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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第5章 大公様とベアル
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第71話・重大な一点を見落とした、妄想

これからもがんばっていきます!

感想や何か見つけた事など、ありましたらどんどんお寄せください!!

「いや、やっぱり旅するなら鉄道がいい。」


「カイト様、先ほどから聞くその、『鉄道』とはいかなるものなのですか?」


アリアの質問に、カイトは答えることなく、考えにふける。


朝になり、昨日の宴会パーティー(?)の後片付けを済ませて、出発したカイトたち一行は、ビルバス山脈の川沿いの道を一路、ベアルへと向かっていた。

あれだけ昨夜、飲んで騒いでいた騎士さんたちも、朝になると元気ハツラツであった。

あれは、日頃からなれているという感じである。


それはともかく。


昨夜一緒に街道の休憩スペースで、大いに盛り上がったベアルから来たという商隊一行と、ベアルのことについて聞いたカイト。

そこから聞くベアル領という所は、だいぶ過疎化かそかが進んでいる都市ということだった。


前任の大公様が治めていた頃は、魔の森からの素材集めや、隣国のバオラ帝国との貿易により、結構大きな自治都市だったらしい。

その頃は、シェラリータと同等か、それ以上に栄えていたとのこと。

だが大公が死去して以来、後任がなかなか現れず、その間に都市の治安が悪化。

山脈のせいで、交通の便も悪く、治安悪化のせいで貿易がとどこおり素材売却などが難しくなった。

その結果として、冒険者たちが外へ流出。

そのせいで魔の森が、なかば放置状態となり、さらに治安が悪化。

結果として、ベアルの市民たちも、逃げるようにこの町を出て行った。

今は、ほとんど村みたいな状況になってしまっているとのこと。


ちなみにだが、大公様がいない間は、王家がこの領地を直接管理していたらしい。

でも、その大任を任されていた監督官は、現在行方不明らしい。

・・・・・何、やってんだよ?

その、失踪しっそうしたやつは。


ここでキーとなるのは、過疎化かそかの原因が『指導者がいなくなったこと』と、『貿易がとどこおった』ということ。


指導者の有無うむの件は、この世界の警察がしっかり機能しなくなったことが原因だと思う。

これは、俺がどうにかするというより、その町にいる警察(警備兵)を使って、町をパトロールすれば、治安向上につながると思う。

地球での、治安向上の手段もそれだとか、テレビで聞いたことがあるし。


問題は次の、『貿易がとどこおった』という点だ。

とどこおった原因はこれだ。


「アリア確か昨日、商隊の人たちにもらった香辛料が高い原因のひとつに『この山脈があるせいだ』とか、いっていたよな?」


「え? ええ、ここの道は見てのとおり、狭くて土砂崩れも頻発ひんぱつする極めて危険な場所です。  バオラ帝国に限らず、貿易の円滑化には、ここの整備も重要な案件といえるでしょう。 しかし、さすがはカイト様。 この間の話の、そこへ着眼されるとは。 本当にカイト様はただの冒険者だったのですか?」


「・・・・・・そうだよ? なあ、ノゾミ。」


ちょっと、どもってからノゾミに話を振るカイト。

話の輪に加わっておらず、いきなり話を振られたノゾミは、首をうんうんと、無意味に縦に振った。

その際、寝癖ねぐせでできた赤いアホ毛がユラユラと、揺れる。

ふ~ん?と、アリアもどこか釈然しゃくぜんとしていない様子ながら引き下がる。

追及ついきゅうまぬがれたようだぜ・・・・・


それはともかく。


話されたように、今馬車で通っているベアルへと至る街道は、砂利じゃりなどでガタガタの、狭くて危なっかしい道だ。

一歩、道を踏み外せば川のある谷底へまっさかさまだ。

アーバン法国の、ベアルやバオラ帝国へ至る道は、この道一本しかないらしい。

シェラリータ側へ抜ける道も、あるにはあるが、長年使われていないせいで、獣道と化しているらしい。


この道の整備が、町の発展へとつながる!!

ついでにいえば、ただ整備するのではなく、そこに鉄道を敷いたら・・・・・・・・・

やべえ。

俺って天才じゃね??

町は発展する。

鉄道の夢は広がる。(実現する)


カイトに顔からは、自然と笑みがこぼれた。


「カイト様。  先ほどから笑ったり落ち込んだり、いったい何をお考えなのですか?? もし体調が優れないというのであれば、ナースメイドをここへ寄越しますが?」


本当に心配したような顔で、こちらをうかがうアリア。

その言葉に、ノゾミまでこちらに心配した視線を向けてくる。

俺は大丈夫だ、と伝えて再び思案にふける。


というか、冒頭のように旅は鉄道がいい。

馬車の乗り心地はよくない。

俺は転移が使えるからもう、乗らなくて済むが、輸送の方法を鉄道に転換したら貿易も、すごい進むんじゃないかと思う。


そうすれば町も発展し下手したら、前以上に栄えることもできるのではと思う。

うん、我ながらいい考えだ。

自分の領地は、良識の範囲内で好きにしても良いと言われている。

大公にされてしまったときは、おのれの不幸を呪ったりもしたが、良いこともあるものだ。

俺は、自分の領地に鉄道を敷く!!



カイトは、これからできる異世界初の鉄道開業の妄想で、頭がいっぱいになっていた。


しかし、彼はあることを見落としていた。

鉄道を敷くには、かなりのお金と、人間なども必要となる、ということに。

これらを、自分の魔法一人でこなそうという彼の甘い考えはこの後、すぐに打ち砕かれることになる。

次回は、山脈をやっと抜けます。

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