第40話・放浪
つたない文章力で申し訳ございません。
誤字脱字や、感想などががざいましたらよろしくお願いいたします。
「到着して以来、ずっと来ていなかったので心配していたんですよ~。」
ギルドに着いた途端に、受付の人が窓口から、俺にそう声をかけてきた。
三日間、ずっと『心の病気』で寝込んでいたカイト。
言われてみれば、王都到着の報告に来て以来、ここのギルドを訪れるのは初めてだ。
「心配かけてすみません。 あの後少々、体調を崩してしまいまして・・・」
「はあ、そうだったんですか。 いえ、そうですよね・・・・」
ん?
この人今、俺から視線はずさなかった??
まさかイリスさん同様・・・・
いや、詮索はよそう。
無駄に気持ちが、沈むだけだ。
「それで、今日は依頼の受注ですか?」
「いえ、今日は息抜きのために外の風にあたりに来ました。」
「そうだったんですか~。 あ、お連れの方とは仲直りしたようですね?」
ああ・・・見てたんだ。
結構な人が見ていたし、そんなに不思議ではない。
だいぶ沢山の人に醜態をさらしてしまった。
でも、そのおかげか変な連中に、ノゾミのことで絡まれるということが無かったので、悪かったとは一言では言えない。
でもあの一件は、ちょっと恥ずかしいので、あまり話したくない。
まあ、これは時間が解決してくれることだろう。
ノゾミとの絆も深められたことだし、よしとする。
すると、ニコニコ顔だった受付譲さんが、ある一点を見つめ、ボーっとしだした。
なにか、ものすごいものを見つけたような顔だ。
「か・・・カイトさん? そちらの方は・・・・」
受付譲さんが、俺の後方に向かって、恐る恐るといった感じで手を伸ばす。
後ろにいるのは、イリスさんだ。
・・・なるほど。
俺となんかが、修道服着た教会の人がいたら、そりゃ変に思うだろう。
現に、俺も客観的に見たら、変に思うし・・・・・・
「あらためまして、マイヤル聖国から来ました、イリス・ムアイと申します。 かの国では聖女などをやらせて頂いております。 以後お見知りおきを。」
俺にやったときみたいに、きれいなお辞儀をして、自己紹介をしたイリスさん。
するとザワッと周りが騒がしくなった。
ん?
何かあったのか??
目の前の受付の人に視線を戻すと、顔が青くなっている。
途端、あわてているような声を発した。
「せ・・・・・・せせ、聖女様!!???? ななななな・・・なぜカイトさんと一緒に・・・・・」
というか、ものすごく取り乱している。
周りの人たちも同様だ。
というか、平伏してお祈りをささげている風な人までいる。
「えっと・・・・聖女様って?」
前の自己紹介のときにも、イリスさんが聖女様、ということは聞いていた。
でもそれが、何を意味しているのかがさっぱり分からない。
知らない事は、知っている人に聞くに限る。
「ええ!?カイトさんは聖女様を知らないんですか!? 聖女様という方はですね・・・・」
そこまで受付譲さんが、言葉を発したところで、イリスさんに言葉の続きを制止させられる。
俺に聞かれちゃ、まずいのだろうか?
ノゾミも、人間の勢力のことは知らないのか、キョトンとしている。
「えっと・・・・・・」
ますますわからない俺は、イリスさんに聞こうとした。
すると、何時かの優しげな笑顔を、こちらへ向けてくるイリスさん。
「いいんですよ。 カイトさんは今のままでいてください。」
「・・・・・・・。」
周りの刺すような視線が怖い。
やっぱりこれは、いろいろな意味での地雷なのではなかろうか?
しかしここで、イリスさんとの関係悪化はもったいないので、流すことにした。
◇◇◇
「ふう・・・・・」
ちっとも息抜きにならなかった。
むしろ、『イリスさん』という爆弾を抱えてしまった気がする。
街歩く人々も、イリスさんと俺たちを見て、不思議そうな表情を浮かべていた。
よっぽどに、アンバランスらしい。
「イリスさんって、今日は教会のほうはいいんですか?」
「大聖堂のほうですか? 私のほうならば何も問題はありません。あの場所での仕事はもともと、私にはありませんから・・・・・」
んん? とすると、本当に聖女様って毎日何しているんだ?
あのデカい教会の一室で、ニート生活を謳歌する、イリスさんの姿を想像してみる。
ここでのポイントは、髪をかき乱し、服をはだけさせ、寝相悪く布団で、ゴロゴロさせる事。
超絶だるそうな顔をさせるのを、忘れてはならない。
・・・・・うん、想像できない。
きっと、俺にはあずかり知らない、すごい仕事をしているんだよ。
さっき、自己紹介でも『マイヤーセー国の聖女』とか言っていたし、そこで働いているのだろう。
今は、ちょっとした布教活動とかをしに、この国へやってきているのだろう。
そうだ。 間違いない!
俺にかまってくれる理由は分からずじまいだが・・・・・・・・
俺たちの放浪は、始まったばかりだ。
◇◇◇
「国王陛下、申し訳ございません! シェラリータへ送った密偵の報告によりますと、『天の光』を発動させた人物は特定できず。 また、現場を見ていた人物もいなかったとのことでございます。」
宰相からの報告に、眉間に皺を寄せる国王。
「そうか・・・・見つからなかったか。残念だ・・・・・・」
残念そうに、床へと視線を落とす国王。
しかし!と、宰相は報告を続けた。
「その時間、城門から外へ出た人物がいたようです。『天の光』の後、示し合わせるように街へと、戻ってきているようです。」
「ほう、してその人物の証言は取れていないのか!?」
身を乗り出す国王。
しかし、宰相は首を横に振った。
「残念ながら、すでに街を離れた後だったようです。特徴は、黒目黒髪。その者は、馬車で東へ向かったとか・・・・・」
「東、か・・・・・」
方角的に、東とは王都も入ることになる。
だが、二つの国との国境もある。
「宰相、国境線に黒目黒髪のものが現れたら、通さずに留めおくようにさせろ! その上で、国の東側に、密偵を放つのだ!! もちろん、この王都にもだ。」
「はは!!」
宰相は、そのまま部屋を退出していった。
後には、思案に暮れる国王の姿だけがあった・・・・・
聖女様とは、いったい何者なのか?
これは近々、話の中でご説明したいと思います。
・・・・って、そういえば閑話(19・5話「それぞれの思惑」)で書いていましたね。




