第278話・告白をされてしまったのだが、どうしたらいい?
パソコンも夏バテ気味のようです。
昨日に投稿しようとしたら、まさかの直前でいきなりの電源オフでした・・・。
自動的に。
アリアの追求から逃れるため、ヒカリとダリアさん達を連れて転移をしたカイト。
転移したは良いが、ここがどこなのかが分からない。
時間が無くて、何も考えずに転移してしまったのだ。
えーと、ここはどこだろうか?
辺りを見回すと、見覚えのある方々の姿が映った。
「おや。 アレは大公様じゃないか!?」
「大公様だって?」
「え、大公様??」
転移の光が収束すると同時に、こちらへ一様に視線を送ってくる彼ら。
鉄道建設団の皆様のようだ。
と言うことはつまり、ここは・・・?
「大公様、いつもご苦労様でございます。 本日は取り巻きの方もご一緒なのですね。」
「・・やぁフォウちゃん、厄介かけるね。」
どうも俺は無意識の内に、建設現場へと転移してしまったらしい。
慣れってこわい。
疑問を口にする現場の人たちを前に、カイトは後頭部をかきながら弁解を始める。
「ちょっと・・・視察をね。 工事の進捗はどうかと思って。」
即興で考えたにしては、良い感じの言い訳を思いついたのではなかろうか?
自画自賛ってヤツかな。
いつかやろうとは思っていたことなので、あながちウソではない。
「そうだったんですか。 お忙しい中いつも、ご苦労様でございます!!」
「それならばそうと、事前に言ってくださればお出迎えが出来ましたものを。」
一様に残念がったり困惑の表情を浮かべる彼ら。
無表情のゴーレム兵も、挙動から似たような事を考えているものと思われた。
こうして見ると皆どうやら、うまくやっているらしい。
「さあさあどうぞ、ご案内いたします! こちらへお越し下さい大公様!!」
「うん、よろしく。」
せっかくの機会なので、お言葉に甘えて現場を見せてもらうことに。
元気いっぱいのフォウに連れられ、予定に無い工事現場の視察を行うカイト。
目に付くのは伐採された木々や、多量の土と砂の山。
どうやら今は鉄路を敷くため、この辺り一帯の盛り土工事を行っている最中らしい。
工事区間が広大なため、それが済み次第、レール敷設などを行うつもりだ。
・・・もっと、人材がほしいな・・。
「どうかなさいましたか、大公様?」
「うん!? いやいや何でもない。」
この子にそんなことを言っても、どうしようもない。
アリア・・・にも相談しにくいし、自分でなんとかして解決するほか無い。
「お兄ちゃん、置いてかないでよ! ハァハァ・・・」
「やぁ、悪い悪い。」
俺たちの移動速度が早いせいで、小さなヒカリでは付いて来るのに苦労するらしい。
彼女の歩幅に合わせて歩こうにも、フォウちゃんは先に行ってしまうし。
フォウちゃんには少し待ってもらい、ヒカリを背中へと背負う。
「カイト殿様、私も仕事疲れが・・・」
「最強を自負するなら、3日寝なくても大丈夫なんじゃない?」
頭痛を装って頭を抑えるダリアさんを、淡々と畳み掛けるカイト。
3日は冗談としても、ダリアさんは運動すべきだ。
まったく最近、演技ばかり上手くなりやがって。
楽しようとせず、仕事しろ仕事!
「ごめんねフォウちゃん、いっつもこの調子でさ。 気にしないで?」
「・・・楽しそうですね。」
笑顔を向ける彼に対して、影を帯びるフォウ。
気に障るようなことを言っただろうかと、カイトは首を傾げる。
しかしそれを聞く前に、工事の護衛担当の騎士さんが、カイトたちを呼びにやって来た。
「大公様、工事の者たちが休憩に入りました。 お連れの方も一緒に、休まれては如何ですか?」
「そうですね、ありがとうございます。」
ダリアさんやヒカリに、意向を確認する。
双方とも首を縦に振っているので、どうやら賛成らしい。
ここへ来てからまだ、何もしていないのが心苦しいが、お言葉に甘えてご相伴にあずかる事にしたカイト。
現場に戻ると建設団の人たちが、思い思いに休憩時間を過ごしており、賑やかな様相を醸し出していた。
ボクも仲間に入れてー!
「大公様、お席をご準備しますので少々お待ち下さい。」
「いいよ、皆と一緒で。」
よっこらしょと、ジジくさい声を上げて丸太の上へ腰を下ろすカイト。
ヒカリたちも、それに倣ってカイトの横へと座る。
騎士さんがどこからか淹れて来てくれた簡易茶は、屋敷で飲むものよりもずっと美味しく感じた。
森の空気が、そうさせるのだろうか?
