第9話・駅へ
拙い文章ですが、よろしくお願いいたします。
夜の間は、特に何も起きなかったらしく、無事朝を迎えることができた。
昨日はまったく食欲がわかなかったのに、今日はいつもどおりお腹がすき、普通に食べることができた。
昨日食べなかった分、とてもお腹がすいている。
カイトは彼らから、食料を分けてもらった。
もっとも、冒険者の食料は基本、携帯食料なのであまり美味しくはなく、とても食欲がそそられる代物ではないのだが・・・
贅沢を言ってはならない。
昨日は水以外、何も口には出来なかったではないか。
ありがたく頂かなくてはならない。
味のしない、カ○リーメイトとでも思おうではないか。
・・・さすがに無理があるかな?
そのような感じで、食事はすぐに終了した。
携帯食料の特長は、ここにある。
冒険者は、いつ何時誰から襲われるか分からない。
そんな中で調理など、出来ようはずも無い。
そのような状況の者のために作られたのが、この携帯食料である。
無事食事が終わったファデオさん達は、カイトに向き直る。
「あんちゃんは、これからどーすんだ?」
出発間際、ファデオに突然そう質問され、「俺は・・・」と続ける。
森に居たってしょうがない。
俺は異世界の鉄道を一生かけて、味わいつくす夢があるのである。
これは大事な事だ。
夢は、人生の活力である。
何より、町が大きければ大きな駅があると、カイトは自負していた。
それには当然、町へ行かなければ話しにならなかった。
町までは近いらしく、半日もあれば着くとのことだった。
カイトは、彼らに付いて行く事にした。
「俺も、町に連れて行ってください!!」
そう言って、頭を下げるカイト。
その返答を予想していたのか、彼らは苦笑交じりにこれを、許可してくれた。
運が良かった。
彼らが進む道を、後から付いていくカイト。
暗い森がだいぶ長い間、続いた。
時折、見慣れない動物達を見つけては、それを狩っていくファデオさん達。
しかし、しばらくもすると暗い森も徐々に明るくなってきて、草原のような場所へ出た。
森の中では見えなかったが、背後には雪を頂にかぶった、山脈が見えた。
実に雄大な景色だ。
そのころには、道中で人とすれ違うという事も出始めてきた。
ファデオさんたち以外に、この世界で人と会うのは、これが始めてである。
カイトはいたく、感動をした。
そして遠くにはいつしか、堅牢そうなレンガ造りの、高い城壁がそびえているのが見えてきた。
こういった街は、自己の守護が最大の要とされる。 城壁自体は特に、珍しい事ではない。
まして魔族領に近い街である。
ちょっとやそっとの兵力などでその、強固な壁が崩れることはない。
そんな関係から、街への通用門はこの町の場合は、四つしかない。
そのそれぞれが、関所のような役割を果たしており、不審者に目を光らせていた。
そして、そのうちの一人がカイト・・・つまりは俺である。
この世界で黒目黒髪は珍しいし、身分証明書を持っていないので怪しさ満点、というわけだ。
ついでに言えば、カイトの立派な服装は、貴族のようにしか見えず、その点でも怪しさ満点であった。
まさに、『不審者の鏡』のような存在である。
しかしファデオさんが門番の人になにやら説明してくれたらしく、俺も通してもらえた。
曰く、町の中に在る冒険者ギルド発行のギルドカードがあれば、各都市などの通行料、つまり関所を通過する料金が免除されるらしい。
それは良い事を聞いた。。
作っておいて損はなさそうだから、俺も後で行ってみよう。
ちなみに通行料はファデオさんが、俺の分を払ってくれた。
ありがとうございます。
昨日からずっとお世話になりっぱなしであるが、そろそろお別れである。
彼らには彼らの、するべき事がある。
これ以上、お世話になることは出来ない。
「冒険者にはならないのか?」
ファデオさんがとても残念そうに話す。
「はい。やりたいことができたのでそれをやってみます。」
冒険者するのは列車に乗らない日だけにするのだ。
当分は、この世界は仕事がなさそうなので、冒険者なるモノをしなければならないだろう。
冒険者じゃなくて、駅とかで働けたらいいな・・・。
求人は無いだろうか?
いや、この際アルバイトとかして、お金をためてから休みの日に、列車旅というのも良いかもしれない。
鉄道関係の仕事は過酷って聞くし。
「では、大変お世話になりました。またどこかでお会いしましょう!」
俺は足取り軽やかに、手を振りながらファデオさん達と別れたのだった。
異世界の鉄道の駅へ向かって。
冒険者のランクについては後日明記いたします。
さて、主人公は駅へたどり着けるのでしょうか・・・???
9/6:加筆修正しました。