第282話・仲間?が増えまして
これからも、楽しんで書いていこうと考えています。
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長きに渡る尋問の末。
俺たちは捕らえた女魔族から、大変に有力な情報を得ることが・・・
「屈さぬ! 私は魔族の権威にかけて、決して服したりはせぬぞ!!」
「はああ~~~~・・・。」
出来ていなかった。
さっきから、彼女はずっとこの調子で口を割らない。
何も話してくれないし、何も答えてくれない。
心を覗こうとすれば、気付かれて更に暴れるの繰り返し。
あまり五月蝿いので俺たちは今、ベアル近郊の森に居るという調子だ。
ずっと俺を付けていた以上、何らかの目的があるのは明白。
このまま離してやるという訳には行かない。
しかし口の脅しだけでは限界があるし、ダリアさんに任せたら、うっかり殺しかねないし・・・。
もう面倒だから、魔法で収納しちゃおうかな?
あれは、キッツい拷問だと実証済みなのだが。
「ねぇ、素性だけでもいいから話してくれない? あと目的、今回それだけでいいから!」
「フハハハ、温いな人間! 私はこの身が滅ぼうとも、決して口は割らぬわ!!」
やっぱりムリっぽい。
先ほどから観察しているが、ダリアさんの腕の中だというのに物凄い暴れようだ。
ダリアさんは、憔悴しきってしまっている。
いい加減、疲れてしまったのだろう。
俺も疲れた。
さっさと終わらせないと、こちらが先に参ってしまうだろう。
ダメもとで、彼女には別方向から尋問してみる。
名づけて、褒めて伸ばす作戦。
「君さ、ウチのメイドに手を焼かせるなんてスゴイね、俺、初めて見たよ。 さすがは魔族だね。」
「くっくっく、魔王様率いる魔将の一人『闇獄』が人間の子供一匹に、負けるものか!」
結果は大成功。
女魔族は、割とあっさり身元を教えてくれた。
やってみるものだ。
チョロいな、こんな手に引っかかるなんて。
「ダリアさん、『闇獄』って誰?」
「魔王軍を率いる将軍の称号です。 しかしこれしきで口を割るとは、魔王軍の名も地に落ちたものですね。」
「し、しまった!!!」
ダリアさんの一言で、相手がうろたえる。
好戦的だという魔族の、習性を利用した尋問だ。
こんなで成功するか心配だったのだが、人生、やってみるものだ。
「お、おのれ・・・魔将である私にここまで恥をかかせるとは! 魔王様の采配を仰ぐまでも無い、うぬら全員地獄に叩き落してくれる!!」
ブチッッッ!
女魔族が苦し紛れに罵倒を繰り出した途端、何かが切れるような音が聞こえた。
見るまでもない、横からビリビリと『圧』を感じる。
面倒な事してくれたなコイツ・・・。
自分でやったのだから、責任は自分で取ってよね・・・?
悪いが、死ぬようなことでもない限りは、俺は静観を貫かせていただく。
「たかが魔将の一人がその口の利き方! 茶番は終わりだ、貴様のような身の程知らずは、この手で食い千切ってくれる!!」
「わ!! ダリアさんダメーーーーーーーーー!!!」
寸でのところで、ダリアさんの口の動きが急ブレーキを掛けたように止まる。
まさかいきなり(顔だけとはいえ)ドラゴン形態になって、捕虜を腹に収めようとするとは思わなかった。
怒ったダリアさんは、静観してはならないらしい。
「むうぅ・・・もう少しで食べられましたものを・・・!」
「食うなって!!」
ダリアさんは人間の形に戻り、口を尖らせた。
彼女の中では、いつの間にか目的と手段が入れ替わっていたらしい。
アブなく重要参考人を、死なせてしまうところだったよ。
しかも相手は、魔王軍の将軍。
戦争にもなりかねんかった。
「えーと、脅かしてゴメンなさい。 この人、ちょっとおかしいんです。」
「・・・??!」
すっかり怯えた様子の魔族に、事の次第を笑ってごまかすカイト。
ダリアさんには、後で煮干でも与えておこう。
彼女には、圧倒的にカルシウム分が足りていない。
「あ、あなた方は要のドラゴン・・?」
ダリアさんが戻ったので、俺も同類と思われたっぽい。
冗談じゃないわい。
「違います、俺は人間です。 そっちのメイドが森で拾ったノラゴン。」
「だ、誰がノラゴンですか!??」
ツッコミも絶好調の、ウチで働いているドラゴン様です。
異なる生物ゆえか、あらゆる感覚がズレまくっているものの、彼女なりに一人の人間として、頑張ってくれています。
