第43話・それは現実逃避
拙い文章力で申し訳ございません。
誤字、脱字、感想などありましたら、どんどん寄せてください!!
俺とノゾミが宿泊している王都の宿、『白剣亭』。
そこへ今日、一組のパーティーが宿泊していた。
その名も『風狼』
俺が、シェラリータでお世話になった、冒険者パーティーである。
最初出会ったときから、パーティーメンバーは三人。
パーティー創設当時は、五人いたが、二人は俺と出会ったときには死んでいた。
今でも、メンバーを募集しているらしいが、なかなか集まらないという。
「しかし、アンタにこんなに可愛い妹がいたなんてね~~」
「あはは・・・・・」
そして今、俺は数々の彼らからの質問に答え続けていた。
「しかしあんた、記憶を失くしていたんじゃなかったっけ? それなのに、『妹』??」
いやらしい笑顔を向けてくるメヴィアさん。
俺の隣の、ノゾミも俺に不安そうな顔を向けてくる。
・・・この人たちには本当のことを、言っても大丈夫じゃないだろうか?
そんな事を、思ってしまう。
しかし、世の中どこから情報が漏れるか分からない。
だから、ところどころはしょって話すことにした。
「実は、シェラリータにいたとき、ある日に討伐依頼を受けていたら彼女が、魔の森にいたんです。それで、身寄りもなさそうだったので、俺が引き取りました。」
・・・・うそは言っていない。
誰も人間の、とは言っていないから。
「相変わらず、お人好しね~~」
メヴィアさんが、あきれたといった口調でそう言ってくる。
「それが、俺たちを助けてくれた、カイトって人間だぜ。 メヴィア。」
ガハハッと笑うファデオさん。
バイルはさっきから、表情だけでいろいろな感情を伝えてくる。
ちなみに今は、『バカじゃん』ってあきれたような顔。
相変わらずの寡黙キャラだな・・・・・・
「それはそうと、パーティー名は『紅炎』だったかしら? 王都に着いてから、何度も冒険者仲間からその名前を聞いたわ。 何をしたのよ、いったい?」
そういわれても、別段たいしたことはしていない。
せいぜい、野草を採集したぐらいか?
何の事か、分からんといった風にメヴィアさんに視線を向ける俺。
「アーーー、あんたに聞いても無駄だったわね。 今度、他の冒険者から聞いといてあげるわ。」
それはぜひとも、止めていただきたい。
そんなことしたら、俺が露店でおもちゃを・・(以下、省略)
「依頼は野草採集しか、していないんだってな。 その実力があるのに何でだ?」
ファデオさんが、当然の質問をしてきた。
実力はおいておくとして、ここは正直に話す。
「実は俺・・・・シェラリータからここへ馬車で来る途中、盗賊に襲われたんですよ。」
「盗賊か・・・・・」
ファデオさんも真剣な顔つきになる。
「その後イロイロありまして、悩みの種が出来てしまいまして。」
「「「・・・・・・・。」」」
『風狼』の面々は、誰一人としてしゃべらない。
それでも俺は、話を続けた。
「それ以来、生物を切るのが怖くなってしまって、それで討伐とかの依頼を、避けているんです。」
俺はこの時、ファデオさん達に、なんと言ってほしかったのだろうか?
ファデオさん達は、何かを考えるように皆、腕組みをしていた。
そして、最初に口を開いたのは、メヴィアさんだった。
「それは、現実逃避にしかならないわ」
その言葉は冷たく、そして重く、俺の心にのしかかってきた。
「お、おい! メヴィア・・・・・」
メヴィアの言葉を止めようとするファデオさん。
しかし、メヴィアさんの言葉は、まったく止まることを知らなかった。
「あなたがやっていることは、ただの現実逃避。 現実から顔を背ける冒険者は、長生きせずに死ぬわ。いつか、その採集中に、魔物が襲ってきたら、どうするの? 盗賊が襲ってきたら、どうするの???
逃げたってやつらは執拗に追いかけて来るわよ? それでもあなたは、逃げるって言うの?いい?? 冒険者って言うのはね、いつ死ぬか分からない、仕事なの。 私たちの例だってそう。 シェラリータの魔の森では、商隊の護衛中に、全滅しかけたわ!! 襲ってこられたら、全力で潰すしかないのよ!! でなきゃ、私たちのほうが殺されるの! 『逃げ』なんて甘えよ!」
メヴィアさんの言葉に、ファデオさんもバイルも、神妙そうな顔をする。
「じゃあ、俺はどうしたらいいんですか!? 自分が殺されるって言われても、生き物を殺すなんて、まして盗賊とはいえ人間を殺すなんて・・・・」
今更何を言うか、と言われそうだが、盗賊の一件で、俺は生き物を殺生する『討伐』自体が分からなくなってしまっていた。
「『慣れ』よ・・・・」
「え?」
今、メヴィアさんから発せられた言葉の意味が、分からなかった。
「あなたが今食べているスープの肉だって、着ている服の生地だって、どこかの冒険者が倒した生き物を加工して作ったものよ。冒険者がいなければ、これらは無いわ。 その上で、冒険者として生きて行く為に大切なことは、敵は倒して、素材は有難くもらって、それでいて今生きていることに感謝をすること。 ただ、それだけよ?」
「・・・・・・・・。」
俺の考えは、甘かった。
殺さなければ、殺される。
そんな事は、この世界に来てファデオさん達が、襲われているのを見たときに、理解していたはずだったのに・・・・・
ゴブリンに、体中を切り裂かれたときに分かっていたはずなのに・・・・
盗賊の件だって、ノゾミは串刺しにされたのだ。
もし、俺がもっと早く対応していたら、あんなことには、なっていなかっただろう・・・
冒険者を辞めたって、何もならない。
討伐の依頼を避けたって、何もならない。
ここは異世界。
日本のような、安全地帯ではないのだから・・・・
メヴィアさん、相変わらず厳しい人ですね~~。
でも彼女だって、カイトと同じ問題で悩んだことはあるのですよ?




