第49話・テンション低め
拙い文章力で、申し訳ございません。
感想や、誤字、脱字などありましたら、どしどしお寄せください!!
ガラゴロガラゴロ・・・・
静かな森に、聞こえてくるのは馬車の音。
そして、その周りを歩く兵士三人の、ガチャガチャと擦れる、鎧の音。
「お休みのところ申し訳ございません、姫様。 まもなく、避暑地へ到着いたします。 馬車を降りるご準備を。」
馬車の窓から、一人の騎士風の男性が、『姫』と呼ばれる女性に声をかけてくる。
「ありがとう、アル。 到着しましたら、騎士の皆様はお休みいただいて結構です。」
「は! 姫様の寛大なるお言葉、騎士の者らも喜ぶことでしょう!」
敬礼をして、護衛の列へと戻る騎士。
今回のこれは、『お忍び』と呼ばれる行動なので、騎士は三人ほどしかいない。
姫と呼ばれた彼女も、それを確認すると、馬車内で腰の辺りからふわりと広がるドレスから、動きやすいボーイッシュ・ロリータ風の装いへと、着替える。
女性の名は、アリア・ミューゼン。 年のころは、今年で18歳。
チョコレート色のつやのある髪が、腰の辺りで揺れ、オレンジ色の双眸が光っていた。
彼女は、アーバン法国の、王女である。
王女とは言っても、王位継承権は序列第十五位。
兄や弟、従兄弟などが継承することに恐らくはなるので、彼女の出番はほとんどなさそうだ。
たぶん、二人の姉たちのように、国内の有力貴族か、あるいは他国の外交の道具として、自分も結婚することになるであろう。
それは彼女自身、かまわなかった。
それがこの国に、世界における、『王女』という立場だったから。
「ふう・・・・」
ため息を漏らすアリア。
でも、できることなら強い者と、結ばれたかった。
軍の大将とかではない。
何も持たない、例えば冒険者のような・・・・
例えば、昔話に出てくる勇者のような・・・・
分かっている。
それが、わがままだと言う事ぐらい。
それが、叶いもしない幻想であることぐらい・・・
馬車は、そんな彼女の抗うことのできない、運命を暗に示すように、『避暑地』と呼ばれる場所へと進んでいた・・・・・・・
◇◇◇
「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ここは王都の、メインストリート。
カイトは、自分の計画が、始まる前から破綻していたことが分かり、呪詛の言葉を吐いていた。
計画とは、『この世界に、鉄道を作る』ということである。
だが、この世界の土地は、私有地を除き森などは、すべて国有地。
要するに、レールを敷くには、国王直々の許可が必要だ。
それが分かったのが五日前。
この世界に来て、まだ数ヶ月のカイトが、会えるはずもなかった。
一冒険者のカイトが、国有地使用の手続きなんて、役所に入ったとたんに、ポイッだ。
じつは、彼が懇意にしている聖女のイリスは、隣国ではあるものの、その許可を出せる立場にいる身分の高い人物だったのだが、『イリスさんは教会の、有名な人』程度の認識でしかなかった彼は、そんなこと知る由もなかった。
「カイト、元気出して。 今日は、『ソニック・シギー』が大猟だよ!?」
満面の笑顔で、俺を慰めてくるノゾミ。
『ソニック・シギー』とは、足が速いだけの、ただの鹿である。
別にたいした害獣でもないのだが、割とよく討伐以来が出されるのは、その足の速さにある。
そのスピードで、商隊の馬車や、集落の家などに突撃されたら、大惨事になる。
それでいて、すばしっこくて、なかなか捕まえられないので、討伐難易度はDランク。
単体のガーベアよりも難易度が高い。
・・・・が、そんなことは俺たちには関係ない。
俺は女神様の何らかの能力で、
ノゾミは、なんかヤバイ魔物の魔石を拾い食いした影響で、
『ソニック・シギー』の群れの動きを捉えられた。
あとは簡単。
この間見つけた、重力を操る魔法でぺシャンコにして、文字通り、一網打尽にできた。
これは、いろいろ応用が利く。
誰かに絡まれたとき、重力で床に押し付けて、逃げる。
バカ強い魔物とかに遭遇したときに、押しつぶしてカタをつける。
数の多い獲物を一気に一網打尽にする。
・・・・え? なんか全部、卑怯だって??
関係ない。
冒険者は、文字通り毎日、命のやり取りをする仕事なんだよ。
それに、ソニック・シギーは毛皮から角から全身のすべての素材が高く売れる。
・・・・・・別にそんなにお金が必要、ってわけでもないが、無いよりはあったほうがいい。
そんなわけで、ノゾミはホクホク顔であった。
でもカイトは、狩り中もテンションが低かった。
いや、狩り中だけではない。
ここ五日間、まったく気分が高揚しなかった。
まあ、そういうわけで狩りは一瞬で終わり、王都との移動も転移魔法で行っていたので、朝に王都を出た『紅炎』の二人は、昼前には、王都内に戻ってきていた。
このままギルドに行って、獲物の換金をして、明日の依頼を探してもよかったが、時間も早く帰ってこれたので、二人は王都の、ある場所へ向かうことにした。
◇◇◇
「まあ! このような物を頂いてしまってよろしいのですか!?」
目の前にある光景に、目を輝かせるイリスさん。
ここは、王都にある大聖堂の裏口。
そこへカイトたちは、今日の獲物の一部である十頭ほどの、ソニック・シギーを並べていた。
この頃彼らは、こっそりと獲物の一部を教会へ寄付していた。
二人の絆を深めてくれた、あのときのお礼の足しに・・・・という考えからである。
こっそりしているのはもちろん、目立ちたくないから。
そんなことを王都民に知られたら、どんなことになるやら。
実は、王都民たちの大半がこのことを知っていて、知らないふりをしてくれていることは、二人は知らない。
王都の人々は買い物時などに、彼らにさりげなーくおまけしたりしてくれていた。
それを知らないのは、本人たちだけである。
「いつもいつも、もらってばかりで申し訳ありません。」
「いえいえ、俺たちが勝手にやっているだけですから。 では俺たちはこれで。」
そうして踵をかえす二人は、ギルドへと向かうのだった・・・・
戦闘シーンが下火になってしまうかも・・・・・
なるべくそうならないよう、頑張ります。




