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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第14章 始まる輸送革命
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第305話・解決しよう

これからも、よろしくお願い致します。

感想や気にある点などがありましたら、遠慮なくお寄せ下さい。

「うーん・・・。」


カイトが眉間にしわを寄せ、首をひねる。

鉄道が王都まで延伸して、これまで見過ごされてきた新たな問題が少しずつ、浮き出てきたせいだ。

その一つが、魔物を始めとした野生動物の存在である。

この近辺は大陸を見渡しても比較的平穏な環境が整っており、レッドベアなどの野生動物の出没以外、今までも目立った被害等は皆無だった。


しかし、このほど開業した区間は、ベアル近郊の丘を登った『魔の森』を抜ける。

この場所では魔物が多く出没し、ドラゴンを始めとして跋扈ばっこしているのだ。

既に幾つかの『事故』が発生しており、周辺の森で火災が発生するなどの被害が出始めている。

これらに策を講じるのも、ベアル領主様の仕事の一つだ。

そこで彼はメルシェードから受け取った数枚の書類を、手に取った。


「冒険者ねぇ・・・。」


腕を組んでうなるカイト。

出没する盗賊や魔物などの対策案の一つとして、冒険者ハンターの活用が考えられた。

鉄道の建設の時に、護衛としてギルドに依頼したのと、同じことである。

だが『報酬』が高く付き、それんも常態化には金が掛かりすぎる。

ベアルは領民が多いのに金が無いという、非常に珍しい領なのだ。

それを分かっているメルシェードもまた、彼同様に困惑した様子を見せている。


「あくまで私の持論ですが、冒険者と一括りに仰ってもその実、千差万別です。 盗賊相手の『抑止』にはなるでしょうが、それ以上は難しいかと。」


「うー、そっかぁ~~!」


メルシェードのもっともな意見に、カイトは頭を抱えたくなる。

そう、世の中は彼のようにチート能力を欲しいままにしている者など、何処にも居ない。

もし彼の言う『警備』の基準にかなう逸材いつざいが見つかったとしても、雇うのには報酬天文学的数字になるだろう。

一言で言えば、机上の空論。

出来もしないことだった。


「うまくいかないモンだなぁ・・・。」


日本に居た頃、カイトは何度か歴史の授業を受ける機会があった。

その時に織○信長を始めとした、多くの領主的な人物も出てきた。

その時は、『ただ踏ん反り返って、偉そうにしてりゃ良い』などと考えていたが・・・。

いざ自分がその立場になってみると、世の中、そんな上手い話など無いと思い知らされる。

むしろノゾミとハンターで日々を暮らしていた頃は、責任がない分だけ、まだ楽だった。

そんな彼の幻想を打ち砕くように、彼女は畳み掛ける。


「駅馬車組合からの報告には、ほかに列車への無賃乗車などの事も問題として挙げられていました。」


「マジか!」


報告書を一枚ずつ、順番に片付けようとするカイトに対し。

メルシェードは彼が夢の中に居る間、寝ずに目を通している。

この辺りに努力の差、というモノが顕著に現れるもの。


「無数にある信号所にて、貨物車に乗り組んでくるようですね。 大抵は駅に着いた所で発見されるのですが、キリが無いと・・・。」


「うわぁ・・・。」


カイトは頭を抱たくなった。

ボルタまで開業した時には、そんな事件は起きたことはなかったのに。

問題が山積み過ぎて、彼の頭はパンク寸前だ。

それでも尚、メルシェードは畳みかけ続ける。


「そこでなのですがカイト様、これら3つの事件には共通項がございます。 彼らが外部より現る、害役であるという事でございます。」


「へえぇ・・・。」


害とまで言うかと驚く反面、カイトは3つを結びつけた事にも驚いた。

言われてみればとは思うが、一人で考えていればまず、気が付かなかったであろう。

でもそうか、『外部からの』と言うのなら・・・。


「そうか、俺の魔法でゴーレムを!」


「違います。」


この街で警備の兵が足りない時、急増でゴーレム兵を増産したことがある。

鉄道建設でも大きな力を発揮してくれていた。

・・・のだが、今回は入用は無いらしい。


「ゴーレムで守らせるには、王都やバルアまでの距離があり過ぎます。 いくら置いてもキリがございません。 それにゴーレムは土人形、表面の魔法陣を崩されれば、土塊にかえります。」


「なるほど。」


言われてみれば、もっとも。

つい魔法は万能などと考えてしまって、人手が無ければ作ってしまおうという考えを起こしてしまった。

適材適所という言葉がある。

弱点を突かれてしまえば、ゴーレムの強さなど関係ない。


戦うのではない、来るなら入れないようにすれば良いのでは。

ベアルの街にしている事と、同じ事を鉄道沿線でも実行すれば良いのだ。

珍しく少しは冴えていたカイトは、考える間もなく顔を上げる。


「そうか、俺の障壁魔法か!」


「いいえ。」


口に出した瞬間、またも秘書に否定をされる領主カイト。

彼は机からズルリと落ちそうになった。

これはと思ったのに。


「カイト様の魔法では、いつか先細ってしまいます。 恒久的な運用には、もっと独立した運用が必要かと。 そこで、機関車などの動力源とされている魔石に目を付けました。」


「そうか、それで障壁を!」


やっとメルシェードが首を縦に振ったので、カイトはひどく安心した。

彼女の意見はこうだ、魔法は『魔力』の供給が無ければ発動せず、なまじカイトの使う魔法はチートなものばかりなので、余計に魔力を消費してしまう。

しかしそれでは、カイトがいちいち、定期的に魔力を補充しに行かねばならなくなる。

それは、現実的ではない。

だが魔力の結晶たる魔石ならば、補給は難しくない。

だが、それにも問題はある。


「ですがカイト様、障壁は全体に張るわけには参りません。 同時に解決せねばならぬことは、まだ多くございます。」


「うん、ぜんぶ洗おう。」


やっとヤル気になったカイトは、積極的に問題の洗い出しを、秘書の彼女と始めた。

障壁の術式に、それを崩されないための対策、発動源の魔石の手配など・・・

解決すべき対策は、山ほどある。

それでもカイトは鉄道のためになるならと、今日は寝ない覚悟までした。


もっともベアル領全体の『問題』はコレだけではないので、彼は本当に『眠れぬ夜』を過ごす事になるのだが、それは別の話だ。



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