第56話・追っ手
つたない文章力で申し訳ございません。
感想など、ありましたらどんどんお寄せください!!
昨日、真夜中にいきなり帰ってきたと思ったら、衝撃的なことを言ってきたアリア。
そのことに、国王は頭を悩ませていた。
「転移が使える、魔法使いか・・・・」
この世界で、転移が使える術者は希少だ。
発動には、莫大な魔力を必要とするのだから・・・・
それを、攻撃をかわす、つまりものの数秒足らずでやってのける者。
加えて、王宮騎士三人相手でも、かなわなかった賊を殲滅する技量。
さらに、ルルアムの件も、無関係には思えなかった。
でも別に、罪に問うつもりはない。
彼らは、アリアの、ひいては王家や国の恩人である。
そこまでの者たちは、ぜひとも王宮に召抱えたかった。
上位の王宮魔道師ぐらいの実力は、あるように思う。
だが、その本人たちは、現在行方不明。
転移座標を特定しようにも、彼らの魔力をたどる術がなかった。(彼らの魔力を知らないので)
手がかりは、赤毛赤目で、名を男のほうがカイト、女のほうをノゾミということだけであった。
彼らのことに気をとられていると、後ろからコツコツと、誰かが近づいてくる音がした。
「ゼイド? ちょっといいかしら?」
国王たる私に、こんな呼び方をするものは、この国には一人しかいない。
「その呼び方は、よせと言ったはずだが?」
若かりしころ、自分の身の回りの世話をする侍女から后へと娶った、ミカナだ。
周りのもの全員が猛反対して、自分の家の令嬢を妻へあてがおうと必死になった。
結局、法律まで改正して現在に至るわけだが・・・・
「ゼイド、昨日のアリアの話、どう思う? その青年って言うのと、ラウゼン家に侵入したって言う青年、無関係には思えないけど。」
ミカナも同じことを考えていたようだ。
そう、アリアは、昨日こうも言った。
『自分を助けてくれたカイトという青年は、賊から話しを聞いた後、十数分ほど、転移で王都へ行っていた』と・・・
その時間が、不思議とラウゼン家が襲撃された頃と合う。
・・・ただの偶然かもしれないが。
なにせ、目撃証言の青年は、黒目黒髪。
カイトという青年は、赤目赤髪なのだ。
同一人物にしては、外見が違いすぎる。
「ああ。 だが、共通することは『青年』という部分だけだ。両件を結びつけるのは性急にすぎる。」
「・・・・そうよね・・・・・・」
残念そうにうつむくミカナ。
なぜ、そこで残念そうにするのかが分からない。
「いえね、そのカイトって言う男の子と、黒髪の青年って言う人が同一人物だったら、アリアにとってもいいのにな、と思っただけよ?」
「な・・・なぜそこでアリアが出てくる??」
「あらゼイド、気がつかなかったの? アリアはその二人に恋をしてしまっているみたいよ?」
「こ・・・恋だと!!???? そんな馬鹿な!! アリアは将来、私と嫁ぐと・・・」
「あの子が三才の頃に言ったことを、真に受けてどうするんです?? アリアももう、立派な淑女なのですよ!?」
良王であると同時に、親バカな国王である・・・・
◇◇◇
「ふうえええええっっっくしょい!!!!!」
「カイト、大丈夫!?」
そのころ、『紅炎』の二人は、転移した王と北側の森から、特に当ても無く、王都から少しでも離れるよう、進んでいた。
シェラリータへ逃げることも考えたが、たぶん人が多いからすぐにバレる。
前にガーベアで廃村しかけた、セプト村の住人ならば、かくまってくれるだろうが、それではきっと、村の住人たちに迷惑がかかってしまう。
だから、森の中をノゾミとさまよう羽目になった。
だが、昨日は雨。
雨は何とか、魔法とか木の洞とかでしのげたが、森の温度は、一気に下がってしまった。
今は、凍えそうになるほどの寒さだ。
身隠し用にと、羽織っている大きな茶色いローブが森の木々を抜ける、冷たい風を防いでくれた。
王都から逃亡して一夜明け、今はもう昼。
食料は、アイテム・ボックスに入っているが、そう長い期間は持たない。
いつまでも、森にいたら、それこそ危険だ。
しかし、人里に下りればきっと、王都に通報されて、死刑だ!
まさに、『進むも地獄、退くも地獄』であった。
・・・・・カイト的には。
「カイト、いったん休もう? それからゆっくりこれからのことを考えようよ。」
ノゾミのほうが冷静だ。
逃亡生活といっても、ノゾミはもともと魔の森という、超危険地帯に住んでいたので、現状は特に恐怖とかは感じていなかった。
まあ、王都で槍を向けられたときには怖くて指一本すら動かせなかったが。
「分かった。 俺は薪を集めてくるから、ノゾミは木の実とかでも集めてきてくれ。」
カイトも、ここで休憩することに賛成した。
無理な行動をして、無駄に体力消耗している場合ではない。
そうしてカイトが、ノゾミとは別の方向へ足を向けたとき・・・・・
「!?」
目の前に、地面から青白い光が現れ、収束していった。
カイトはこの現象を知っている。
『転移』だ。
誰かが、ここに転移してくる!!
このタイミングで、自分の前に転移してくるものなど、簡単に予想はつく。
きっと、王都の王宮魔道師の追っ手だ。
ノゾミを呼んで、自らも転移で逃げる時間などない。
すぐさま、迎撃体制に移るカイト。
「!!???」
しかし、光が収束すると、そこに現れたのは・・・・・
「ふう・・・まったく、探しましたよ? カイトさん。」
微笑を浮かべる、毎度おなじみ修道服姿の、イリスさんだった。
もう、数話ほど続くと思います。




