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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第5章 大公様とベアル
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第72話・しっかりしてください!

これからもがんばっていきます!!

感想など、ありましたらどんどんお寄せください!!

「むっふっふふふふふふ・・・・・」


馬車内に、下卑げびた笑い声が響きます。

先ほどから、いえ、数日前に街道途中の休憩所で、商隊の方々と交流して以来、カイト様はずっとこの調子です。

何かよからぬことを考える、横領貴族にしか見えません。


「アリアちゃん、カイト、大丈夫なのかなあ?」


私の隣にいる、赤毛の女の子が困ったような表情でこちらに、顔を向けてきます。


彼女はノゾミというそうです。

なんでも、カイト様がシェラリータで飼っていたトビウサギが、魔石を拾い食いし、魔力が暴走。

その後、人型に変体したのだそうです。


・・・・意味が分かりません。

はっきり言いますが、魔力が暴走したって、巨大化したり凶暴化したりすることはありますが、人型になるなど、聞いたこともありません。


「ん? アリアちゃん、私の顔に何かついてる?」


彼女が、赤い双眸そうぼうを大きく見開き、こちらをうかがってきます。

こうしてみると、普通の女の子にしか見えません。

これも魔石の力だというのでしょうか?


・・・・・・・・考えるのはよしましょう。

カイト様のステータスからして、よく分からないことだらけだったではないですか。

レベル8。 すべてのステータス値は無限(∞)。

彼がきっと、何かしたのでしょう。

ええ、きっとそうです。


「何でもありません。 カイト様も、きっとお疲れなのでしょう。 もうすぐ目的地のベアルへも到着します。 そうすればカイト様も、いつもの調子へ戻るでしょう。」


「そっかーーーーー。」


今、馬車は山脈地帯を抜け、森を進んでいます。

ここを抜ければ、目的地のベアルへと着きます。

そうすればカイト様も、横領貴族から、アホで考えが浅い、いつもの調子に戻るはずです。


「ふふっふっふふふ・・・。」


・・・・もしかしたら、今はまさにその状態なのでは?

表情が、どうもバカっぽいです。

だとしたらいけません。

領主がこんなでは、市民は不安にしかなりません。

横領貴族よりは、幾分いくぶんマシですが・・・・

ここはひとつ、釘を刺しておきましょう。


「カイト様、その下卑た薄笑いはいい加減、おやめください。 私をはじめ、領主がそれではベアルの民たちも、不安になります。」


「え、ああ・・・・すまん。 ちょっと鉄道が・・・・・・」


またです。

『てつどう』。

この頃、カイト様は口を開けば必ず、この言葉を口にします。

何のことなのか、護衛の者たちを含め、さっぱり分かりません。

一国の王女として、かなり高水準の教育を受けた私ですら聴いた事のない言葉です。


「カイト様。 何度も聞くようで、大変恐縮なのですが、その『てつどう』なるものはいったい何なのですか??」


「ええっとお・・・・・・・ なんていうのかな?  自走する馬車? いや、こうレールが・・・」


「自走する馬車?」


もう意味不明もここまで来ると、理解する気すら失ってきます。

自走する馬車って・・・・・・

魔法で動かす気でしょうか?

確かに、カイト様の魔力量ならば、きっとできるでしょう。

でもそれをしたいならば、今すぐすれば良いだけの話です。


先日、これを言ったら、『馬車ではないんだ!!』と、すごい剣幕で言われました。

馬車だといったり、馬車ではないといったり・・・・・・・・


「ああ、もう少しで鉄道が引ける。 鉄道は近い!!」


カイト様は、またえつに入ってしまわれました。

『てつどう』は結局、分からずじまいです。

ここは、妻として冷ややかな視線を送るとしましょう。



コンコン!


おや、外からノックですか・・・・・

きっとこれは、メイドか護衛の者でしょう。

何か用事がある際、彼らには馬車のドアをノックするように言い付けています。

普通なら、私ではなく、最高地位者たるカイト様が対処すべきなのですが、軽くトリップされているカイト様には、まともな対処などできないので、毎度のごとく、私が対処します。


「失礼いたします。 まもなくベアルへ至る街道の、最後の休憩所を通過致します。」


「分かりました。 そこで、昼の休憩をいたしましょう。 皆の者に、休憩の準備をさせてください。」


「かしこまりました。」


うやうやしくこちらに一礼すると、メイドの彼女は後方の列へと戻っていきます。

その際、彼女は「お大事に。」というのを忘れません。

これは、カイト様へ送っている言葉です。


従者たちにここまで、心配をかける領主というのも珍しいです。

私も心配してますし。

でも、ここにいる者全員が彼のことをしたっています。

彼は、王宮内で数々のことをしたそうです。

いはく、破壊された王宮を修復した。

いはく、足りない食材を補填ほてんしてくれた。

いはく、一人の騎士の命を救った・・・・・

などなど・・・・


真偽しんぎの方は定かではありませんが、王宮内での新大公様の、使用人募集でありえない人数の者たちが応募したらしいので、確かに、何かをやったのは間違いなさそうです。


かく言う私も、カイト様に命を助けられました。

彼がいなかったら、私は今頃、ここにはいないでしょう。

その一件で、彼をお慕い申し上げ、こうして私も彼に付いてきてしまったのですから・・・・・・・


「そうか、もう少しで着くのか。 そう、もう少しで・・・・・・」


バカっぽい笑みを浮かべるカイト様。

あのときがウソのようです。

私の紅潮した顔も、すぐさま平常に戻ります。

でも彼をお慕いする気持ちの変わりはありません。

だから、こうして彼に凍てつきそうな視線を向けるのも、彼にはしっかりしていただきたい一心からなのです。


ガクン!


そのときでした。

馬車が急に止まり、前方が騒がしくなりました。

何か、あったようです。

カイト様も、何かを感じ取ったようで、目つきが真剣になります。


間髪いれず、先ほどのメイドがある報告をしてきました。

その報告に、カイト様以外の全員が、背筋を凍りつかせるのでした・・・・・・・

次回、ベアル到着(?)です。

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