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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第5章 大公様とベアル
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第70話・交換

これからもがんばっていきます!!

感想など、ありましたらどんどんお寄せください!!

「本日は、我々の同席を認めて下さり、誠にありがとうございます。 ささやかですが、お礼の代わりにお納めください。」

営業スマイルで、小さな小瓶こびんをいくつか渡してくる商人の一人。


彼らは、先ほど俺たちが野営中に、野営の同席を求めてきたものたちだ。

幌馬車が三台に、冒険者の護衛が六名。

この世界における、一般的な商隊の姿だった。


「こちらは西方にある、バオラ帝国の特産品であります、『香辛料こうしんりょう』です。」


「「「ほう!!!!!!」」」


商人の言葉に、目を輝かせながら飛んでくるシェフ達。

ドドドドッという、効果音が聞こえてきた気がする。

おまえら、調理中のものはどうした?

こちらへ、困ったような視線を向けてくるシェフの手伝いをしていた、メイドたち。

アリアも、苦笑いだ。

即効で、クレアたちメイド組に、定位置(調理場)へと戻されるシェフ達。


「あいつら、どうしたんだ?」


シェフ達がこちらを名残惜なごりおしそうに見つめつつ、調理を再開したのを確認した俺は、アリアにふとした疑問をぶつけてみた。


「この国では、香辛料は大変な貴重品です。 バオラ帝国という、私たちがこれから向かう、ベアル領よりも西方にある巨大国家の特産品なのです。 かの国では家庭料理などに、大変重宝たいへんちょうほうされているようです。」


「そんなものが、何でこの国では貴重品なの?」


その国で、家庭料理で重宝されるぐらいのものならば、少なくとも『貴重』ではなくなりそうである。


「理由は、魔の森とこの山脈にあります。 これら二つにはばまれ商隊の安全ルートが未だ、確立していないせいで、貿易が盛んではないのです。 それに・・・・・」


まだ何かあるように、アリアが口を濁した。


「かの帝国は、この香辛料に対し高額な関税をかけているのです。 そのせいでより一層、『貴重』に拍車はくしゃがかかっている状況です。


なるほど。

よくありそうな理由だ。

貴重品には、関税をかけて国の財政をうるおす。

中学校の社会の授業でも、習ったな。


でもだとすると、そんな貴重品を受け取ることはなお、できない。

俺が、気持ちはありがたく受け取っておくと、これを商人さんに返そうとすると、彼らは決してこれを受け取ろうとはしなかった。


「さっきも申しました通り、これはお礼です。 実は、この先にも別の野営地があるのですが、そこは先日の大雨で土砂で埋まってしまったようで、使い物にならなかったのです。 ここにもあなた方がいて、最悪我々は、街道で夜を明かすことになるところでした。」


どういうこと?と、カイトが頭をかしげると商人は飛び切りの笑顔を向けてきた。


「あなたのような、傲慢ごうまんではない貴族様は初めてです。 今回のような場合、我々の要求は突っぱねられることのほうが多いのですよ。」


は??

一緒に一晩、ちょっと近くで寝泊りするだけで??

どこのアホだよ。

まあ、とりあえず彼らが俺たちに感謝していることは分かった。

でも、貴重な香辛料に関しては、タダでもらう訳にはいかないだろう。

今度は金を払おうとすると、アリアに止められた。


「カイト様。 これは、旅をする者の矜持きょうじです。 私たちも、それにこたえればいいだけなのです。」


言っていることの意味がわからない。

それなら、やっぱり香辛料の対価として、代金を払わなければいけないんじゃ・・・・・

そこまで考えたところで、さっき瞬間移動並みの爆走を見せたシェフの一人が寄ってきた。

その顔には、とても気持ちのいい笑顔が浮かんでいた。


「カイト様。 今日は食材が多く、料理が多く余ってしまいそうです。 卓越ながら、彼らも同席させてはいかがでしょうか?」


・・・・・ああ、そういうことか。

横へ視線を向けると、アリアもうなづいている。

メイドさんや騎士さんたちも、微笑ほほえましいものを見るようにこちらを見ている。

相手の護衛の冒険者たちも、期待した視線をこちらへ向けてくる。

自然と、俺からもみがこぼれる。


「いかがでしょう?  そういうわけですので、一緒に食事でもいかがですか? 香辛料のお返しには程遠いかもしれませんが、せっかくの縁です。 みんなで食べたほうが楽しいでしょう。」


俺がそう言うと、冒険者たちから、歓声かんせいがあがる。

商人さんたちも、今までで一番の笑顔を向けてくる。


ノゾミも、今の歓声でずっとウトウトしていたのが、覚醒かくせいした。

しばし困惑の表情を浮かべた後、笑顔になるノゾミ。

なんだかよく分からないが、みんなが嬉しそうなので私も嬉しい。

そんな感じだった。

ほかの人たちからも、笑みがこぼれている。

みんなが笑顔だ。

日本での、列車の旅もよかったけど、こういった旅もいいな。

俺は、そう感じ始めていた。


このあと、メイドさんやシェフさん、それに騎士さんたちまで巻き込んだ、宴会えんかいパーティーのようなものがもよおされ、街道沿いのこの場所は、夜更よふけまで大いに盛り上がっていったのだった・・・・・・・・

カイトの、領地到着はもう少し先です。

気長にお待ちください。

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