第73話・忍び寄るなにか
これからも、がんばっていくつもりです!!
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「魔族!? それはこの近くなのですか??」
「詳細は分かりません。 道に倒れていた男性二人も、今は気を失っておられます。 ナースメイドに対処させておりますが、容態は思わしくないとのことです。」
「そうですか・・・・・」
さきほど、馬車が止まったと思ったら、すごい剣幕でクレアさんが、「魔族に襲われたという、二人組みの男性を保護しました!!」と、報告してきた。
周りの騎士や、メイドさんたちも全員、顔が青ざめている。
今もこうして、アリアとクレアさんが、緊急事態を思わせる口ぶりで、話をしている。
「カイト様! まだ姿を確認したわけではございませんが、近辺で、『魔族』が確認されたとのことです。 ここは危険です!! 早く街へ脱出しましょう!」
「え、魔族って何?? ゴブリンとかじゃないの??」
魔族、魔族って、騒ぐ理由がちっとも分からないので、質問をしてみた。
すると、メイドさんたち含め全員が、「ありえない!」って顔をしてくる。
これは、いわゆる常識なのだろうか?
でも、俺の常識は地球の日本のものなので、ここは教えていただきたい。
「『魔族』とは、我々人間のような姿をした魔物のことです。 その一般的スキルは人間のそれを軽く凌駕し、人間をゴミのようにしか考えていない、きわめて危険な存在なのです!!」
駄女神様が、『魔王がいる』とか言っていた気がするけど・・・・・
それのことなのだろうか?
日本でたまに聞いていた、魔王って結構強いやつじゃなかったっけ?
地味に強くて、人間を虐げている存在
なんか、テンプレでいつも、勇者という存在にしてやられていた感が強いけど・・・
「それって、魔王ってこと?」
「分かりません。 出没したという『魔族』がただのはぐれ者なのか、それとも魔王軍侵攻の斥候のような存在なのか・・・・ 後者であればこの国は・・・・・・・」
悔しそうな表情をして、震え始めるアリア。
俺に今、彼女にできることは、彼女の背中をさすることくらいだ。
それと同時に、気配察知などの魔法を行使してみる。
しかしそこには、森の小動物以外の反応はなかった。
だがノゾミの体は、小刻みに震えていた。
魔法による、気配察知などでは何も反応はない。
しかし、彼女の不安の感情は本物である。
魔法では悟れない、何かがいるのかもしれない。
だとすると、何かが起きた場合、俺はとっさには反応できない可能性が高い。
まして、今は王都から付いてきているメイドさんたちや、シェフの皆さんがいる。
彼らは、襲われたらひとたまりもない。
ここは、アリアの言うとおりに逃げた方がいい。
そう。
彼らは、逃げた方が良い。
「危険性は分かった。 急いでベアルへ向かってくれ。 俺はここで様子を見る!」
と、言うわけで俺一人で事態に対処してみることにした。
不安要素は、排除してしまえばいいのだ。
ここで言う、不安要素というのはメイドやアリアたちのことである!!
カイトの、このあたりの考え方が、浅はかとか、アホだとか言われる所以である。
この発言で、カイトをおいて逃げようとする者が、どこに存在するというのか。
「カイト様! 私の話を聞いていなかったのですか!? 『魔族』は危険な存在です。 いくら能力バカなカイト様でもお一人は危険すぎます!! カイト様が残るというのであれば、私もここに残ります!」
「そうです、カイト様!! 魔族を討つというのであれば、我々騎士もここに残ります!!」
「我々メイドも、戦闘は得手分野ではありませんが、ここに残り、卓越ながら戦闘の補佐をさせていただきます!!」
「ちょ・・・・・ちょっと待ってくれ!!」
ここにいる、ほぼ全員のいきなりの戦意むき出し発言に、カイトはたじろいでしまった。
アリアの、『能力バカ』発言は、大変に気になるがそれは後回しである。
彼は、「分かりました。 御武運を。」とか言われると思っていたので、答えに窮してしまったのだ。
彼のこの考えは、これから変えていかねばならないだろう。
もし、この世界で生きていく心積もりなら。
「気持ちはうれしいが、今、気配察知とかの魔法を使ってみたら、この辺りには何もいなかったんだ。 ちょびっと気になるから、森の中を見てみようとしただけなんだよ。」
みんなに、さっきの魔法の結果を話してみた。
この森に、小動物以外の気配はない。
でも、ノゾミは何かを感じている。
だから、調べてみるのだ。
森の散歩みたいなものである。
だが、それでもアリアたちは納得しない。
だから俺は、ここであんまし使いたくなかった言葉を使った。
「この土地の領主として、ほんの少し気になることを調べるだけだから、一人での行動の方がやりやすいんだ。 大丈夫。 夕方までには帰ってくるから。」
・・・なにかのフラグ全開の発言であった。
当然ながら、ここにいる全員が、この人を一人にしてはいけない!!と、そう思った。
もちろん、カイトはこのことに気付いていない。
カイトは、使うセリフと場所を、完全に間違えてしまった。
そうしている間にも、刻々と時間だけが過ぎていった・・・・・・・
ベアルの描写は、もう少し先になりそうです。




