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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第13章 ベアル改革・・?
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第278話・告白をされてしまったのだが、どうしたらいい?

パソコンも夏バテ気味のようです。

昨日に投稿しようとしたら、まさかの直前でいきなりの電源オフでした・・・。

自動的に。

アリアの追求から逃れるため、ヒカリとダリアさん達を連れて転移をしたカイト。

転移したは良いが、ここがどこなのかが分からない。

時間が無くて、何も考えずに転移してしまったのだ。

えーと、ここはどこだろうか?

辺りを見回すと、見覚えのある方々の姿が映った。


「おや。 アレは大公様じゃないか!?」

「大公様だって?」

「え、大公様??」


転移の光が収束すると同時に、こちらへ一様に視線を送ってくる彼ら。

鉄道建設団の皆様のようだ。

と言うことはつまり、ここは・・・?


「大公様、いつもご苦労様でございます。 本日は取り巻きの方もご一緒なのですね。」


「・・やぁフォウちゃん、厄介かけるね。」


どうも俺は無意識の内に、建設現場へと転移してしまったらしい。

慣れってこわい。

疑問を口にする現場の人たちを前に、カイトは後頭部をかきながら弁解を始める。


「ちょっと・・・視察をね。 工事の進捗しんちょくはどうかと思って。」


即興で考えたにしては、良い感じの言い訳を思いついたのではなかろうか?

自画自賛ってヤツかな。

いつかやろうとは思っていたことなので、あながちウソではない。


「そうだったんですか。 お忙しい中いつも、ご苦労様でございます!!」


「それならばそうと、事前に言ってくださればお出迎えが出来ましたものを。」


一様に残念がったり困惑の表情を浮かべる彼ら。

無表情のゴーレム兵も、挙動から似たような事を考えているものと思われた。

こうして見ると皆どうやら、うまくやっているらしい。


「さあさあどうぞ、ご案内いたします! こちらへお越し下さい大公様!!」


「うん、よろしく。」


せっかくの機会なので、お言葉に甘えて現場を見せてもらうことに。

元気いっぱいのフォウに連れられ、予定に無い工事現場の視察を行うカイト。

目に付くのは伐採された木々や、多量の土と砂の山。

どうやら今は鉄路を敷くため、この辺り一帯の盛り土工事を行っている最中らしい。

工事区間が広大なため、それが済み次第、レール敷設などを行うつもりだ。

・・・もっと、人材がほしいな・・。


「どうかなさいましたか、大公様?」


「うん!? いやいや何でもない。」


この子にそんなことを言っても、どうしようもない。

アリア・・・にも相談しにくいし、自分でなんとかして解決するほか無い。


「お兄ちゃん、置いてかないでよ! ハァハァ・・・」


「やぁ、悪い悪い。」


俺たちの移動速度が早いせいで、小さなヒカリでは付いて来るのに苦労するらしい。

彼女の歩幅に合わせて歩こうにも、フォウちゃんは先に行ってしまうし。

フォウちゃんには少し待ってもらい、ヒカリを背中へと背負う。


「カイト殿様、私も仕事疲れが・・・」


「最強を自負するなら、3日寝なくても大丈夫なんじゃない?」


頭痛をよそおって頭を抑えるダリアさんを、淡々と畳み掛けるカイト。

3日は冗談としても、ダリアさんは運動すべきだ。

まったく最近、演技ばかり上手くなりやがって。

楽しようとせず、仕事しろ仕事!


「ごめんねフォウちゃん、いっつもこの調子でさ。 気にしないで?」


「・・・楽しそうですね。」


笑顔を向ける彼に対して、影を帯びるフォウ。

気に障るようなことを言っただろうかと、カイトは首を傾げる。

しかしそれを聞く前に、工事の護衛担当の騎士さんが、カイトたちを呼びにやって来た。


「大公様、工事の者たちが休憩に入りました。 お連れの方も一緒に、休まれては如何ですか?」


「そうですね、ありがとうございます。」


ダリアさんやヒカリに、意向を確認する。

双方とも首を縦に振っているので、どうやら賛成らしい。

ここへ来てからまだ、何もしていないのが心苦しいが、お言葉に甘えてご相伴しょうばんにあずかる事にしたカイト。

現場に戻ると建設団の人たちが、思い思いに休憩時間を過ごしており、賑やかな様相をかもしていた。

ボクも仲間に入れてー!


