第54話・逃亡
つたない文章力で申し訳ございません。
少なくとも、200話くらいまでは続くと思います。
よろしくお願いいたします。
「ここは・・・!?」
転移の光が収束すると、アリアが驚きの声を上げた。
目の前に広がっている景色は、当然王都。
俺が転移に指定した座標は、ギルド支部の目の前。
本当だったら、門からいつものとおり入場したかったが、今は真夜中。
闇夜には、半分にかけた月が輝いている。
盗賊とか貴族掃除とかししていたら、いつの間にかこんな時間になってしまった。
王都の内門は、日没とともに閉じてしまう。
本来ノゾミと一緒だったら、外門の中の宿で、明日の日の出とかまで内門が開くのを、待つほうがいいのだが、今は貴族のご令嬢を連れているので、直接転移した。
門番さんには「するな!」って釘刺されてたけど、緊急事態だからしょうがない。
・・・・・明日の朝、門番さんには謝っておこう。
「カイト、これからどうするの??」
転移に慣れているノゾミは、当然平常運転。
早速これから俺がすることを聞いてきた。
「この、アリアって子を家まで送るつもり。 しなきゃいけないこともあるし。」
そう、この子には俺の身の潔白を証明していただきたい。
今、俺のアイテム・ボックス内には、お仕置き中の傲慢貴族((ルルアム))が入っているのだ。
誘拐してきたわけじゃないことを、この子には証明していただかねば、俺は大罪人だ。
「あの、壊れた馬車とかおじさん達は?」
「馬車は、俺の浮遊魔法浮かせて運ぶ。 盗賊どもは馬車に縄をくくりつけて連行する。 そうそう、アリア、悪いけど家まで歩けるか?? 馬車はめちゃ揺れると思うからさ。」
未だ、こういったバランスがうまく取れないのだ。
下手したら、横転させてしまうかもしれない。 ようは、危ないのだ。
俺が後ろを振り向いて、尋ねると、桃のように赤く顔を紅潮させたアリアがうなづく。
なぜ俺が声をかけただけで・・・・・
ノゾミ! お前はいったい、俺がいない間にどんなことをしゃべったんだ!!
するとアリアは、今度は俺に感心したような視線を向けてきた。
「あなた、本当に転移が使えますのね・・・・・・」
アリアが、顔を赤くしたまま、上目遣いにそんなことを言ってきた。
そういえば、会話の最中に転移したっけな。
「信じてくれた?」
「・・・なぜ、あなたのような方が使えるのか、甚だ疑問です。」
今度は、こちらを見据えるような視線を送ってきた。
でしょうね。
森でノゾミを交えて力説してくれましたし。
「でも、転移を使ったのは、事実です。 森であなたを疑ったことは謝ります。」
「いや、いいよ。 俺が無知だっただけだし。」
アリアはいい子のようだ。
とっても、一冒険者の俺たちに対して、礼儀正しい。
貴族にもいろいろいるんだな。
あの馬鹿女((ルルアム))は、このアリアって子のつめの垢を煎じて飲むべきだと思う。
すると、ノゾミが不機嫌そうに、頬を膨らましている。
「カイト、まだ私の質問が途中だよ? 連行して、おじさん達はどうするの?」
「ああ、あいつらはこのアリアって子を家まで送ったら、その屋敷の人たちに警備兵団に通報してもらって、連れてってもらうつもり。」
警備兵団とは、地球で言う警察である。
その人たちに、ルルアムも含めて身柄を引き渡す。
そこで、このアリアって子に自分がされたことをしゃべってもらうのだ。
この方法なら、無駄な動きが少なくすむ。
でも、そういえばこの子に家にこのままで行っていいのか、聞いていなかったな。
「アリア、俺たちがこのまま君の家に向かっても大丈夫??」
そこ、重要だった。
貴族の家だからな・・・・
部外者お断りかもしれない。
日本には、貴族なんかいなかったので、いまいちよく分からないが、迎賓館に一般人が入れるのかってレベルだと思う。
でも、今はその家の子もいることだし、もしかしたら・・・・
なんて、楽天的なことを考えていた。
あれのときは、家に向かう前に、警備兵団の兵団舎へアリアにもご同行願おう。
「大丈夫です。 私がいれば、命の恩人のあなた方に危害は加えさせません。」
「おおう・・・・・」
そのまとう雰囲気に、一瞬、気圧されてしまった。
さすがは、貴族のご令嬢・・・・なのか?
でも、門前払いとか、されなさそうなのでちょっと安心した。
そうこうしているうちに、右へ左へと案内されていた俺は、ある家の前を通りがかった。
「ルルアム・・・」
さっき、俺が襲撃した屋敷だ。
倒した使用人たちも気がついたようで、蜂の巣をつついたような騒ぎとなっている。
一応、変装がてら黒髪になっていたけど・・・
いまは、いつもの赤髪だ。
大丈夫、気づかれることはないと思う・・・・
でもなんか、一刻も早く通り抜けたい。
気持ち的に落ち着かないのだ。
俺が急ぎ足で、この場を通り抜けようとしたそのときだった。
「おい、そこの者止まれ!!」
野太い声で、呼び止められてしまった。
つーっと俺の背中を、嫌な汗がじっとりと濡らす。
気がつくと、騎士っぽい男十数名に、囲まれていら俺たち。
しかも、手に持っている槍で、俺とノゾミをロックオンしている。
やばい、バレた??
髪の毛ごときではだめだったか・・・・
なんか、言い訳出来るような雰囲気ではない。
「この賊が・・・!!」
とか言ってこちらを睨み付けてくる騎士たち。
「お・・・お待ちなさい! この者たちは・・・!!!」
「「「うあおおおおおおお!!!」」」
アリアの静止の声も聞かず、俺とノゾミめがけ、騎士たちが槍を構えたまま突進してくる。
各々(おのおの)、鬼気迫る勢いだ。
きっと、アリアの言葉は耳に入っちゃいない。
ここで俺ができるのは・・・・・・
「て・・・・・・・・転移!!!」
ノゾミと手をつないで、咄嗟にこの場を逃げることだけだった・・・・・
カイト、罪を重ねるの巻でした。
この後も、いろいろと想定外だらけのことが起こると思います。
生暖かい目で見ていただければ、幸いです・・・・・・




