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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第3章 王都
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第32話・すれ違う心

拙い文章力で、申し分けございません。

一応、伏線回収話です。



私の横に、カイトは居ない。


彼は盗賊を倒して以来、ずっとふさぎ込んでいた。

私にはなぜ、そんなに落ち込んでいるのかが分からない。


乗っていた馬車が盗賊に襲われたとき、私は咄嗟にカイトを庇った。

もし食べてしまったという魔石がなければ、私はそのまま死んでしまっていたかもしれない。

それを気にしているのかと思いきや、そうではなかった。

彼は何かを気に病み、そして悶々としていた。


私はソレを、どうにか治したかった。

いつもの優しい、カイトに戻ってほしかった。

なのに・・・・


『キライ、カイトなんか大嫌い!!』


私の口から出たのは、掛けようとした言葉とは程遠い内容の言葉だった。

何を言っているんだ私は。

彼の心ひとつ、いやしてあげることすらできないのか。


あのとき、巣穴から出てきたときに抱き上げられたときの暖かいぬくもりに居心地の良さを感じ、彼についていった、ただのトビウサギだった私。

そのときに、小さな心に誓った。

彼とはこれからずっと、楽しいこともつらいことも全部、共有しようと。

楽しいことがあったら一緒に喜びを分かち合って、辛い事があったら二人で悲しんで慰め合って・・・

なのに、私は彼が一番救いを必要としているときに、その心を傷つけるようなことを言ってしまった。


天を仰げば、前にカイトとシェラリータで見たのと同じ星が、変わりなく瞬いている。

私は星になりたい。

街の明かりは、ただ私の心を抉るだけ。


そして私は、差し伸べる彼の手に怪我まで負わせしまった。

恐くなった。

自分が、彼のそばにいる理由がなくなってしまったように感じて・・・・

彼にとっての私の存在意義が、無くなってしまう様で・・・・

本当に言いたいことは違うのに。

本当に伝えたいことは違うのに。

このままでは、彼の心をもっと傷つけてしまう。

・・・だから、逃げ出した。

自分が出せる、全速力で彼の元を離れた。

もう、彼に合わせる顔がない。

きっと、彼は私のことを嫌ってしまったから・・・・


「カイトォ・・・」


その名前を口に出すだけで、涙があふれてくる・・・・・・・・・・・・・・



◇◇◇



ドスン!


「おい、ちゃんと前見て歩かねえとアブねえぞ!」


「はい・・すみません。」


今日、何度目か分からない。

通行人とよくぶつかる。

さすが王都だ。 

通行人の量が、シェラリータのそれとは、段違いだ。

しかし・・・・

それだけでは無い気がする。

何か大事な部品を失ったような・・・・

列車で言うと、車輪を失ったような・・・・

そんな空虚くうきょ感があった。

俺はこの都市でいったい何を、しようとしていたのだったか・・・・

俺は何が目的で、シェラリータを離れたのか・・・・

まったく思い出せない。

あても無く、フラフラと王都をさまよい歩いていた。



探せど探せど、どこにもノゾミの姿を見つけることは出来なかった。

彼女はどこまで行ってしまったのだろう。

いや、そもそも見つけられたとして彼女を連れ戻せるか、まったく分からない。


『ノゾミには悩みが無さそうで、良いなァ』


あんな事を言った先ほどの自分を、フルボッコにしてやりたい。

彼女の素性を考えれば、そんな言葉は絶対に出なかったと思う。


ノゾミは、シェラリータという街で狩猟中に拾った子。

それも人間ではなく、トビウサギという野生動物だ。

ギルドの素材回収の依頼で、数匹のトビウサギを狩っていたとき、彼女が巣穴の中から姿を現した。

今思えば、狩ったのはノゾミの家族だったのかもしれない。

彼女は紆余曲折あって今は人間の子供のような風貌だが、種族に変化はない。


彼女はどんな思いで、俺の横に居たのだろう?

