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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第13章 ベアル改革・・?
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第280話・かわるがわるで・・・

これからも、楽しんで書いていこうと考えています。

感想や気になる点などがありましたら、遠慮なくお寄せ下さい!


「え、じゃあイリスさん、帰っちゃうの!?」


屋敷へ帰った途端、教会の司教イリスさんが訪れていた。

用件は、街を離れる前のご挨拶とのこと。

何かの用事で、聖国から呼び出しがあったとの事で、帰国せねばならなくなったらしい。

寂しくなるけど、しょうがない。


「今日中には、出立する予定です。 急にこのような事になってしまい、痛み入る次第でございます。」


「とんでもない、こちらこそ何のお礼も出来なくて。」


互いに深く腰を折って、最後の挨拶とする。

ヒカリも何か思うところがあるのだろう、まるで泣きそうな表情になる。

それをなだめるように、優しい口調を繰り広げるイリスさん。


「代わりの司教は準備が整い次第、聖国を出立するとの事です。 転移でやってくるはずなので、恐らく数日中には到着すると思いますが・・・。」


「そうなのですね・・・」


それを聞いてアリアも、とても残念そうに、ポツリとつぶやいた。

俺のあずかり知らないところで2人は、結構仲良くしていたらしいので、彼女の別れの寂しさも、ひとしおなのだろう。

今の俺たちに出来ることは、彼女を快く送り出すことくらいだ。


「あっちでも、どうかお元気で。 タマに遊びに行っても良い?」


「・・・・カイト様?」


刺すような視線を、こちらへ向けてくるアリア。

遊ぶ時間なんか、ある訳あるかいと、その目が雄弁に語っている。

た、ただの冗談じゃないですかアリアさん・・・。

その光景を見て、イリスさんは微笑を浮かべた。


「お2人は、本当に仲がよろしいのですね。」


「そぅ見える?」


このピリピリした空気の、どこを見てイリスさんはそう思ったのだろうか?

アリアは顔を伏せており、その顔色を窺い知る事は出来ない。

コレは、かなり危険な兆候だ。

彼女が何かを言う前に、話題を元に戻す。


「あー・・ところで、その間の教会は大丈夫なのかい?」


「ご心配には及びません、司教が幾日か不在であっても、説法をとく司祭が常駐しておりますので。」


屈託の無い笑顔を浮かべ、俺たちへ問題ないアピールをするイリスさん。

俺が聞いたのは、教会の警備とかの話だったのだけど・・・・

心配はしていなかったけど、どうやら口ぶりからして大丈夫みたいだ。

そもそも俺は教会という組織を、未だによく分かっていない節があるし。

ボンヤリと聞いていると、彼女が俺の耳へ顔を近づけてくる。


『奥様を、大切にしてあげてくださいよ?』

「え・・・?」


「ではすみません、私はこれで・・・。」


「すみません、何のおかまいも出来ませんで。」


話の意味を聞く前に、イリスさんは急ぎ足で屋敷を去っていった。

どうやら聞けるのは、次の機会となるだろうか?

次に彼女と会うのは、いつになるだろう・・・・


「カイト様、おかえりなさいませ。」


「え!? あぁ、ただいま。」


アリアが頭を下げてきたことで、我に返るカイト。

そうそう、俺はアリアの追及を逃れるために工事現場へ転移して・・・

・・・・しまった。

一気に鉛のように重くなる、周囲の空気。


「あの・・アリア、俺が王様に領を賜りそうになったというのは、別に・・・」


「それはもう、結構です。」


大きなため息をついて、話題を切り替える彼女。

右手に持った便箋びんせんを、まるで俺に見せびらかすように、ヒラヒラと振る彼女。

その便箋びんせんには、王家しか使えない紋章が刻まれていた。

これは、もしかしなくても王様からの手紙・・・?

このタイミングで見せるということは、領に関する関連事項なのだろう。

渡された便箋から、中身を取り出すカイト。


「こ、これは・・・!!」


そこには、目を見張るような内容が記されていた。

つられるように、ダリアさんたちも顔を覗き込ませてくる。

内容は、大まかに言うと以下のとおりだった。


・密偵の情報を総合するに、この手紙が着くころには魔王軍が、既にそこまで来ている事と思う、それを知った上で・・・

・王国軍や増援部隊は、すぐに着く。 それまで死なないで欲しい。

・世間体など気にせず、もし逃亡してきても罪に問うような事は・・・



・・・すごく聞き覚えのある内容だな。

俺が読んでいる最中、アリアが腕を組んで口を開く。


「この手紙が到着したのは、イリスが来る少し前のことでした。」


「・・・そうかい。」


一様に、何とも言えないビミョーな空気が室内を支配する。

侵攻が始まる前に出したのだけど、到着が間に合わなかったという展開だろうか?

とりあえずは何事も無くてよかったよ、本当に。

手紙をポケットにしまい、再びアリアの方へと向き直る。


「留守中に、何か変わったことは無かった?」


「いいえ特には。 しかしカイト様、うるさく言うつもりはありませんが、お出掛けになるときには、行き先などを告げてからにして下さいませ!」


「ご、ごめん。」


プンスカ怒る彼女を、どうにかなだめるカイト。

しかし先ほどのアレは、目的があって転移をしたわけではないので・・・

・・・よそう。

威張って言うことじゃない。


「善処するよ。」


「・・・それは、やらない人間の言い訳です。」


凍りつきそうな視線を、こちらへ浴びせてくるアリア。

そんな俺に対し、今日何度目かのため息をつく彼女。

この頃は彼女に愛想つかされていないかだけが、ただただ心配・・・


「お姉ちゃん、怒ってる?」


「怒ってはおりません、少し脱力しているだけです。」


不安げなヒカリを前に、淡々と言ってのけるアリア。

ここ最近は、心の中まで見透かされているようだ。

本当に、すみません。


「あなたは領主なのです、少なくとも、職務だけは果たして下さい。」


「了解です。」


俺の職務。

つまるところ進行中なのは、鉄道建設に関することだな。

工事は進んでいるが、人手が少ないのだ。

この問題を・・・


「鉄道だけでなく、街の整備などにも耳を傾けて下さいね?」


「・・・イエッサー。」


間違いない。

心を読まれてしまった。

俺には、従う他に生き残る道は無い。

かねてからの市民たちからの要望は数知れないし、地道に見ていこう。

アレのときはまた、先日のように法律でも変えてもヨシ。

道のりは遠いけど、決して見通せないほどでは無い様に思う。


「ところでカイト様、先ほどイリスに何を耳打ちされていたのですか?」


「あはは・・・アリアは気にしなくていいよ。」


『大した』事ではないしね。

頭上に疑問符を浮かべるアリアをよそに、カイトは私室へと向かった・・・



ところで俺、なんで工事現場になんか転移したんだっけ?


気が付けば、もう累計で300話突破。

早いものです。

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