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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第5章 大公様とベアル
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第87話・新産業?

これからも、がんばっていきます!

感想など、ありましたらどんどんお寄せください!!

尺の関係で、少し長くなってしまいました。

今は、真夜中。

カイトが、王宮でもらった懐中時計の針は、左方向に直角になっていた。

地球とは違うようなので、はっきりとは分からないが、今の時間は夜の九時過ぎではなかろうか?


この世界の住人なら、大抵はもう、寝静まっている時間だ。


そんな中、ベアルにあるひときわ大きな屋敷に、居を構える、スズキ公たるカイト大公爵は、自分にあてがわれた巨大な執務室にその身を、置いていた。


置いてある品は、一人分の小さなベットと、勉強机のような小さな机と、年期の入った椅子いす

後はゴミ箱くらいだ。

広い部屋の、十分の一も使っていない無駄である。


が、そんなことを気にした風でもなく、カイトは机の上で、頭を抱えていた。


「う~~~~~~~~ん・・・・・・・・・・・。」


今日でベアル到着三日目。

今日も、ダリアさんの元でいろいろと教えを乞うた。

どうしたら、この街は発展するだろうか、と。


だが、あまりいい答えは返ってこなかった。

当たり前である。

街往まちいく子供に、「俺の悩み、聞いてくれないか?」と言って、いい答えが返って来ようはずもない。

まあ、見知らぬ子供よりは、見知ったドラゴンの方が幾分いくぶん、マシと言えるが。


とにかく。


カイトは、この街を発展させねばならない!