「大公様、お席をご準備しますので少々お待ち下さい。」


「いいよ、皆と一緒で。」


よっこらしょと、ジジくさい声を上げて丸太の上へ腰を下ろすカイト。

ヒカリたちも、それに倣ってカイトの横へと座る。

騎士さんがどこからか淹れて来てくれた簡易茶は、屋敷で飲むものよりもずっと美味しく感じた。

森の空気が、そうさせるのだろうか?

美味そうに自分達と同じことをして幸せそうなカイトを、周囲の人たちは微笑ましげな表情を浮かべて見ていた。


「あの、何か・・・?」


「いやいや、領主様にこんな事を言ったら、さすがに不敬罪になっちまう!!」


ガハハッと笑い声を上げながら、手を横に振る大柄なおじさん。

・・・何を今さら。

俺はそんなもの、気にはしないことぐらい、彼らも分かっているだろう。

まあ、それでも臆してしまうようなキツい内容なのかもしれないが。

『別に気にしない』と、彼に話の先を促すと、恥ずかしげに頭をかきながら、話を始めるおじさん。


「いやな、領主様は俺たちみたいな奴隷上がりに、対等に接してくれるのが不思議で。 何というか、こう・・大抵の貴族ってのは権力をかさに来たようなヤツばかりなんでよ。」


・・・そういう事か。

前にアリアとかにも、そう言われたっけ。

この世界の人にとって、俺は奇人に映るのだろうか?

ま、それはしょうがないだろう。


「俺は元々、貴族とかじゃないから。 元はただの冒険者なんだ。」


「冒険者・・領主様が??」

「領主様も成り上がり者だったんだね!」

「これ! 領主様に向かって失礼だろ!!」


賑やかって良いなー。

イロイロあって貴族とかやっているが元々は俺なんか、しがないCランク冒険者だ。

更に元をただせば、特筆するような特技をまるで持ち合わせていない、平々凡々(ごくふつう)の高校生男子だったし。

それらを踏まえると本当、今の俺は何をやっているんだろうか?

湧いた不安をよそに、建設団の人たちは屈託ない笑顔を、こちらへ向けてきた。


「奴隷だった俺たちに、ここまでして頂いた事、領主様には感謝しても仕切れません。 先日の魔王軍の侵攻騒ぎでも、話は聞きました。 本当に、ありがとうございました。」


一斉に頭を下げる、この場の人々。

面と向かって言われると、なんとも気恥ずかしいものだ。

侵攻騒ぎではお話をさせて頂いただけだが、まぁ今わざわざ言うことでもあるまい。

笑顔を作り、こちらの意向も彼らに伝える。


「皆さん、おかげさまで脅威は去りました。 何か要望などがあれば、遠慮なくおっしゃってください。」


俺の言葉に対し、顔を見合わせるばかりの建設団の面々。

反応を見るに、今は、現状満足という判断で良さそうだ。

ならば良し!

会話もそこそこに、ゆっくりとお茶を楽しみながら、時間だけが過ぎていく。


「あの、領主様。」


「どうかした、フォウちゃん?」


顔をこちらへ寄せ、周りに聞こえないように俺へ耳打ちしてきたフォウちゃん。

近いな・・。

フォウちゃんって可愛いし良い匂いがするから、鼓動が大きくなっていってしまう。

しかし、そんな煩悩ぼんのうは彼女の態度により)き消された。

目を見れば分かる、彼女はコレに人生を掛けているってほど、真剣な目をしていたのだ。

話は2人で・・・という事か?


「ヒカリ、この子と少し話してくるよ。 ダリアさんとここで待っていてもらえる?」


「付いて行っちゃダメなの?」


ヒカリが、こちらへ懇願するような眼差しを向けてくる。

か、かわいい・・・

いや、ダメだダメ!

彼女は2人で大事な話を、と言っているのだから、さすがに同席させるわけには行かない。


「すぐに戻ってくるよ。 留守番を頼む。」


「うん・・・・。」


まだ全てを承服した雰囲気ではないが、ヒカリは不満を言わなくなった。

ダリアさんは・・・、気に掛けることも無いか。

彼女たちを残し、カイトとフォウは森の奥へと入って行くのだった・・・



◇◇◇



「フォウちゃん、どこまで行くの?」


「もう少しです。」


暗い森の中を、どんどん進んでいくフォウに必死で付いて行くカイト。

一体彼女は、どこまで行くのだろうか?


