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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第13章 ベアル改革・・?
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第284話・秘書ってヒト

これからも、楽しんで書いていこうと考えています。

感想や気になる点などがありましたら、遠慮なくお寄せ下さい。

魔王軍がベアルへ侵攻してくる、ほんの少し前。


俺は初めて、領内の法律改正というものを行った。

アリアの大きな助力を借りはしたものの、俺の手による初の『らしい』仕事となる。

今日はその延長で、アリアに住民の要望書の一部を渡された。

これら要望を、俺の裁量で選別するのが仕事である。

で、その肝心の内容なのだが・・・


「『穀物倉庫を増設して欲しい』・・考えておくか。 次はえっと・・『我が商会に魔石採掘の独占権を・・』パスだな。」


しかし『判断』というのは、実に難しい。

皆がみな、好き勝手に自らの要望を言ってくるのだ。

しかも自己中なモノから、大衆的なものまで全部が混ざった状態で。


「ふぅ・・・」


視線を書から外し、天井を見つめる。

一昨日おとといの魔族騒ぎといい、疲れることが多い。


「ヒカリ、どんな按配あんばいだ?」


「へへー、仕事は終わったの?」


「いや・・もうしばらく掛かりそう。」


「えー?」


目の保養にとヒカリへ視線を配ると、彼女はアクセサリー作りにいそしんでいた。

暇そうにしてので、前に森で拾った白い葉や花を、糸と一緒に渡したのだ。

造っているのは・・・首飾りだろうか?

彼女は屈託の無い笑顔をこちらへ向けてくる。

俺も、まだまだ頑張れそうだ。


「『街の一角に、遊技場が欲しい』? 遊技場って何のことだ??」


「ここで言う遊技場とは、大人の娯楽施設のことでございましょう。」


首を傾げていたら、隣から説明があった。

大人の娯楽と言うと・・・

待てよ?

今、俺の疑問に答えてくれたのってダレ??


「大公様、益々(ますます)のベアル領の繁栄、心よりお喜び申し上げます。」


「おおおーーーーーーーーー!!???」


びっくり仰天!

ガラにもなく、大きな声を出してしまったぜ・・・

ヒカリも『わっ!』と驚いたような声を出した。

俺の横に立っていたのは、メイドの格好をしたメルシェードだった。

いつの間に現れたのか。

君は忍者なのか!?


「私が連れてきたのです。 何度もノックをしたのに、カイト様が一向にお出にならなりませんでしたので。」


「アリア。」


メルシェードの背後から、呆れ口調のアリアが姿を現す。

俺が要望書に夢中になっている間に、入室してきたらしい。

ずっと姿を見ていなかったが、どうやらメルシェードは元気そうだ。


「メルちゃんが元気そうで何より。 ところで、何か用事?」


ともかくアリアに用件を聞く。

メルシェードを伴ってくるなんて、今回が初めてのこと。

そういえば彼女を『俺の秘書に』って話があったけど・・・。

ま、まさか!


「もしかしてアリア、とうとう俺の秘書に・・!!」


「違います。」


俺が口にした言葉は、途中でスッパリとアリアによって否定された。

良かった、秘書はまだらしい。

ホッと肩の荷を降ろすと、たしなめるようにアリアが口を開いた。


「カイト様の『秘書』はまだですが、彼女には実地訓練が必要です。 今日はその事で来たのです、少なくとも今日一日、メルシェードにカイト様のお仕事の補佐をさせます。」


「えええーーーーーーーーー!!?」


本日二度目の、カイトの絶叫。

ようするに、彼女にプレ秘書をやらせるという事らしい。

用って、そういうことですかい・・・


「メルシェード、良いですか? 今日一日、あなたをカイト様の補佐に任命します。 今までに培った経験を活かし、彼の右腕となって、よく精進するように。 良いですね?」


「大公様のため、命をも差し出す覚悟です。」


俺に有無を言わさず、あっちでは勝手に話が進んでいく。

いや、拒否権なんてものが無いのは分かっているんだけどさ。

いつの間にかメルちゃんは、立派な使用人になっていた。

これは間違いなく、ダリアさん以上だ。


「ではカイト様、彼女を置いていきます。 用事や質問等があれば、彼女に聞いて下さいませ。」


「はい。」


アリアはそのまま笑顔を向けると、メルシェードを置いて退室して行こうとする。

や、ちょっと待ってください!!

