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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第13章 ベアル改革・・?
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第292話・ウチの亜人さん

これからも、楽しんで書いていこう考えています。

感想や気になる点などがありましたら、遠慮なくお寄せ下さい。


「こちらが住民登録の手続き、そしてこちらが仮住居の申請書です。」


「サンキュー。」


アリアから手渡される山のような紙の束を前に、満足げに顔を縦に振るカイト。

多くの鉄道工事等が進行することで、ベアル領は一つの問題に直面した。

慢性的な、人手不足だ。

この事態に当たり、魔族のアキレスの進言でカイト達は、新たな人材確保に乗り出す事となった。

そしてそれが・・・


「これでよろしいのですね?」


「ああ。 うまくいけば良いのだけど。」


民族紛争とかで、住む土地を追われた王国民たちであった。

その中の一部の人たちは、ここ法国へと難民として流れ込み、国境付近にキャンプを作って生活していた。

彼らは住む場所と生活基盤が欲しい。

ベアル領は人手が欲しい。

互いの言い分が、今回は上手く合致したわけだ。


「彼らの住居や現場派遣などに関する書類は、追って届けさせましょう。 あの・・・・、何か?」


食い入るようにして、渡された書類へ目を通すカイト。

最近は彼の、こういった姿も散見されるようになって来てアリアは内心、感心していた。


「ああ。 ・・・パッと見たところ、人間以外も多いみたいだね。」


「亜人ですね。 王国は多種族の国家ですから、日常的に紛争が絶えないのです。」


犬人、猫人、熊人、蛇人・・・・

なるほど、獣人と一括りに言っても、その種類は千差万別のようだ。

地球に居たころはコスプレ位でしか亜人など居なかったので、実に物珍しい。

ぜひ、この目で拝んでみたいものだ。

・・・・こんな事を言っては、獣人さんたちに失礼か。


「彼らの移動には俺の転移を使うから、準備が整ったら呼んで?」


「ええ、そうします。 では私はこれで・・・」


お疲れサマーと、出て行くアリアを見送るカイト。

今は自堕落ドラゴンも居ないので、部屋の中は一挙に静かに・・・


「お兄ちゃん、終わった?」

「カイト、私もいるよ~。」


「・・・・あぁ。」


ならなかった。

俺のベッドの上を占拠しているノゾミとヒカリが、こちらへ手を振って存在をアピールしてくる。

2人とも、仲が良いなー。(棒読み)


当然、俺は2人とたわむれている時間などあるはずもなく、時間に追われながら政務を続ける。

あ~あ、駄女神に殺されずに済んでいたら、今頃は日本でサラリーマンして、休日は電車に乗って遊べていたんだろうなー。

なんだかなー、な~んだかなーー。

そんな風に世の理不尽さを嘆いていると、横からグラスに入った透明な液体が差し出される。

こんな気の利いた事をしてくれるのは、1人だけ。


「どうもありがとう、メルちゃん。」


「秘書の業務ですので、お構いなく。」


のどを潤していく、冷たい水。

日本とまったく変わらないのは、水の味だけだ。

じゃっかん食感が固い気はするけど、細かいことは気にしないのが俺の良いところ。

少し元気が出てきたところで、書類の整理をする。


机の上はいつも、書類などが山のように積まれている。

大多数は領内の事で占められており、付随するように鉄道関連のモノがある状態。

現在、手元にある難民の名簿には数百人の名が連ねられており、その年齢やステータス値などが事細かに記されていた。

これを元に仮の戸籍を作るのが、今の与えられた仕事の内容だ。

そこからベアルの住居整備や仕事の振り分けがされるので、見落としなどは絶対にあってはならないのである!


