表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第4章 王宮へ
60/361

第57話・ドナドナカイト

少し、時間がさかのぼります。

大体、王様たちが親バカやった後ぐらいです。

この国には、一ヶ月ほど前から、聖女様が来ていた。

これは本来、国を挙げてお出迎えするぐらいの大事なのだが、聖女様直々に『おおやけにしないように』とのお達しが来ていたので、王宮に挨拶に来る程度で収まった。


国内の教会などの抜き打ち検査などで、そういったことは間々あった。

今日、王宮へやってきたのは、王都の孤児院創設に関する案件でらしい。


昨日の、青年やルルアムのことも気がかりだったが、こちらも外交上、はずすことはできない案件だ。

何せ、国内にある教会すべての最高責任者が、『聖女』なのだから。


「・・・・・以上でよろしいかな? 聖女様。」


「はい、ご対処感謝いたします。」

そう言って、マイヤル式の、腹部に手を当てお辞儀をする聖女。


孤児院創設に関しては、別に問題はない。

聖女も、社交辞令として行っているに過ぎない。

これでこの案件は終了だ。


「ふう・・・・・」


「大変失礼ながら、国王陛下、何かあったのですか?」


思わず、まだ聖女が退出していないのにため息をついてしまった国王。

いつもはこんなことはしない。

外交上、他国の使節などの前で、国王がこんな態度をとるのは、大変な失礼に当たる。

だが、聖女とこの国の王は、たびたび会っていたので聖女のほうも、国王の異変に気がついた。


「すまない。 実は昨日、いろいろあってな・・・・・・・・」


「?」


それから、昨日のことを話して聞かせた国王。

本来、国の汚点ともなるほどの事件で、おおやけにしたくなかったが、なにぶん、悩みが多すぎる。 聖女は、口外とかはしないし、職種上、悩みを聞くこと自体も手馴れていた。


だが、その聖女も、『カイト』という単語に、ことのほか反応していた。


「聖女様は、『カイト殿』をご存知か?」


う・・・・と、言葉を詰まらせる聖女。

こんな態度を、聖女様が示すのは初めてだ。

何か、いわくつきの人間だったのだろうか?

それを確かめてみると、首を横に振る。

すると、何かをあきらめたように、言葉をつむぎだす聖女。


「その黒髪の方と、カイト様は同一人物でしょう。 私もこの目で見たことがあります。」


「なんと! 変身魔法まで使えるのか!! これはこれは・・・・」

うれしそうに、それは嬉しそうにする国王。


「彼は、自らの能力の異常さに、気づいておりません。  ですが、あの力があれば、魔王も討伐できるでしょう。」

一転して、真剣な顔つきになる聖女。


「力は、国を、世界をも滅ぼします。 ゼイドさまは、彼に何をさせようとしておいでですか?」


「私は・・・・・私が彼にしたいことは、『礼』だ。 アリアを、王家を守ってくれたことに対する礼だ。 彼を他国との外交の切り札にしようとは思っていない。」


これは本当だ。

外交の手札にするには危険すぎるのでしない。

だが、『礼』は与えるつもりだ。

あのあと、ミカナとも話し合って決めたこと。

でも、これに関して言う必要性はない。


「その言葉を、信じましょう。 つきましては、彼は『転移』で逃亡してしまったとか。 きっと、カイト様は槍を向けられて、死刑にされると、勘違いしておいでなのでしょう。 

彼の誤解をといて、私が、ここへつれてきてまいります。」


「で・・・・できるのか?」


「はい。 彼の魔力はたどれますので。 私も転移魔法は使えるのでいけると思います。 では・・・」

国王に会釈えしゃくすると、聖女は光の中へ吸い込まれるようにして消えていった。


「い・・・・いかん! 誰からんか!! 式典の準備じゃ!!」


国王も、王都内にいる有力貴族を集めるなど、着々と準備をすすめた・・・・・・・



◇◇◇


「勘違い!?」


「はい、あのときに槍を向けたのは、この国の王女様と並んで歩いておいでで、不審に思われたからです。」


イリスさんの突然の登場と、カミングアウトに一瞬、呆然とする俺。

待って、王女さま?

俺が助けたのは、茶色の髪と、オレンジ色の瞳を持った、色白の『貴族の娘』だったはずじゃあ・・・


「やはり、そこから勘違いされていたのですね。カイト様がお助けしたのは本名をアリア・ミューゼン。

アーバン法国の第五王女です。 今回の事件は、王位の派閥争いのようなものだったそうです。」


・・・なんか、大事になってる気がする。

俺は、なんつーモンに手を出したのだろうか。

そんなモンに手を出した俺の末路。(推測)



け・さ・れ・る!!!



ダッシュでノゾミをつれて逃げたいが、きっとまた、イリスさんは転移で追いかけてくる。

くそう・・・・

カイト、ここに死すか・・・・・・


「国王様は、おなたへ御礼をしたいとのことですよ?」


ふふ・・・・『御礼』か・・・

よく荒くれ学校とかでそんなことがあるって聞いたな。

『お礼参り』

あれは確か、先生とかを生徒が卒業のときにボコボコにするんだっけ?

こんかいのおれのは・・・・


拷問されて、『絶対に、だれにも口外しません!!』とか宣言させられた挙句、殺されるのだろう。

逃げても、さっきも言ったとおり、何もならない。

うう・・・・せめてノゾミだけは・・・・


「お連れ様もご一緒に、とのことです。」


だめか・・・・

ノゾミ、すまない。

あれのときは俺の魔法でお前だけはどうにかするよ。


こうして、俺とノゾミは、ドナドナ牛のように、王都へと行くことになった。


カイト、気配隠蔽の魔法とか使えばよかったと思いますが・・・・・

存在を知らない上に、『死んだ』という思いが強すぎて、脳内検索ができなかったのだと思われます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