第69話・山脈を進む
これからもがんばっていきます!
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ビュオオオオ!!
っと、大きな風が巻き起こる。
それと同時に、地上の俺たちの馬車の隊列は、その風にあおられる。
「ドラゴンか・・・・・・」
飛竜が近くを通った際は、その羽ばたきによる風で強い風が巻き起こる。
今は日も沈み、野営の準備中なので、風で土煙が起こる程度だが、これが街道通過中だと馬車が揺れ、かなり怖い思いをする。
だが今は、街道の途中にたまにある、休憩スペースにいる。
ここは、谷間に設けてある広場のようなもので、割とそれは広く、結構な人数がいるカイトたちの隊列でも十分な広さがあった。
「この近くには、飛竜たちの巣があると聞きます。 最近、よく見かけるのはそのためでしょう。」
使い捨ての食器を、組み立て式の簡易テーブルに並べながら、クレアさんが説明してくれる。
ここ数日、『飛竜』とやらをよく見かける。
空の随分高いところを、悠々(ゆうゆう)と俺たちを気にした様子もなく、飛んでいくのだ。
この世界でも、そこそこ珍しい部類に入るらしい。
はじめて見た時は、かなり感動した。
地球では、絵とかゲームとかで見たことはあったが、実際見ると迫力が違う。
鉄道以外、なかなか興味を示さないカイトだったが、こればっかりは感動したのだった。
だが、それも最初のころだけ。
日に何度も何度も、その姿を現す飛竜の姿に、さすがのカイトも飽きてきた。
あれだ。
動物園にいるパンダも、毎日見に行ったらどうでもよくなってくる感じ。
あれに似ている!!
まあ、実際パンダなんか見たことはなかったけど、今回の飛竜ほどは珍しくないと思う。
そもそもあの竜たちは、高空を飛んでいても近くに寄って来ることは無く、全容はほとんど見えない。
見えるのは、決まって竜の腹だけ。
これでは興味も薄れていくというものだ。
「カイト様。 先日は、またも食材を分けていただき、誠にありがとうございました。 今日も腕によりをかけて料理させていただきます。」
「ああ、楽しみに待っているよ。」
この隊にいる、シェフのうちの一人が俺に対し、いつものように意気込みを語ってきた。
王都から出発してから、ほぼ毎日の日課のようなものである。
『先日』というのは、獲物があまりとれず、その日の食材に困っていた彼らに、アイテム・ボックスから出したガーベアの肉とかを出してあげたときのことだ。
人数が多いため、食材などは騎士たちが、隊の護衛の合間に、現地調達をしていた。
それがある日、あまり多くを狩れなかった日があった。
そのとき、ものすごい勢いで頭を抱ええていたシェフ達の姿が不憫で、アイテム・ボックスを確認したらたまたま、まだ少しだけ前に狩った獲物がまだ、残っていたのでそれを出したのだ。
このシェフさんは、シェラリータの『蒼き炎竜亭』で出されていた日本のシチューや、カレーのような物を作ることができた。
これは、素直にうれしいことだ。
王都では、まったく口にすることができなかったので・・・・・・・
そしてこの人ももちろん、くじに当たった人の一人だ。
俺の屋敷に住み込みとなる、らしい。
ノゾミも、この人の料理には大満足であった。
といっても、主食は相変わらずサラダだけどね・・・・・・・・
「ふふん。 彼は王宮内でも、指折りのシェフです。 そんじょそこらの定食屋のご主人たちと同じにされては、困ります。」
まるで、自分のことのように得意満面になるアリア。
彼女が小さいころからいたシェフだったようで、自身もかのシェフが作る料理が、大好きだったらしい。
もちろん、彼だけで料理を作るわけではないのだが、その存在は大変に大きいようだ。
付いてきたメイドたちも、テキパキとその調理の手伝いをしている。
だんだんと、辺りには美味しそうな料理の、いい香りが漂ってきた。
今日は、カレー(もどき)だな・・・・・・
そんな感じで、今夜の夕食へ期待をこめていたころ、騎士の一人が、俺たちのほうへ、歩み寄ってきた。
「カイトさま。 旅の商人たちが、ここでの野営の許可を求めてきております。 許可を与えても、よろしいですか?」
「もちろん。 人は多いほうが楽しいからな。」
「ありがとうございます。 彼らも喜ぶことでしょう。」
とてもいい笑顔で、騎士さんの姿は、街道のほうへと消えていった。
ここまでで、初めてのベアルの方からやってきた人たちだ。
彼らからは、街の事とかを聞いてみたい。
俺はこれから聞けるであろう、俺たちの新天地に関する話に対し、期待に胸を躍らせるのだった。
◇◇◇
ここは、どこ・・・・・・・??
あるのは森の木々。
さわさわと、木々の葉づれの音が聞こえてくる。
そこかしこには、野生の動物たちの鳴き声だけが響く。
しかしそれらは一層、彼女の不安をあおるだけだった。
何かと戦った後のようで、黒髪の少女は、体中が傷だらけで、ボロボロの状態であった。
特に右足には、大きな切り傷があり、痛みから彼女は、その足を引きずりながら歩んでいた。
しかしそれらを彼女は、思い出すことができなかった。
なぜ、自分はボロボロなのか・・・・・・・・・
気がついたら、ここにいた。
ここがどこなのか、自分が何者なのかさえ、思い出すことができない。
その状況がより一層、彼女の不安をあおってくる。
赤い房のある髪をなびかせ、彼女は森の中を進んでいた・・・・・・・・
ドラゴンの住処、一応、頭の片隅においていてください。
このあと、ちょっと大事な(?)キーワードですので・・・・・・・




