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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第5章 大公様とベアル
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第77話・動物の心

これからもがんばっていきます!!

感想など、ありましたらどんどんお寄せください!!

カイトと、魔族を探している最中、茂みの中から黒い女の子が出てきた。

その少女は、すぐに魔族だということが分かった。

戦闘になり、無数の氷柱を撃ってきた魔族の子。


その量はすさまじく、とてもこぶしだけで対処できそうには無かった。

でもそのとき、カイトが私に転移魔法をかけ、私の体は遠くへと、強制的に転移させられた。

最初、何が起きたのか分からなかったが、自分のいる場所がなんとなく分かると、すぐにカイトたちのいる場所へ急いだ。

足の速さには自信がある!!


しかし、私が現場に駆けつけて見た、光景は信じがたいものだった。


『安全だから』『感情があるから』

そんな理由で、カイトは魔族の少女をあろう事か、保護しようとしていたのだ。


言っている事が分からなかった。

カイトは何を言っているの??

危険だから、討伐するよう言われたから、魔族はとっくに討伐したと思っていたのに。


そう言ったら、「俺は殺人鬼じゃない!!」と、言ってきた。

私が言っているのは、そんな事ではない。

なぜ、魔族と行動をともにしようとしているのか、という点についてだ。

討伐対象を、なぜ保護しているのか、という点についてだ。

だがカイトは、まったく見当違いな事を言ってきた。


「ノゾミ、俺がこの子を殺さないのは、感情があるからだ。盗賊の討伐依頼であいつらを殺さないのも、同じ理由だ。 心があれば、いつかきっと分かり合える。」


それじゃあ・・・・・・・・

じゃあ、カイトが前に王都で、私に渡してきたあの、盗賊たちの討伐証明証は・・・・・?

あれを私に渡してきた本当の理由って、私が人外だからなの??

人間じゃないから、感情なんて無いと思ったから、私に押し付けてきたって事??


分からない。

カイト、何を考えて、あれを私に渡してきたの!?

カイトはどうして、『人外』と、私を思っているのなら傍においているの??

人外は感情が無いから、討伐しちゃうの!?

それをカイトに聞いたら、求めていた答えとは、違う答えが返ってきた。


「ノゾミ、俺がお前を傍においているのは、お前と話していて楽しいからだ。 魔石を食っちまった後、お前は感情豊かになって、俺とも話せるようになって・・・」


感情がある!?

私に感情があるから傍においてくれているの??

じゃあ、これまでの事は??

ほかの動物たちは、魔物たちは、感情が無い言っていうの!?

私が、人型じゃなかった頃は、感情が無かったって言うの!??

腹立たしかった。

私にだって、昔の私にだって感情くらいある!!


さっき、カイトと倒したレッドウルフたちにだって・・・・・・

カイトはきっと、それすら分かっていない。

だから教えた。

あのレッドウルフたちの気持ちを。 言葉を。

これでカイトも、少しは分かってくれたと思った。

それなのに、返ってきた言葉は期待したものとは、まったく違った。


「・・・・・これからは、意思疎通いしそつうはかれそうな相手には・・・」


ここまでカイトが言った事で分かってしまった。

彼が言おうとしている言葉が。

悲しくなった。

私がカイトに伝えたい言葉は、気持ちはそうじゃない!!



カイトのバカーーーーーーーーーーーーーー!!!!!



あふれ出る感情。

気付いたときにはカイトを殴って、森の中を走っていた。

暗い、森の中を。

それはまるで今の、私の心を投影しているようだった・・・・・・



◇◇◇



「ノゾミーーーーーー!!  どこだーーーー!?」


すでに探し始めて、かなり長い時間がたっていると思う。

ノゾミの姿は、どこにも見当たらなかった。

最初は、街道近くでうずくまっているだろうくらいに思っていた。


しかし、この近くには、ノゾミらしい気配は無かった。

ノゾミが、本当に行方不明になってしまった。


「わたしのせい?」


保護する事にした魔族少女が、俺に困ったような表情を向けてきた。

違う。

この少女のせいではない。

俺が悪い。

俺がまた、何かノゾミの逆鱗げきりんに触れるような事をしてしまったからだ。


だが、理由が分からない。

ノゾミが、怒った理由が。


王都のときと同じだ。

俺は何もわかっていなかった。

メヴィアさんに教えてもらった事も、何も形を成していなかった。

自分で自分が許せない。

あそこまで怒った、ノゾミの感情ひとつみ取ってやれない自分が情けなかった。


「ううぅぅぅ・・・・・・・」


いつの間にか、立ち止まってしまっていた俺は、次々にあふれ出てくる涙をとめることができなかった。

はは・・・最悪だ。

一度にとどまらず、二度までも・・・・・・・・・・

隣にいる魔族の少女は、どうして良いのか、わからないって顔をしている。

でも、どうにかしてくれようと、なぐさめようとしてくれているのが分かる。

でも、そんな少女の心遣いが、逆に俺の心へ突き刺さった。


暗い森の中、俺のすすり泣く声だけが響く。



そんな時、不意に後ろから肩をたたかれた。

こんな森の中で誰だ?

流した涙もぬぐわずに、振り返るとそこにいたのは、騎士を二人連れたアリアだった。

なかなか帰らない、俺を探しに来たようだ。


事情をすべて話すと、アリアは魔族少女を取り合えず、預かってくれる事になった。

こんなに情けない話を、アリアは真正面から終始、聴いてくれた。

悲しいという感情と、こんな話を聞いてくれるアリアという存在に感謝する気持ちが、俺の中に渦巻く。


話を最後まで聞いてくれたアリアは、右手の人差し指をこちらに突き立て、叫ぶように口を開いた。


「細かい事情は後でみっちり聞いてあげます!!  あなたは、彼女を連れ戻してきなさい!!  さもなくば今すぐ王都へ連れ帰って終身刑ですわよ!?」


結婚して間もない嫁に、発破をかけられてしまった。

そうして俺は再び、森の中に入っていった。



それでも、ノゾミの気配はなかなか、見つけられなかった・・・・・・

もう何話か続きます。

戦闘シーンもあります。

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