なぜなら、発展させないと、鉄道なんかできないから。

逆に言うと、発展させると、この街はどこまでも大きくなるらしい。

鉄道の立地には、最高の環境だ。


が、現状の市民は38人。

領内に視野を広げれば、もう少しは居るかもしれないが、たかが知れているだろう。

税収なんて、考えられない。

今この領地の財政は、家一軒すら立てられないほど逼迫ひっぱくしている。

今すぐ、どうにかしてこの状況を打破だはしなければならなかった。


だが、対応策は見つからない。

誰も来ない街に、誰が店を開いて、商会が来て、人が住み着くというのか。


「あああ・・・・・・・。」


鉄道が遠くなる・・・

だんだんだんだん、遠くなる・・・


カイトの妄想は、早速暗礁さっそくあんしょうに乗り上げ、停滞した。

モチベーションもダダ下がりである。

こんなところで、あーうーと、言っていても仕方がないのは分かっているが、街をどうにかせねば、鉄道はありえない。

そう考えると、寝ても居られなかった。

アリアの計略は、ちょっとカイトには効き目が大きすぎたようだ。


「すまない、俺には、この街を発展させるやり方がわからない・・・・」


血の涙を流すカイト。

この光景だけ見れば、良い領主様が、民のためを思って、それでも至らない自分を責めて民に対し、届かない自責の念と共に、謝罪を民に向けている風に見えるが、当然違う。

鉄道よ、引けそうになくてすまない。

そういう、アホな考えから流している血の涙と、自責の念である。


そんなアホの居る部屋に、来訪者があった。

ノックはない。

遠慮もなく、ガチャっとドアノブが回され、室内へ誰かが入ってくる。

ノックをせずに入って来るのは二人。

それは、ノゾミとヒカリだ。

ヒカリは、基本的にアリアと一緒によくいるので、一人で夜、この部屋を訪れることはないだろう。

と、すると・・・・・・


「カイト、今日も横で寝ていい?」


「まだ起きてたのか。 好きにしていいぞ。 俺はまだもう少し、考えることがあるから。」


入ってきたノゾミを横目に、また考えにふけるカイト。


すると、ガンッ!! ゴンッ!!!  ズリズリ・・ズルズル・・・・・・

と、ものすごい大きな音が部屋に木霊こだまする。


何事かと、音の聞こえる部屋の入り口のほうへ視線を向けると、ベットを担いだノゾミの姿があった。


「あ、カイト。 このベット、私の部屋から持ってきた物だから安心していいよ?」


「・・・・・そうか。」


ツッコミどころはそこではないが、ツッコんでも意味なさそうなので、スルーする事にした。

いやでも、ベットはかなり重いはずだ。

それをまったく気にかけた様子も無く、あのように軽々と・・・・


いや、よそう。

そんなことを考え出したらキリが無い。

元気なのはいいことだ。 うん。


ベットを、所定の位置(?)へえ付け終えたノゾミは、ベットに寝ることは無く、そのまま腰掛けて、俺のほうをじっと見る。

そうされると、逆にこっちが気になってしまう。


「どうした、眠れないのか?」


その質問に、首を横に振るノゾミ。


「ねえ、カイト。 この街は、どうして人が居なくなっちゃったのかな?」


「それは簡単だ。 ダメな監督官とかいうやつが、この街を何もかも壊しちまったからさ。」


その、監督官が街の税収を勝手に上げ、人々が逃げてしまったのだ。

間悪く、警備兵団も全滅。

そりゃ、人も居なくなるさ。

俺のそんな答えに、ふーんと、うけ答えるノゾミ。


「じゃあさ、その壊しちゃったことを直せばいいって言うことだよね??」


笑顔で、そういって俺の顔を寄せてくるノゾミ。

そんなに簡単ではない。

街をそのまんまで、修復したって意味が無いと、アリアに昨日、小一時間、説教されたのだ。

市民の税率を少なくしたって、産業の無いこの街に人は来ない。


「産業・・・・・か・・・。」


つまるところ、シェラリータのように、産業をおこせれば・・・・・


だが、調査はした。

この近辺は、魔石で産業をおこせるほど、埋蔵量まいぞうりょうは多くない。

掘ったってすぐに枯渇してしまうのだ。

ならば農業を、と思ったが、ここは魔素が少し濃いらしく、作物がうまく育ちにくい。

ようするに、八方塞はっぽうふさがりだ。

山で芝刈りとか、桃太郎じゃあるまいし・・・・・・・


「ねえ、カイト? こんな知識、らないかもしれないけど、魔力に強い作物があるんだよ?」


それは知ってる。

でもそれらは全部、薬草や錬金術の触媒用のものばかりだ。

栽培の成功例なんて無い。


「ソギクっていう植物、知ってる?」


ん? 

今までギルドの依頼では、見たこと無いな。


「パンの材料になる、穀物らしいんだけど・・・・・・」


「ま・・・待て!! どういうことだ!!???」


今まで、パンの材料はコムゴという、小麦粉っぽい物しか知らなかった。

ソギクなんて植物は、初耳である。


「この植物はね、魔力が強い場所でしか育たないの。 王都みたいに魔力が薄い場所では育たないから、パンの材料としては下火みたいなんだけど・・・・・・」


ほうほう。


「ソギクのほうが、パンがふっくら焼けて、美味おいしくできるらしいの。 高級で、なかなか口にできない物らしいんだけど・・・・・・ねえ、ここで栽培してみようよ!! 私も一度食べてみたい。」


俺も一度、食べてみたい。

じゃなくて!!!!

なんてこったい!

それはベアルの気候(?)に、ぴったりな植物なのではないか!!??

しかも、すごい産業に発展する感じがプンプンする。

いい・・・・これはいける!?


「の・・ノゾミ!!  どこでそんなこと知った!??」


「ふ・・・ふえ!?」


ノゾミは字が読めない。

どこでこんな情報をつかみ取ったのか、情報の真偽を確かめる上でも知りたい!!

豹変ひょうへんした俺に、目をパチクリさせるノゾミ。

そこでノゾミの口から出てきた人物は・・・・


「厨房のシェフの人が、そんなことをいつも言っていたの。 アレを使って、料理をしてみたいって。」


情報の真偽は明らかになった。 シェフの言葉にいつわりなし。

ふはははははは!!!


鉄道は近い!

近いぞ!!!


「カイト?」


再び妄想でトリップしたカイトは、ノゾミの言葉なんか耳に入っちゃいなかった。







「か・・・カイト様!? いかがなされたのです!!???」


「お兄ちゃんがパーになっちゃったーーーーーーー!!!」


「大公様!! お気を確かに!!!」


カイトの絶叫ぜっきょうを聞いて、屋敷中が大騒動となったのは、まもなくのことである・・・・


次話は、明日投稿いたします。

おやすみなさい。

ちなみに何ですが、「カイト様!? お気を・・。」と、言ったのはアリア。

         「お兄ちゃんがパーに・・・・」と、言ったのはヒカリ。

         「大公様!! お気を・・・・」と、言ったのは屋敷の護衛さんです。

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