第67話・大公様、爆誕!!
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※9/27、加筆修正をしました。
ガラゴロ、ガラゴロと、森に馬車の音が響く。
それも一台や二台どころではない様だ。
森を、王都から西のほうへ進むその行列。
それに被さるように聞こえてくる、鎧のガチャガチャという音や、馬のブルルっという声。
この行列を見れば、この世界の住人であれば、貴族の行列であることは一目瞭然だ。
護衛も多数引き連れており、この行列を襲おうとする盗賊は、この世界にはいないだろう。
魔物や森の動物たちも、その圧倒的な気配から、近づこうとすらせずに森の中で鳴りを潜めていた。
そんな最強の馬車軍団のほぼ、中央に位置する、ひときわ大きく豪華絢爛な馬車の中には、三人(?)の姿があった。
「カイト様。 いつまでそのように馬車の椅子に顔をうずめているおつもりですか? あなたは、この国で国王に次ぐ地位に就く、『スズキ公』です。 もう少し威厳というものを見せていただかないと、妻として私が困ります。」
アリアは、目の前にいる羞恥で死にそうになっている、白を基調とした貴族用の礼服に身を包んだカイトへ、不満をぶつけた。
「なんで、こうなった。 俺は貴族なんか嫌だ。 いますぐにでも王様に返しにいきたい。」
カイトは、この日何度目になるか分からないボヤキを漏らした。
「カイト、かっこよかったよ? アリアちゃんも昨日は、きれいだったよ?」
「ありがとう。 それから私のことは、ちゃん付けではなく、『アリア』と呼び捨てでかまわないと申し上げたはずですが?」
カイトの目の前で、仲睦まじく話に、花を咲かせるアリアとノゾミ。
知らぬ間に、仲がよくなったらしい。
ちなみに、アリアはノゾミが、トビウサギだということは知っている。
というより、昨日の婚姻の儀をアリアとあげた際、関係を問われてステータス表示でバレた。
ヤバい、と思ったが特にそのことに関しての追求は無かった。
というより、そのときにアリアのノゾミに対する態度が、豹変していった。
嫉妬から、気の合う友達でも見つけたようなものへと・・・・・・・
まあ、仲がいいのはいいことだ。
それはさておき。
俺たちは今、王様から与えられた領地、『ベアル』へと向かっている。
貴族というのは、誰しも領地を所有しているらしい。
俺は、そんな中でも一番大きくて辺境で、魔族領と帝国と、山脈に囲まれたそんな地域が与えられた。
前任の大公が、病で床に伏し、あえなく死去。
子供は居らず、養子も迎えておらず、跡継ぎもいなかったことからお家断絶。
その後は、辺境ということもあり、どの貴族も行きたがらない。
そんなわけでここ十年ほどは、王家直轄の領地となっている場所であった。
最近は見放された感があり、治安が悪くなり、廃都まで発生しているとか。
ま、要するにいい話には裏があった、というわけだ。
もっとも、カイトにとっては最初から、ちっともいい話などでは無かったのだが。
ちなみに、俺の名前からお家の名前は『スズキ』となった。
『スズキ大公爵』略して、『スズキ公』がここに爆誕したのだった。
・・・・・非常にどうでもいい話だが。
ちなみに、昨日アリアと執り行った結婚式は、あれやあれよという間に終わってしまい、記憶にはまったく残っていない。
これも結構どうでもいい話だ。
だが、アリアには絶対に知られてはならない。
コンコン!
馬車のドアが、外からノックされる。
羞恥でうずくまっているカイトは返事ができそうに無かったので、代わりにアリアが「どうぞ。」と、許可を出す。
「失礼します。 まもなくビルバス山脈のふもとの村へ到着します。 今日はこちらで宿泊となります。
護衛と、メイド数名を先に、村へ向かわせてもかまいませんか?」
「構いませんわ。 カイト様はこちらでどうにかしておきますから。」
「かしこまりました。 カイト様、お気を確かに・・・・」
外から村への宿泊手配の許可を求めてきたのは、王宮からつれてきたメイドの一人、クレアだ。
アリアの言葉を聞くと、一礼して後方へと下がっていった。
俺があずかり知らぬ間に、王宮内で新しく誕生する、大公様へ召抱えられる使用人などを、募集したらしい。
・・・・・ちなみに、その大公様とは、俺のことだ。
応募対象は、騎士、メイド、シェフなどが、それぞれ若干名。
ところがこの募集に、なぜか応募が殺到。
王宮の半分以上の者が応募したとか・・・・
さすがに全員連れて行くとかはできないので、公平をきす為に、くじ引き。
それに当たった、数名が今、ここで護衛をしたり、俺たちの身の回りの世話係や、料理担当などをしていた。
ちなみに、護衛の半分以上は、王宮から臨時で派遣された、俺の移動のためだけに派遣された騎士達だ。
俺たちが、『ベアル』へ到着したら、王都へ帰る事になっている。
そして、そのメイドの一人が、偶然にも俺とノゾミを王宮で世話してくれたクレアさんだったと言うわけだ。
知っている人がいることは、素直にうれしい。
ちなみに、王宮の庭園で、俺の目の前でリア充してた騎士とメイドも、ここにいる。
こいつらまで、応募してたのかよ・・・・・・
そして、二人そろって当たるとか、どんな強運だよ。
「カイト様。 護衛やメイドの者たちに、御身のことを心配されてどうします!? 貴族たる者、むしろ召抱える下々の者たちに気を配らねばならない立場なのですよ??」
アリアが、俺をたしなめるように、そう言い放ってくる。
すいません。 俺には、無理です。
・・・・そんなことをアリアの前で言ったら、面倒くさいことになること間違いなしなので、声には出さない。
ああ・・・・・・・自由がほしい。
そんなカイトの気持ちとは関係なく、馬車は白く輝く頂をみせる、山脈へと進んで行った・・・・・・
ちなみに、カイトとノゾミの冒険者登録はそのままで、馬車に乗り込む前に、コンドルウルフの違約金はギルドへ払ったことをここに記しておく。
荷物などは、宿に寄って引き払った。
違約金をギルドのカウンターで払う際に、ギルド譲さんには、大変に怒られてしまったが。
カイト君、大公様になっていしまいましたね・・・・・・
まあ、この先も今までの調子は崩さないと思いますが。




