第35話・そして元の鞘(さや)に。
つたない文章力で申し訳ございません。
今のうちに沢山、投稿して書きだめしています。
・・・・気がつくと、広くて簡素なベットがいっぱいある部屋で休まされていた。
自分はあの後、どうしたのだったか・・・・
ちっとも思い出せない。
なぜ自分が、こんな場所にいるのかすら。
思考が混乱して、頭の中がぐるぐると廻って・・・・・
でもその前のことは、まだ鮮明に覚えている。
カイトに、ひどいことを自分は言った。
あのときの、悲しそうなカイトを思い出すだけで、胸が張り裂けそうになる。
彼はきっと、自分を嫌っただろう・・・・
でも会いたい。 もう一度、直接会って謝りたい。
でも、私はカイトの心の傷を抉るような事をしてしまった。
彼は私を今、憎んでいるかもしれない。
そう思うと、カイトに会う勇気はどうしても、湧かなかった。
「カイト・・・・・」
その名を思い出すだけで心が痛む。
自分の心が、乾いた土のようにその言葉を欲する。
とたんに目に涙があふれてくる。
会いたいけど、会えない。
私は、これからどうして生きていけばよいのだろうか・・・・・・・
コンコン!
そのとき、部屋にある扉がノックされ、中に紺色の服を着た女性が入ってきた。
ここは教会に一室で、私は道端でうずくまって泣いていたところを拾われたらしい。
・・・・なぜだろう。
この人はカイト同様、怖くない。
私がなぜ、街中で泣いていたのか聞いてきたので、洗いざらいを話した。
いや、何かがあふれ出るように、口から次々と言葉が出てきた。
これまでの自分の気持ち、したいことを全部ぶちまけてしまった。
一通り私の話を聞いたその女性は、次に入ってきた扉を開け、誰かを手招きした。
・・・・・・・・誰かいるかな?
そうして扉の奥から現れたのは、私が知っている人。
ゆっくりと・・・・
でもしっかりとした歩みでやってきたのは、見慣れた黒目黒髪の男性。
今私が、一番会いたかった人。
カイトだった。
◇◇◇
カイトとノゾミ、二人は互いの顔を見合わせたまま、まだ一言も言葉を交わしていなかった。
お互いがお互いに、かける言葉が見つからなかったから。
「「・・・・・・。」」
ちなみに聖女のイリスさんは、同室内の少し離れたところで静かに、控えていた。
ベットから上目遣いでカイトを見上げるノゾミと、立ったままの姿勢でノゾミを見つめるカイト。
二人ともどこか嬉しそうな、どこか困惑しているような・・・
そんな表情をしている。
最初にこの沈黙を破ったのは、ノゾミであった。
「・・・・!!」
ノゾミが俺に、カイトに抱きついてきた。
その行為は一昨日ぶりぐらいのはずなのに、とても久しぶりに感じた。
肩が震えていることから、泣いているらしいことが分かった。
でもそれは、さっきの街中で見たものとは違う気がした。
俺は、いつものとおり抱き着かれたこの体勢のまま、背中と頭をなでてやった。
しばらくして、ノゾミが落ち着いた頃合いを見計らって、俺はもう一度、彼女にいいたかった言葉を口にした。
「「ごめんなさい! え・・・・・・?」」
ノゾミと、俺の声がハモった。
彼らは同時に、まったく同じ謝罪の言葉を、口にした。
◇◇◇
ノゾミと俺で互いの心境と、気持ちをすり合わせてみると、バカバカしいほど勘違いに満ちていた。
お互いがお互いを大切すぎるあまり、傷つけあった。
そんなところだ。
なんだか前に、シェラリータの領主様にそういうことを言われたような気がする。
あとは言葉足らずも、要因のひとつといえるだろう。
イリスさんは、こうなることを予想していたらしく、ニコニコと俺たち二人に、笑顔を向けてくる。
・・・・なんだか、一部始終を見られていたかと思うと、とてつもなく恥ずかしい。
でもよかった。
この気持ちが分からずにそのまま死んでいたかと思うと、体中から血の気が引く。
本当に、俺たちをこうして再び引き合わせてくれた、イリスさんには感謝しても仕切れない。
俺とノゾミは、感謝の意を彼女に伝えた。
この人こそ神様だ。
あの、駄女神様はやっぱりだめだ。
でも今回は、俺が悪かったから反省はする。
こんな事でアイツの肝を冷やすようなことをしてしまったのだから。
俺たち二人の意思確認もしたことだし、もう一度彼女に礼を伝えてこの教会から出ようとすると・・・・
・・・・あたりは、もうとっくに真っ暗であった。
酒屋もだいぶ閉まっているし、人の往来も馬鹿に少ない。
日本で言う、深夜だ・・・・
今開いている宿なんか、この王都内にはないだろう。
どうしよう、どこかの公園で朝まで時間でもつぶすか・・・・?
そう、ノゾミに聞こうとしたところで、
「あの、もしよろしければ今夜はこちらのほうでお休みいただいてもかまいませんよ?」
指で、大聖堂の真ん中ぐらいを指さすイリスさん。
それはありがたい!
野宿は出来る限り、避けたいところなので。
ノゾミに意思確認をするため、視線を向けると、コクリとうなずいた。
よかった・・・・
「えっと・・・・それじゃあ、お邪魔します。」
「はい、どうぞ。」
再び、教会内へと案内される俺たち。
こうして俺とノゾミの二人は、教会のご好意に甘える事にしたのだった。
◇◇◇
数時間のち、大聖堂のある一室で一人の紺色の修道服を着た女性が、白く輝く水晶に話しかけていた。
「はい、法王様。 例の人物に本日、接触しました。 特に危険思想などはない、心優しい青年でした。」
『そうか・・・・ごくろう。 このまま、怪しまれない程度に監視をしてくれ。 神とともにあらんことを。』
「神とともにあらんことを。」
それとともに、水晶からは光が消え、透明な水晶に戻った。
カイト君とノゾミちゃん、仲直りができてよかったですね。
聖女様は・・・・
別に、悪い人ではないんですよ?
ただ、世界平和を願っているだけで・・・・・