しいて言うなれば、脳筋なのが、タマにキズかも。
「に、人間だと。 人間のクセになんという魔力だ・・・!」
手の平を返したように顔を紅潮させて、羨望するような眼差しを向けてくる、魔族の女。
俺やダリアさんの力を前に、尊敬のような気持ちを抱いているっぽい。
・・・でもね。
「ぬぬぬ・・・・! 今こそ世界最強種族たるドラゴンとしてカイト殿様には、この世の全てを焼き尽くす火炎を・・・!」
対抗するようにして、不吉な呪詛を唱え、こちらへ殺人的な目力を向けるドラゴンメイド。
こうなった彼女を止めるには、街などで暴れる前に相手をして、ストレスを発散してもらうほか無い。
チクショウ、今日は徹夜じゃないか。
「もぅ良い、面倒な事になる前に帰って。」
「は、え・・・しかし無礼を働いたまま、このまま帰っては魔将としての私の名が廃ります!!」
知らん。
自分の都合を言う前に、己の背後へ視線を向けて欲しい。
うちのドラゴン様は頭に血が上って、湯気まで出している。
このまま放っておいたら、実害が出てしまう。
「カイト殿と申されたか、我が魔族側についてもらえぬだろうか? 魔王様には、こちらで口ぞえいたす。」
「はあ?」
ダリアさんを怒らせておいて、何を言うと思えば。
寝言は寝てから言ってほしい。
こちとらベアルで手一杯なのだ。
しょーもない探りを入れて来るようなヤツに勧誘されてノコノコ行くほど、俺はお人好しじゃないぞ。
「・・・君さぁ、俺を怒らせたいの? 街の外を周回しているお友達もだけど、まとめてダリアさんの餌になりたいの??」
「まさか・・そんな遠くにいる者のことまで・・・!」
驚愕のあまり、言葉を詰まらせる彼女。
気配を障壁か何かで偽装しているっぽいが、防犯のために街の周りには、探索魔法を張っておいているのだ。
何もしてこないので黙っていたけど、煩くするなら、こっちも然るべき手段をとらせてもらうつもりだ。
「という訳で、帰れ!」
俺が突き放すと、女魔族は必死の形相で食い下がってくる。
埋まってしまうまでに、頭をこすりつける彼女。
「ま、待って欲しい! あなたの内包する力は魔王様以上だ。 もし魔王様の配下がダメならばどうか、逆に私どもを眷属に加えては貰えぬだろうか!??」
「ダリアさん、やっぱこのヒト喰っていいよ?」
途端にキョトンとした表情になるダリアさん。
『え、いいの?』ってカンジ。
どうやら機嫌を、直してくれたっぽい。
それでもなお、魔族さんは必死に食い下がってくる。
「人間のクセに我々魔族以上の・・要のドラゴンを従える、その偉大なる力。 私はあなたに惚れた!!」
「・・・あっそ。」
さっきまで俺を物陰からスパイしていた奴に愛の告白されて、喜ぶ人間が居るとでも思っているのか?
眷属とかアホですか??
ゴミを見るような目で、彼女を見下ろすカイト。
「信用されていないのは、分かっている! だからカイト殿・・いやカイト様には、これを預けようと思う。」
彼女から渡される、赤黒い色をした脈打つように明滅する、巨大な魔石。
宝石のつもりか、あるいは友好の証か?
魔石って高価だもんね。
「いらない。」
「待って欲しい、これは私の魔石だ。 我々にとって魔石は、力であり命。 それを握られている限り、私の命は君に預けているのと同等だ。」
・・・。
魔石は命。
それを俺に預ける・・・?
・・・はあああ!??
なんて事を言うんだ、このヒトは!
冗談も大概にしろや!!
「益々(ますます)いらないよ、そんなの! 持って帰ってくれ!!」
「我が身を案じてくれておるのか? フフフ、私ほどの力を有せば魔石をとられた位では、死ぬようなことは無い。」
あんたの最強伝説なぞ知るかい。
彼女の命を、俺が握るなどまっぴらゴメンである。
ダリアさんも、何とか言ってくれ!!
「良いのでは? 喰い損ねるのは残念ですが、魔王軍の将を支配下に置く人間など、今までに聞いたことはありませんよ?」
このヒトもだめだ。
めっちゃ面白がっているし!
「私は魔族の中でも、随一の索敵・伏撃能力を有しております。 必ずやお役立て出来るでありましょう。 手始めに殺したい者が居るのであれば、今すぐにでも。」
先ほどまで隠密行動をしていた魔族女は、こちらへ臣下の礼をとっている。
ダリアさんは、言わずもがな・・・。
何この混沌な状況?
「か、帰れーーーーーーーーー!!!!」
夜空に星が瞬く中、屋敷中にカイトの声が木霊した・・・




