第61話・誰かこの状況を説明してください その4
読者の皆様。
ご助言、ご感想ななど、いつもありがとうございます!
更新頻度の見直しなどを行うつもりです。
ご不便をおかけするかもしれませんが、これからもどうか、よろしくお願いいたします。
ノゾミに、王宮を連れまわされて三時間。
騎士さん騒動以来、特に何も起きることはなく、よく分からんつぼを見たり、きれいに整備された庭を見たりしていたら、いつの間にか昼になっていた。
この王宮では、食事は朝と夜だけ。
それが、貴族の一般的なスタイルらしい。
ではその間、飲み物以外を貴族は口にしないのかというと、そうではない。
その間に日に二回、『お茶』をするらしい。
貴族ではない、俺でも分かる表現で言うと、『おやつ』。
この世界のほとんどの貴族が、この『お茶』で仕事中に体を休めたり、他の貴族との親睦を深めたりするらしい。
なるほど、貴族はそういう風なことまでするのか。
街の人たちなんかも、おやつを食ったりはするが、その理由は『仕事の合間の栄養補給』だからな。
意味合いがてんで、違う。
ま、それはさておき。
俺とノゾミは、貴族ではないし、森で狩猟をしているときにもおやつを食べたことなんか無い。
まして、今日は起きてからご飯を食べて王宮をブラブラしていただけ。
腹なんか少しも減っていない。
『お茶は、常時こちらの部屋でご用意させていただいて居りますので、お好きなときにいらしてください』と、朝食を摂っているときにも部屋に居た執事風の人に言われたが、行く必要はなさそうだ。
ノゾミに行くか聞いたら、「サラダ、ある?」と言ってきたので、「夕飯まで待て」と言っておいた。
どこの世界におやつに、サラダ頼む奴いるんだ??
まったく、どんだけサラダ好きなんだ? こいつは・・・・・
そんなわけで、食堂へは赴かず、再び王宮をぶらつくことにした。
明日は、この国の王様と会わねばならないらしい。
国王代理として、宰相さんからは昨日、感謝状諸々(かんしゃじょうもろもろ)は受け取った。
この上で、何があると言うのか想像が実際、怖い。
国王自ら一冒険者の俺と会って、何をしようとするのか。
明日の恐怖感情を拭い去るのにも、この王宮散策はいい気晴らしとなるはずだった。
・・・・が。
目の前に、大慌ての使用人の皆々様方が居る。
遠目には、「お仕事、大変そうだなーーー」位しか思わなかったが、その表情を見ると、焦りの感情が見て取れる。
考えずとも、何かあったに違いない。
今の時点で、俺は二つの問題に直面させられた。(解決済み)
その上で、これだ。
この王宮は呪われているんじゃなかろうか??
いやいや、今回は本当に、忙しいだけかもしれない。
だったら、声はかけないほうが言いかもな。
「そんな大慌てで、何かあったんですか?」
無理です。
俺は、手近に居たシェフ風のおじさんに声をかけた。
本当に何かあったのなら、俺はそれを見て見ぬ振りしたことになる。
俺に責任は無いが、そういう事ではないのだ。
「ああ、カイト様と言いましたか?」
・・・・さっきからだが、よく俺の名前が、すぐに出てくるよなと思う。
騎士さんとか、メイドさん達は職務上分かるが、お抱えシェフさんまでってのはすごいと思う。
いや・・・・・・貴族社会では常識なのかな?
「カイト様やノゾミ様にもお謝りせねばなりません! 大変申し訳ございません!!」
いきなり、謝罪された俺とノゾミ。
王宮では、何かしてしまった覚えならあるが、何かされた覚えは無い。
なぜそれなのに、目の前の人物は謝ってきたのだろうか?
「実は、食材の仕入れ担当の者が、発注の数と種類を誤ってしまい、今、夕飯の分の食材がまったく足りていない状況なのでございます・・・・・」
それまた、深刻な。
「今、改めてキッチンメイド達に、城下へ買出しに出しておりますが、とても・・・・・・」
足りないと。
「王宮の食事の材料をきらすなど、以ての外でございます! 我々は、連帯責任で良くて総辞職。 悪ければ、国外追放も・・・・・・・」
なにーーーーーーーーーーーー!!??
今までで、一番刑罰は重いんじゃないか、それ!?
さっきの、クレアさんのつぼを一個割った事ですら、王宮追放。
それ以上の刑罰を、連帯責任とやらで、全員がかけられる。
どこまでが『連帯』の括りとなるのか、定かではないが、相当な人数になる気がする。
「何が、足りないのか教えていただけますか?」
え?と、キョトンとした顔をするシェフさん。
食材が足りないだけで、国外追放はあんまりだ。
足りないものは、転移で捕(採)ってきてあげることにした。
宰相さんの、『王宮からは、出ないように』とのお達しが頭をよぎるが、今はそれどころではない。
しかし聞いてみると、どうやら足りないものは料理のメインディッシュたる、肉類と、その付け合せの葉っぱらしかった。
なんだ。
それなら今も持っている。
「カイト、あれはもう、残っていないの??」
ノゾミも、期待をこめた眼差しで俺を見つめてくる。
同じことに思い至ったようだ。
俺は別に、躊躇することも無く、アイテム・ボックスから前に狩ったガーベアや、ソニック・シギー、それに採集した野草を出していった。
どれも、何かあったときのために売らずにとって置いた物だ。
・・・まさか、こんな場面で役に立つとは思わなかったぜ・・・・・・・・
それを見て、狂喜乱舞し出す使用人達。
えかった、えかった。
さっきのシェフのおじさんなんか、ボロボロ涙を流しながら、出したソニック・シギーに対して、お祈りをささげている。
何人かのメイドさん達や、他のシェフたちが、俺の手を握りものすごい感謝してくる。
む~~~っと、顔を膨らませ、不機嫌をアピールしてくるノゾミ。
おまえには、後でやってやるから・・・・・・・
しかしこれで今日の事案、三件目。
これでは、まったく気晴らしにならない。
このまま、早急に『今日』が終わることをここに、切実に願う・・・・・
もっと、何かありそうですね・・・・・・
早く次の日になって、状況を進展させたいのですが・・・・・・・・
気長に、お待ちください。