秘書の件は承知したけど、ちょっと君に聞きたい事が・・・!


「アリア、実は要望書の内容で分からない内容が・・・」


「メルシェードに、お聞き下さいませ。」


引き止めようとしたら、アリアに笑顔で睨まれる俺。

般若はんにゃや、ここに般若がおる。

逆らったら、命は無いで。


「よろしいですね?」


「・・・はい。」


パタンと部屋の戸が閉められると、室内は俺とメルシェード、ヒカリの3人だけになる。

ヒカリは何事もなかったように、アクセサリー作りを再開し始めた。

対してメルちゃんは、深々と頭を下げたままその体勢を維持し続ける。

頭上に頂く、ピクピクと動く灰色のケモ耳が、なんとも愛らしい・・・が。

き、気マズイ・・・

彼女には、なんと声を掛けたら良いだろう。


僭越せんえつながら大公様、発言してもよろしいでしょうか?」


俺が対応にこまねいていると、彼女の方から声を掛けてきた。

キレイなお辞儀からはどこか、気品を感じた。

今まで彼女は、アリアたちにどんな訓練を受けてきたのだろう?

俺には想像もつかない。


「はい?」


「先ほどの娯楽施設の要望についてです。」


ああ・・そんな話をしていたっけ。

娯楽施設と言っても、遊園地とかでは無さそう。

公共衛生上よろしくないし、そんなもん要らない気がするけど。


「メルちゃんは、どう考える?」


「・・・私は一介の使用人に過ぎません。 大公様のお考えのとおり、当の娯楽施設というものは街の闇となり、犯罪の温床となりうる危険極まりない存在でございます。」


犯罪・・・

思ったとおり、作らない方が良いような口ぶりだ。

んじゃヤメ・・・


「ですが造らずにおけば、街の光が増すのにつれて闇もまた、広がりましょう。 大公様のあずかり知らぬベアルの闇の、それこそ温床となりえます。」


造らなかったら、ますます治安が悪くなると。

え・・じゃあ、どっちにすれば良いの!?

造ったら抑止になるけど、更なる闇の世界が広がることにもつながって・・・

でも造らずに傍観しても取締りに、かなり時間と労力を割く事に・・・


「他の領では、この娯楽施設を徹底的な管理下に置く事で、対処としています。 ですが、それでも最良の結果は生んでおりません。 最終的な判断は、大公様にゆだねられます。」


「・・・。」


彼女は違う。

アリアたちは俺が判断に窮すと、自分の考えを提示した上で俺に最終的な判断を求めてきた。

しかしメルシェードは、これまでの事の起こりや流れなどを、俺に教えてくれただけ。

自分の考えというものは、一切しゃべらなかった。

その上で、俺に判断を仰いだ。

俺はバカだけどわかる、彼女はアリアたちとは絶対的に違う事だけは、理解できた。


「お兄ちゃん、仕事は終わったの?」


「ごめんヒカリ、今日は終わりそうに無い。」


「えー????」


顔をしかめ、口を尖らせるヒカリ。

それを傍目に、俺は再び机の上に散らばる要望書へと、視線を下げる。

これからはアリアに頼らず、ゆくゆくは誰にも頼らずに・・・

俺はまだもう少し、頑張れそうな気がした。

(気のせいで無いことを、祈ります)



本作が誕生して、おおよそ1年。


たった5年ほど前まで巷で有名な『異世界転生』というフレーズはおろか、『なろう』も『ライトノベル』という単語すら知らない、ずっと読書感想文で呪詛を吐いていた私。

それが物書きをするなど、まさに『異世界へ』踏み込む意味不明行動でありました。


もしあの時にタマタマ私が家に1人で、しかも台風直撃のせいで眠れずに居なかったら、この作品は誕生しなかったかもしれません。

そうなれば、その後に続く拙作の投稿はもっと遅かったか・・・

あるいは永遠に『投稿不可』として、ホコリだらけの押入れに眠っていたでしょう。

ここまでで、数え切れないほどの『失敗』や『停滞』がありました。

今後もきっと、あるでしょう。


・・・戯言が過ぎました。


ここまで来れたのも、ひとえに読者の皆様方のおかげです。

これからもお見苦しい点などがあると思いますが、よろしくお願いいたします。

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