そう考えると、胸が締め付けられる思いだ。

何としてでも彼女を見つけければならない。


一心不乱に王都の喧騒の中を、一人の赤髪の少女の姿を探すカイト。

しかし王都というだけあって人の密度は濃く、なかなか彼を、思うように前へ進ませてくれない。


どすん!


そんな中で今夜なん度目か、人とぶつかってしまった。

咄嗟に謝るカイトに、彼らはイチャモンを付けてくる。


「うおおおお、痛たたた!!!!」

「これは!! 兄貴、骨がイッちまってやすぜ!!」

「おいテメエ、仲間の治療代出せや。」


三人組みの、優男やさおとこが大げさに痛がり、金を要求する。 

なんだ、こいつら当たり屋か。

よく漫画などで不良が、こうしてカツ上げなどをしていたな、などと考えるカイト。

やるならせめて、人通りが少ない場所でやれよな。

ヤレヤレ・・・・・


「なあ、それより赤い髪の女の子を見なかったか? 探しているんだ。」


「は・・・いや? そんな特徴的な女の子は見なかったが?」


少しも動じないカイトに、骨が折れたとか抜かしていた男は痛みも忘れ、この質問に答えた。

期待はしていなかったが、やはり時間の無駄だったらしい。


「邪魔をした、それじゃあな。」


「「「ちょっと待てーーーーーーー!!!」」」


当たり屋トリオは、大層お怒りの様子で、カイトを引き止めた。

一筋縄ではいかないようだ。


「よくも俺たちをコケにしやがったな? 賠償金を出しな、有り金全部おいていくなら、応じてやっても良いぜ?」


最悪だ。

こいつらもやる事は盗賊と一緒。

しかし王都で暮らしている以上は、彼らは王都市民だ。

その線引きは、何なのだろう?

番兵さんの言う人権がなくなるタイミングというのは、どのラインからなのだろう??


「聞いてんのか、このガキ!!」


ドゴォッと言う音ともに、俺の身体が一メートル先ぐらいまで飛ばされる。

・・・重いパンチだ。

だが目が覚めた。


正直、彼らが盗賊がどうかなんて、至極どうでもいい。

今はともかく、この街のどこかに居るノゾミを探し出すんだ!

ゆらりと立ち上がった俺は、目の前のバカなサンドバッグに、身体強化した、鉛のパンチを叩き込んだ。



◇◇◇



「ご協力、感謝します。」


「どうも。」


先ほどボコボコにしたチンピラ達は警備兵に預け、カイトは再びノゾミを探しに出る。

駄女神のチートがあるとはいえ、さすがに三対一は堪えた。

カイトの方も、少なからず手傷を負っていた。

疲れと空腹のせいで、治癒魔法も思うように発動せず、そのまま。

こうしている間にも、ノゾミは俺のようにチンピラに絡まれているかもしれない。


そう考えると、気ばかり焦った。

時間とともに、彼の体力は粗やすりのように削られていく。

時は夜更け、先ほどまで開いていた王都の店も、徐々にのれんを下ろしていく。

それでも、ノゾミは見つからなかった。


「はひぃ・・・・」


さらに数時間が経って身体疲労がピークに達したころ、カイトはとうとう疲れから、どこかの建物に背中を預けた。

探し続けたいが、体は少しも言うことを聞いてくれない。

その時、建物のドアが開き、中から光が差し込んだ。


中から出てきた女性は、俺へ声を掛けてくるが、内容は聞き取れなかった。

疲れのせいか、顔すらボンヤリとしか瞳に映らない。

彼女は、一体どこの誰だろうか?

しかしそれを確認する前に、俺は強烈な眠気に、その意識を手放したのだった・・・・・・





問題多発回につき、大幅に改稿しました。


後の話も追って修正しますので、しばらくの間はお見苦しい箇所などがあると思いますが、なにとぞご了承ください。

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