第39話・鉄道は、無い!!
拙い文章力で申し訳ございません。
感想や誤字、脱字があれば、お教えいただければ幸いです。
コンコン!
ここは王都の中心街から少し外れたところにある宿屋、『白剣亭』。
カイトと、ノゾミが泊まっている部屋のドアがノックされる。
ノックをした人は、返事を待たずにガチャッとドアを開けて、半ば、覗くように、体半分だけを出した体勢で、入ってきた。
片手には、盆を乗せており、その上には水や滋養の出る食べ物が載せられていた。
来たのはこの宿の、女将さんだ。
「まだあんたの兄さん、治らないのかい?」
ゆっくりと、言葉を発さずにうなづくノゾミ。
「そうかい・・・・お大事にね?」
それだけ言うと、宿の女将さんは、お盆をノゾミに渡し、部屋を退出していった。
それを見送ったノゾミは、未だ布団から出ようとしない、この頃一日二十時間は寝ると言われる、コアラのように動かなくなってしまったカイトの方を見た。
「カイト、今日もだめなの?」
布団越しに、カイトにそんな質問をするノゾミ。
しかし、彼から返事は無い。
「カイト、その心の病気って、寝ていれば治るの?」
再びカイトに質問をするノゾミ。
カイトは、『心の病気』と言う仮病を使ってこの三日間、宿で休んでいた。
三日前。
露店先でおもちゃ片手に羽目をはずしまくったカイト。
そのせいで、『変人の黒目黒髪のやつがいる』と、ここら中で評判になってしまった。
それにあわせ、『この世界には、鉄道が無い』と言う事実を改めて突きつけられ、カイトの心は、大雨の上に大洪水が発生し、さらに暴風が吹き荒れているみたいになっていた。
つまり、気持ちが沈んでいた。
枕元には、例のおもちゃもあった。
テンションMAXになったそのときに、買ったのである。
だが今、こうして冷静になって見てみると、列車と言うより、馬車をつなげた物体にしか見えなかった。
実際、モデルはそれなので、間違っていないのだが、その分だけ彼の落胆は大きかった。
あるいは、もしかしたら。
そんな淡い期待は、いとも簡単に打ち砕かれてしまったのであった。
そしてカイトは考えていた。
鉄道が無い・・・・
なら作ればいい
でも作り方なんてわからない・・・・
そんなことを布団の中で考えているうちに三日が経過した。
「ねえ、カイト。お話ししようよ。 私、ここ三日さびしい・・・・」
ノゾミともここ三日、会話らしい会話は交わしていなかった。
こんなところにいる時間が無いことは分かっている。
だが、心が重くてなんと言うか・・・・・
外に出る気が起こらなかったのである。
コンコン!
また、ノックが聞こえてきた。
きっと、女将さんが、何かを持ってきてくれたのだろう。
ここに尋ねてくるのは女将さんくらいだ。
すると入ってきたのは・・・・・
修道服姿の、イリスさんだった。
◇◇◇
「『心の病気』。 時間がたてば,自然に治る・・・・ですか。」
不思議そうな顔をするイリスさん。
彼女は、カイトが寝込んでいることを知り、急いで大聖堂からここまで駆けつけてくれたのだった。
もしかしたら、トンデモ無い病かもしれない。
自分には幸い、回復魔法が使える。
これを使えば、カイトの病気もたちどころに良くなるはず。
そう踏んでここへやってきてくれたのだ。
だが彼の病気は、仮病。
回復魔法でなんか、治らない。
イリスさんも、先日のカイトの一件は知っていた。
と言うより、見ていたらしい。
これに関する、イリスさんのコメントとかはなかった。
それは暗にカイトが、『コメントできないことをした』ということを示していた。
カイトは、穴でもあったら入りたい気持ちになる。
「あの・・・・よくは分かりませんが、その『てつどう』と言うものが、今回のすべての原因なんですね?」
「ああ・・・・。」
「それが無くて、悲しくて、今こうしていると、言うんですね??」
「ああ・・・・・。」
「ならば簡単です。 ご自分の記憶を頼りに作ればよいのです。」
右手の人差し指を一本上げて、それを示すイリスさん。
が、それは、さっき取り下げた。
素人に列車なんか、作れやしない。
それを考えると、さらに気持ちが沈んでいく。
そんな彼に、イリスさんは再び右手の人差し指を立て、彼に指し示した。
「とりあえず、このようなところで三日間もこもっているのは体に悪いです。 お外に出ませんか?
頭がすっきりして、何か良いことが思いつくかもしれませんよ?」
「・・・・・。」
イリスさんの言うとおりだろう。
こんなところにずっといるのは、体に悪い。
そのせいか、この頃は、悪い事ばかり考えていた。
次々に俺の心が疲れることばかり起きた。
だが、それがどうした?
こんなところで、駄女神に呪詛をはいたところで、気持ちまで暗くなるだけだ。
この世界には、鉄道が無い。
これは今、ようやっと理解できた。
シェラリータにいたころは、街が小さいから情報も少ないのだろうくらいに思ってもいはしたが、今はそんな考えは無い。
国の、王都にすら何も無かったのだから・・・・・
だから考えるのは、これからのこと。
それでも諦めずに、世界中の国へわたって、鉄道を探すか・・・・
冒険者として生涯を歩むか・・・・・。
それとも・・・・・・・・・・・・・・・・・
ともかく、いずれにしても今はここで寝ている場合ではなかった。
俺は三日の惰眠を経て、ようやっと、起き上がることにした。
向かうは、街の酒屋や、ギルドである。
そこでいろいろな冒険者たちに話を聞けば、何かしらの閃きがあるかもしれない。
望みはきっと、まだある・・・・・!
もう少しで、当作品の本題となります。
頑張って書きますので、応援よろしくお願いいたします。




