第85話・バカ亭主
これからも、がんばっていきます!!
感想など、ありましたらどんどんお寄せください!!
「む~~~~~!!!! あの方はいったい、どこへ行ったのです!!???」
「そ・・・それが、『少し出かけてくる』と仰せ付かった後、ノゾミ様と転移魔法で外出されてしまったようで・・・」
メイドの一人が、恐縮して私にそう、報告してきます。
カイト様が、いなくなったのに気がついたのがつい、十分ほど前。
盗賊団の一味の数人を騎士の物たちが捕縛したようなので、どこにその者たちを収監するかでご相談申し上げようとしたところ、屋敷には居らず。
街のどこかに視察にでも向かわれたのかと思いきや、そんな形跡も見当たらず。
ならばどこへ、と少し取り乱していたところ、挙動不審なメイドがいたので、問いただしたところ、そんな報告があがりました。
あ~~~も~~~~~!!
私は、感情的な人間ではないはずなのですが、あの方のこととなると、無性に感情的になります。
と言うより、彼は自由すぎます。
自由な上に、考えなしです。
そのせいで、私含め、周りの者たちは振り回されっぱなしです。
『盗賊捕縛』については、いい判断だったと思います。
ええ、治安なくして巨大都市は成り立ちません。
しかし彼は、この壊れた街を復元だけしようとしたのです!!
あ、あなたはいったい何を考えているのですかーーーーーーーー!!!
はあはあ、ぜいぜい・・・・・・・
・・・・ええ、分かっています。
何も考えていなかったのでしょうね。
いつものことです。
壊れた街は復元する。
なるほど、単純明快でやり易くはあるでしょう。
でも、考えてみてください。
復元、と言うことは、そこにあった建物が元通りになると言うこと。
住宅はいいですが、店はどうします??
今の住人は38人。
これでは村です。
この街を巨大都市にするには、多くの人間や、商会組織などを誘致せねばなりません。
そのためには、既存の建物など、邪魔にしかなりません。
城壁も同様です。
そんな囲いがあっては、街の発展はその城壁内でストップしてしまいます。
目指すは、大陸有数の貿易都市です!!
私は領主の妻として、彼を下から支えていくつもりなのです。
そこのところ、カイト様は分かっておられません。
なんだか、一連の再建作業などは、すべて私が指示している気がします。
それでは困ります。
彼にも、この街の再建を手伝っていただきたいです。
いいえ、発展の指揮を執っていただきたいです。
だというのに・・・・・
「お姉ちゃん、大丈夫??」
落胆している私に、労いの言葉をかけてくるのは、ヒカリです。
カイト様が、お拾いになった魔族の少女です。
胸元に輝く、赤黒い魔石が、魔族たる証拠です。
昨日お帰りになった後、名前がないのは不便だと申し上げたとこと、『名前はヒカリだ! それ以外は考えられない!!』とおっしゃり、そのようになりました。
依存はないです。
どこの言葉か分かりませんが、いい響きですし。
ですが・・・・・・・・
「お姉ちゃん、無理しないでね? 疲れたら私の魔法でどうにでもするからね???」
「ありがとう、ヒカリ。 私は大丈夫です。 労ってくれてありがとうございます。」
そうして頭をなでると、彼女はうれしそうにはにかみます。
自分でやっておいてなんですが・・・・
どうにも調子が狂います。
魔族というのは、人間を見下す存在です。
頭なんかなでようものなら、この街を吹き飛ばすくらいに怒るでしょう。
記憶を失っているようなので、納得と言えば納得ですが、記憶をなぜ失ったのかを考えると、自分の妄想で背筋が凍りつきそうです。
先ほどの彼女の、『どうにでもするからね?』の言葉を、悪いほうへ考えてしまいます。
そしてなにより。
「ヒカリ、あなたはカイト様のことをどう、思っておられますか?」
「ん・・お兄ちゃんのこと? 大好きだよ!! 森にいた私を安心させてくれたんだよ!!」
「・・・・そうですか。」
これです。
カイト様、ほいほいとこんな爆弾を拾ってこないでください!! (二重の意味で)
はあ・・・・・・・
言えた口ではありませんでしたね。
私もほいほいと、拾われた口なのですから。
ノゾミにしてみれば、横からいきなり湧いて出てきた、女なのですから。
彼女は特に、そうは思っていないようですが・・・
あああ・・・複雑な心境です。
しかも、これまた本人たるカイト様は気付いておられない!!
良くないですが、拾うなら最後まで責任を取ってください。
言っておきますが、家に置いておくだけでは責任の一欠けらも取れていませんからね?
むしろ、その行動は事態を悪化させます。
・・・・話を戻しましょう。
どうしたら、彼をこの街の発展に乗り気にさせられるか。
ちらっと、横にいるヒカリを見てみます。
「?」
可愛いですね。
昨日拾われたばかりなのですから、意見を聞くなど意味はなさそうです。
さてさて、どうしたものか・・・・・・
「!?」
そのとき、私の頭の何かに、引っかかる物がありました。
これは使えるのでは?と、私の直感がささやきます。
いえいえ、これは私自身、分かっていないことなのですから、それを利用するなんて・・・
「でも・・・」
やってみる価値はありそうです。
っていうか、カイト様はいつお戻りになるんですか!?
ふつふつと再び、怒りが渦巻いてくるのを、ヒカリで癒して私は、カイト様を待ちます・・・
次回、鉄道がほんの少し、近く(?)なります。