森を分け入って少し行くと、小さな広場のような場所へ出た。

伐採した木を置いておく、仮置き場らしい。

そこら中に丸太のような材木が、地面に転がっている。

ここでフォウちゃんも、歩みを止めた。

戸惑いを隠せないカイトを前に、彼女はズイッと体をこちらに向ける。


「大公様・・・お名前でお呼びしてもよろしいでしょうか?」


「ああ、構わないよ?」


うん、それだけ?

いや、まさか違うよな??

ただそれだけで、彼女がここまで俺を連れてくるようには思えない。

周りには誰も居ない事だし、単刀直入に聞くことにする。


「ねぇフォウちゃん、俺に何を話したいの?」


先ほどの賑やかさとは打って変わり、不気味なほどの静けさを森が支配する。

静寂に包まれた森の中で、2人の呼吸の音だけが、聞こえた。

サワサワと風が吹き、葉ずれの音が森を木霊する。

それに後押しされるように、押し黙っていたフォウが口を開いた。

彼女のその吐息が、肌でまでが感じられる距離にまで近づく。

顔が赤いのは、体調が悪いせいだろうか?


「カイト様、好きです。 大好きなんです、私・・・あなたのためなら死んでも良い!!」


「!!!!」


顔をりんごのように赤くさせ、何かの感情を空く初させたように、そう吐き出した彼女。

告白・・・

まさかそう来るとは、思っても見なかった。


「・・・。」


しかし気付くべきだったかもしれない。

思えば今までの彼女の行動に、イロイロ現れていたではないか。

俺はなんて、バカなんだろうか。

俺が混乱している間でも、彼女は話を続ける。


「仰っていましたよね、自由が欲しいって! 私とベアルを離れませんか!? 身分も地位も全て捨てて、でも愛さえあればいいと思うんです!!」


「・・・。」


ダメだ。

彼女は、本当に本気らしい。

でも俺は、そのようなことは望んでいない。

だが思わせぶりなことをしたのは、他でもない俺だ。

下手にオブラートに包むなどと言うことをすれば、彼女を傷つける事になってしまう。

それは残酷だ。

これ以上、彼女にひどいことは出来ない。


「フォウちゃん、聞いてくれ。」


「は、はい・・・!!」


だから伝えなければならない。

俺はアリアたちを、そしてベアル愛しているんだって事を。


「まずは君の気持ちに気付いてやれなくて済まない。 でも分かって欲しい、俺は今の生活が、大好きなんだ。 出来れば俺たちだけじゃなく、皆にも幸せになって欲しいと思っているんだ。」


「それは・・・どういう意味ですか?」


彼女の瞳から光が消え、代わりに涙を潤わせる。

説明が、回りくどすぎた。

もっと、短絡的な表現でリベンジだ。


「フォウちゃん、こんな俺を好きになってくれてありがとう。 でも今の俺に、その気持ちに応えることは出来ないんだ。」


「!!!!」


首を横に振って、否定の感情を表すカイト。

彼女はそれを見て、何を感じたのだろうか?

顔をうつむかせているため、その表情を窺い知ることは出来ない。

体が震えているように見えるが、もしや彼女は泣いている・・?


「フォウちゃん、分かって欲しい。 俺には既に、愛している妻が居るんだ。 他の女性を側に置くことは、俺には出来ないんだ。」


畳み掛けるように、彼女へ自分の気持ちを話すカイト。

だが彼女は、返答することなく、森の中へとその姿を消していった。

とても、俺が引き止めるようなことは出来なかった。


時間が来れば、また戻ってくるだろう。

また仲間たちと一緒に、仕事に励んでくれるだろう。

再び、変わらぬ日常が風のように流れていくのだ。

俺はそう、楽観視してしまっていた。





しかし彼女が、俺の前に姿を現すことは、もう二度と無かった・・・・・




これからもp、楽しんで書いていこうと思います。

感想や気になる点などがありましたら、遠慮なくお寄せください。

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