
ヒカリが、アリアのドレスの裾を引っ張る。
これは問題だ。
この街からアリアがいなくなったら、その隙にこの街の住人が、いなくなる気しかしない。
だが、それをヒカリは良しとしない。
本日中の出発は、諦めた方がいいかもしれないな・・・・・・。
結局、この話の決着がつくのは、次の日のことであった。
予定にない話、開始です・・・・




