第77話・動物の心
これからもがんばっていきます!!
感想など、ありましたらどんどんお寄せください!!
カイトと、魔族を探している最中、茂みの中から黒い女の子が出てきた。
その少女は、すぐに魔族だということが分かった。
戦闘になり、無数の氷柱を撃ってきた魔族の子。
その量はすさまじく、とても拳だけで対処できそうには無かった。
でもそのとき、カイトが私に転移魔法をかけ、私の体は遠くへと、強制的に転移させられた。
最初、何が起きたのか分からなかったが、自分のいる場所がなんとなく分かると、すぐにカイトたちのいる場所へ急いだ。
足の速さには自信がある!!
しかし、私が現場に駆けつけて見た、光景は信じ難いものだった。
『安全だから』『感情があるから』
そんな理由で、カイトは魔族の少女をあろう事か、保護しようとしていたのだ。
言っている事が分からなかった。
カイトは何を言っているの??
危険だから、討伐するよう言われたから、魔族はとっくに討伐したと思っていたのに。
そう言ったら、「俺は殺人鬼じゃない!!」と、言ってきた。
私が言っているのは、そんな事ではない。
なぜ、魔族と行動をともにしようとしているのか、という点についてだ。
討伐対象を、なぜ保護しているのか、という点についてだ。
だがカイトは、まったく見当違いな事を言ってきた。
「ノゾミ、俺がこの子を殺さないのは、感情があるからだ。盗賊の討伐依頼であいつらを殺さないのも、同じ理由だ。 心があれば、いつかきっと分かり合える。」
それじゃあ・・・・・・・・
じゃあ、カイトが前に王都で、私に渡してきたあの、盗賊たちの討伐証明証は・・・・・?
あれを私に渡してきた本当の理由って、私が人外だからなの??
人間じゃないから、感情なんて無いと思ったから、私に押し付けてきたって事??
分からない。
カイト、何を考えて、あれを私に渡してきたの!?
カイトはどうして、『人外』と、私を思っているのなら傍においているの??
人外は感情が無いから、討伐しちゃうの!?
それをカイトに聞いたら、求めていた答えとは、違う答えが返ってきた。
「ノゾミ、俺がお前を傍においているのは、お前と話していて楽しいからだ。 魔石を食っちまった後、お前は感情豊かになって、俺とも話せるようになって・・・」
感情がある!?
私に感情があるから傍においてくれているの??
じゃあ、これまでの事は??
ほかの動物たちは、魔物たちは、感情が無い言っていうの!?
私が、人型じゃなかった頃は、感情が無かったって言うの!??
腹立たしかった。
私にだって、昔の私にだって感情くらいある!!
さっき、カイトと倒したレッドウルフたちにだって・・・・・・
カイトはきっと、それすら分かっていない。
だから教えた。
あのレッドウルフたちの気持ちを。 言葉を。
これでカイトも、少しは分かってくれたと思った。
それなのに、返ってきた言葉は期待したものとは、まったく違った。
「・・・・・これからは、意思疎通が図れそうな相手には・・・」
ここまでカイトが言った事で分かってしまった。
彼が言おうとしている言葉が。
悲しくなった。
私がカイトに伝えたい言葉は、気持ちはそうじゃない!!
カイトのバカーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
あふれ出る感情。
気付いたときにはカイトを殴って、森の中を走っていた。
暗い、森の中を。
それはまるで今の、私の心を投影しているようだった・・・・・・
◇◇◇
「ノゾミーーーーーー!! どこだーーーー!?」
すでに探し始めて、かなり長い時間がたっていると思う。
ノゾミの姿は、どこにも見当たらなかった。
最初は、街道近くでうずくまっているだろうくらいに思っていた。
しかし、この近くには、ノゾミらしい気配は無かった。
ノゾミが、本当に行方不明になってしまった。
「わたしのせい?」
保護する事にした魔族少女が、俺に困ったような表情を向けてきた。
違う。
この少女のせいではない。
俺が悪い。
俺がまた、何かノゾミの逆鱗に触れるような事をしてしまったからだ。
だが、理由が分からない。
ノゾミが、怒った理由が。
王都のときと同じだ。
俺は何もわかっていなかった。
メヴィアさんに教えてもらった事も、何も形を成していなかった。
自分で自分が許せない。
あそこまで怒った、ノゾミの感情ひとつ汲み取ってやれない自分が情けなかった。
「ううぅぅぅ・・・・・・・」
いつの間にか、立ち止まってしまっていた俺は、次々にあふれ出てくる涙をとめることができなかった。
はは・・・最悪だ。
一度にとどまらず、二度までも・・・・・・・・・・
隣にいる魔族の少女は、どうして良いのか、わからないって顔をしている。
でも、どうにかしてくれようと、なぐさめようとしてくれているのが分かる。
でも、そんな少女の心遣いが、逆に俺の心へ突き刺さった。
暗い森の中、俺のすすり泣く声だけが響く。
そんな時、不意に後ろから肩をたたかれた。
こんな森の中で誰だ?
流した涙もぬぐわずに、振り返るとそこにいたのは、騎士を二人連れたアリアだった。
なかなか帰らない、俺を探しに来たようだ。
事情をすべて話すと、アリアは魔族少女を取り合えず、預かってくれる事になった。
こんなに情けない話を、アリアは真正面から終始、聴いてくれた。
悲しいという感情と、こんな話を聞いてくれるアリアという存在に感謝する気持ちが、俺の中に渦巻く。
話を最後まで聞いてくれたアリアは、右手の人差し指をこちらに突き立て、叫ぶように口を開いた。
「細かい事情は後でみっちり聞いてあげます!! あなたは、彼女を連れ戻してきなさい!! さもなくば今すぐ王都へ連れ帰って終身刑ですわよ!?」
結婚して間もない嫁に、発破をかけられてしまった。
そうして俺は再び、森の中に入っていった。
それでも、ノゾミの気配はなかなか、見つけられなかった・・・・・・
もう何話か続きます。
戦闘シーンもあります。