そこで、俺の秘書様が大いに力を振るってくれるのだ。


「メルちゃん、ただの人間と比べたときの、そのほかの種族さんの特色があったら教えてくれない? まずは蛇人族って言う人から!」


「人族とですか? 個人差があるのですが、まずは脚部が蛇そのもので、寒い場所が苦手でして・・・」


「ふむふむ。」


これで、大方の工事の見通しが付いた。

・・・ような、気がした。



◇◇◇




その夜。


カイト達が寝静まったのを見計らい、1人の使用人が明かりが消されて暗闇と化している屋敷の通路を、滞りなく進んでいく。

目は怪しく光り、ときおり頭上の耳が、ピクピクと動くのが見て取れる。

彼女は一つの大きな扉の前に立ち止まると、手の甲で軽く2回、ノックをした。


「奥様、私です。 ご報告に上がりました。」


すこし間を置き、中からアリアの「どうぞ。」という声が聞こえてくると、彼女はゆっくりとした動作で中へと入っていく。

アリアはこの時間になっても寝ずに、扉に背を向ける格好で仕事に身を入れているようだった。

ベアルがアホ領主が君臨しているに関わらず傾いていないのは、彼女による力が大いに関係している。


そして、その傾きの原因を作っているカイトに、彼女らは監視の目を光らせていた。

メルシェードはカイトの良き従者である反面、彼の良き監視者でもあった。

行動を止めるなどといった権限は与えられては居ないものの、彼に付きっきりになる事で見えてくる事は、それだけでも実に多い。

今回はその中間報告に、彼女はやって来たのである。


「どうでしたか、メルシェード。 彼の内偵結果は。」


「詳しい内容はこちらの方に。」


そう言って、メルシェードはアリアの机の上へ静かに紙の束を置く。

目を通した途端、アリアは「うっ」と口を詰まらせた。

補足の説明をするように、メルシェードが口を開く。


「魔王配下の六魔将の一人、俗称は『闇獄』。 魔王軍侵攻後しばらくに軍門に下らせ、密かに諸国を密偵させております。」


「な、なんと大胆な・・・・」


フラリとよろめくアリアだったが、何とか両手を机に突き、倒れるのを防ぐ。

最近どうも街の周りなどで魔族の目撃談が多いので、もしやと思って探らせれてみれば・・・

魔王がよく、黙っているなと逆に関心させられる。


「今のところ魔族側に不穏な動きは無いとの事です。 私も本人と接触しておりますが、こちらに危害を加えるようなつもりは無いようです。 一応は。」


「そうですか・・・」


想像以上の報告内容に打ちのめされ掛けているアリアだったが、報告書の束はもう一つ存在した。

これ以上、彼にはどんな秘密があるというのか。

イヤな予感がするが勇気を出して、パンドラの箱(カイト報告書)に目を通すと・・・


「!!!!!!」


「グレーツクなのですが、ルルアム様は政務に関与しておりませんでした・・・ 普段は民で決め事などをしているようですが州長、つまり領主は・・・。」


「カイト様で、あったと・・・・。」


・・・信じられぬ話ではない。

イロイロ誤魔化していたが、きっとバルアのように重要なポストに収まっているのだろうと、アリアは踏んでいたのだから。

さすがに領主をしていた・・・とまでは想像していなかったが。


しかし考えれば、分かりそうなモノだ。

いくら重要なポストに収まっていても、グレーツクとの交換留学生とか、最近で言えば魔王の侵攻とはいえ、急に決められた迅速な避難だとか。


カイトが領主なら、そんな事は彼の一存でどうとでも決められる。

こんな事は、ほんの少~しだけ頭をめぐらせれば、それで考え至ったはずなのに。

しかも報告によると、なんだかんだ知らないのは当のアリアぐらいだったようで・・・。


「あ、あっははっははははははははは!!」


「お、奥様!? お気を確かに!!!」


メルシェード。

有能なカイトの秘書であり、狼人ゆえか義理堅くも諜報などにおいても、敏腕な特殊ポストの使用人。

ゆめゆめ気を許すことなかれ・・・・


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