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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第14章 始まる輸送革命
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第320話・上げ膳据え膳

たいへん、お待たせ致しました。


これからも、よろしくお願いいたします。

感想や気になる点などがありましたら、遠慮なくお寄せ下さい。


ガハハッと、大きな笑い声が屋敷に木霊した。

カイトが鉄道は兵器にあらずと熱弁し、あげく『自衛の戦でも、人は殺さない』と意味不明なことを言ったのが原因だ。

ベルランダの地方武官、実質的な領主を兼ねるセイグンは、笑い堪えきれないといった様子ながら話し続けた。


「大公殿下が居るベアルは安泰でしょうな、なんでも侵攻して来た魔王軍を追い返したとか」


「い、いえ追い返すなんて、そんな・・・・!」


こそばゆいぐらいにヨイショしてくる彼だが、カイトとしては特別なことをした認識は無い。

決して謙遜などではなく、魔王が怒っていたので話し合った、それだけである。

あの後『破邪』という術を使って数日間、魔法を使えないようにしてやったのは、今では良い思い出だ。


「それだけの武力を有して尚、大公殿下は『人を殺めぬ戦』を追い求めると?」


「誰かが傷つくなんて、ゴメンです」


大公様の毅然とした返しに、セイグンは再び大きな笑い声を上げる。

そんなに可笑おかしいだろうか?

スキを見てメルシェードたちへ視線を送るも、揃って視線を外し他人のフリをする。

キョトンとしているヒカリだけが唯一、ぼっち感を和らげてくれた。


「俺は平穏に暮らしたいだけです、必要以上に栄える必要なんて無いでしょう?」


「いやいや・・・・殿下の申されたい事は、よーく分かりました。 実に愉快痛快、このような事は数十年ぶりです」


彼が笑うたび、身に着けた甲冑が擦れ合い、ガチャガチャと音を鳴らす。

少しは見慣れてきたものの、やはり滲み出る威圧感がハンパでは無く、気圧されてしまう。

ともかく今は、目の前の事に集中する。


「それでその・・・・、鉄道を敷く許可のほうなんですが」


「ふむ、そうでしたな。 どうしようか・・・・回答は明日以降では?」


「あ、明日ですか?」


そう言ってセイグンは、座ったまま窓の外を見る。

まだ夕方ぐらいと思っていたが、すでに外は暗くなっており、星が出ている。

日程には余裕を持たせて在るし、急いで心象を悪くしては意味が無い。


「すみません、すっかり長居をしてしまいました」


「いえいえ、こちらこそお引止めして申し訳ない。 部屋は用意させてありますので、本日は当家に泊まって下さい。 召使に案内させましょう」


サッと手を振るなり、衛兵のような格好の男性2人が入ってくる。

来たときから思っていたことでは在るが、この屋敷では衛兵が使用人の代わりを務めているらしい。

机に広げた資料を仕舞うためにカイトはアイテム・ボックスを開いて、中を見るなり、あっと声を上げた。


「忘れていました、これはウチの領地の特産品を加工して造ったものです。 どうぞ食べてください」


「ほほう、これは丁寧にどうも」


興味深そうに身を乗り出す彼に、カイトは簡潔にコレら説明をした。

出したのはベアルあんぱんにグレーツクまんじゅうに・・・・ようはエルハルドさんに渡したものと、全く同じものである。

鉄道のことなどで後回しになってしまったが、幸いと言うか、忘れなくて良かった。

だがセイグンは何より、カイトにいたく興味を示していた。


「・・・・失礼ながら、大公様の元の職業は魔法使いなのですか?」


前に『アイテム・ボックス』は、超高度な魔法だと聞いたことがある。

次々に何も無いところからモノを出すので、そんな疑問が湧いたのだろう。

目を丸くする武官に対し、魔法に疎い彼は頭に手をやり、恥かしそうに返した。


「・・・・よく、わかりません」



◇◇◇



体を預けた途端、ふんわりと包んでくれる抱擁感ほうようかん

そして毛並み一つ一つまで、手入れが行き届いているのだろう、キレイなシーツ。

寝具を開発した人は、世界で最も偉大な人間だとカイトは思った。


「ふぅ・・・・やっと心休まるよ」


「それは、こちらのセリフです」


ベッドへ腰掛けるカイトを前に、使用人の格好をした秘書メルシェードは大きな溜息ためいきをつく。

セイグン夫妻との夕食も済ませ、ようやく一息つくことができるのだ。


「奥様が居たら何と仰るか・・・・あなたも!」


カイトから横、同じようにベッドへ頬ずりするダリアを、メルシェードはゴミを見るように見下ろした。

最近は遠慮が無くなってきていると言うか、メイドラゴンの方も無視しているのか、目立った衝突などは起きていない。

ヒカリについてベッドに腰掛けているのだが、そちらへの注意は無いらしい。


「まぁまぁメルちゃん、どうだい? 気持ちいいよ」


「お断りします!」


顔を真っ赤にして頭上の耳を逆立てた秘書は、自堕落な主は放っておき、残る2人のうちダリアをベッドから引き剥がした。


「我々の部屋は別です、参りますよ」


「離しなさい亜人の娘よ、私はこのまま休むのです!」


「聞き分けなければ、メイド長に告げ口しますよ」


駄々っ子のように頑なだったメイドラゴンの顔が、あからさまに凍りついた。

メイド長のクレアさんには頭が上がらないのは知っているが、ここまで影響力が在るとは。

ヒカリに関しても、あれほど物分りを良くさせたのは、アリア仕込みだろうか?

結局3人は部屋から出て行ってしまった。

突然静かになったせいか、部屋が広く感じる。


「俺もいい加減、寝るか・・・・」


セイグンさんとの話は、まだ終わっていない。

明日は何としても、鉄道の許可を得なければならないのだ。

早々に寝間着に着替え、布団をかぶったカイトだったが、ここにきて問題が発生した。


「・・・・眠れん」


考えないようしよう思えば思うほど、どうして明日が気になってしまい、目をつぶっても寝付くことが出来なかった。

試しに羊を数えてみたが、効果が無いどころか、むしろ目がさえてきてしまった。

誰だ、数えたら眠くなるといったヤツ!


「そうだ、ミルクは良いんだっけ」


どっかで聞いたことがある、ミルクは体の何かに作用して、イイ感じに体を健康にしてくれると。

寝る子は育つともいうし、健康になればおのずと眠くなるに違いない。

合ってるんだか、間違っているんだか分からない超理論を思いついたカイトは、善は急げとコップを出して、そこへ魔力を送る―が。


「く・・・・駄目か」


魔法も万能ではないようだ。

ピカッと閃光が走っただけで、コップの中には何も無いまま、カイトはガックリを肩を落とした。

初めて魔法を使おうとしたときも、ラーメンを出そうとして失敗したし、でもこうしてコップは出せるという矛盾。

この違いは何なのだろう?などと、ズレた事を考えてみるが分かるはずもなく、今はミルクを飲むことに専念する。

ミルクが在るとすれば・・・・この屋敷の台所なら在るだろうか?


部屋には、小さな鈴が備えられている。

なにか用事があるときなど、これを鳴らすだけで使用人がすっ飛んでくる。

こんな時間に気は引けるが、かといって他人様ひとさまの台所へ侵入することはできない。

一瞬のためらいの末、カイトの出した答えは―


「ごめんなさい、一度だけにしておきますので」


チリリーンと軽く、まるで風鈴のような音色が部屋に鳴り響く。

ほどなくして、1人の女性がやって来たのだが。


「ああああああの、私、こういった事は初めてでして、その・・・・お優しくしていただけると助かります!」


「・・・・・・・え?」


入ってきたのは使用人ではなく、薄い寝間着の格好をした少女だった。

もう少しで、新章突入・・・・・したいです。

出来る限り、頑張ります。

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