美味そうに自分達と同じことをして幸せそうなカイトを、周囲の人たちは微笑ましげな表情を浮かべて見ていた。
「あの、何か・・・?」
「いやいや、領主様にこんな事を言ったら、さすがに不敬罪になっちまう!!」
ガハハッと笑い声を上げながら、手を横に振る大柄なおじさん。
・・・何を今さら。
俺はそんなもの、気にはしないことぐらい、彼らも分かっているだろう。
まあ、それでも臆してしまうようなキツい内容なのかもしれないが。
『別に気にしない』と、彼に話の先を促すと、恥ずかしげに頭をかきながら、話を始めるおじさん。
「いやな、領主様は俺たちみたいな奴隷上がりに、対等に接してくれるのが不思議で。 何というか、こう・・大抵の貴族ってのは権力をかさに来たようなヤツばかりなんでよ。」
・・・そういう事か。
前にアリアとかにも、そう言われたっけ。
この世界の人にとって、俺は奇人に映るのだろうか?
ま、それはしょうがないだろう。
「俺は元々、貴族とかじゃないから。 元はただの冒険者なんだ。」
「冒険者・・領主様が??」
「領主様も成り上がり者だったんだね!」
「これ! 領主様に向かって失礼だろ!!」
賑やかって良いなー。
イロイロあって貴族とかやっているが元々は俺なんか、しがないCランク冒険者だ。
更に元をただせば、特筆するような特技をまるで持ち合わせていない、平々凡々(ごくふつう)の高校生男子だったし。
それらを踏まえると本当、今の俺は何をやっているんだろうか?
湧いた不安をよそに、建設団の人たちは屈託ない笑顔を、こちらへ向けてきた。
「奴隷だった俺たちに、ここまでして頂いた事、領主様には感謝しても仕切れません。 先日の魔王軍の侵攻騒ぎでも、話は聞きました。 本当に、ありがとうございました。」
一斉に頭を下げる、この場の人々。
面と向かって言われると、なんとも気恥ずかしいものだ。
侵攻騒ぎではお話をさせて頂いただけだが、まぁ今わざわざ言うことでもあるまい。
笑顔を作り、こちらの意向も彼らに伝える。
「皆さん、おかげさまで脅威は去りました。 何か要望などがあれば、遠慮なくおっしゃってください。」
俺の言葉に対し、顔を見合わせるばかりの建設団の面々。
反応を見るに、今は、現状満足という判断で良さそうだ。
ならば良し!
会話もそこそこに、ゆっくりとお茶を楽しみながら、時間だけが過ぎていく。
「あの、領主様。」
「どうかした、フォウちゃん?」
顔をこちらへ寄せ、周りに聞こえないように俺へ耳打ちしてきたフォウちゃん。
近いな・・。
フォウちゃんって可愛いし良い匂いがするから、鼓動が大きくなっていってしまう。
しかし、そんな煩悩は彼女の態度により掻)き消された。
目を見れば分かる、彼女はコレに人生を掛けているってほど、真剣な目をしていたのだ。
話は2人で・・・という事か?
「ヒカリ、この子と少し話してくるよ。 ダリアさんとここで待っていてもらえる?」
「付いて行っちゃダメなの?」
ヒカリが、こちらへ懇願するような眼差しを向けてくる。
か、かわいい・・・
いや、ダメだダメ!
彼女は2人で大事な話を、と言っているのだから、さすがに同席させるわけには行かない。
「すぐに戻ってくるよ。 留守番を頼む。」
「うん・・・・。」
まだ全てを承服した雰囲気ではないが、ヒカリは不満を言わなくなった。
ダリアさんは・・・、気に掛けることも無いか。
彼女たちを残し、カイトとフォウは森の奥へと入って行くのだった・・・
◇◇◇
「フォウちゃん、どこまで行くの?」
「もう少しです。」
暗い森の中を、どんどん進んでいくフォウに必死で付いて行くカイト。
一体彼女は、どこまで行くのだろうか?
森を分け入って少し行くと、小さな広場のような場所へ出た。
伐採した木を置いておく、仮置き場らしい。
そこら中に丸太のような材木が、地面に転がっている。
ここでフォウちゃんも、歩みを止めた。
戸惑いを隠せないカイトを前に、彼女はズイッと体をこちらに向ける。
「大公様・・・お名前でお呼びしてもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わないよ?」
うん、それだけ?
いや、まさか違うよな??
ただそれだけで、彼女がここまで俺を連れてくるようには思えない。
周りには誰も居ない事だし、単刀直入に聞くことにする。
「ねぇフォウちゃん、俺に何を話したいの?」
先ほどの賑やかさとは打って変わり、不気味なほどの静けさを森が支配する。
静寂に包まれた森の中で、2人の呼吸の音だけが、聞こえた。
サワサワと風が吹き、葉ずれの音が森を木霊する。
それに後押しされるように、押し黙っていたフォウが口を開いた。
彼女のその吐息が、肌でまでが感じられる距離にまで近づく。
顔が赤いのは、体調が悪いせいだろうか?
「カイト様、好きです。 大好きなんです、私・・・あなたのためなら死んでも良い!!」
「!!!!」
顔をりんごのように赤くさせ、何かの感情を空く初させたように、そう吐き出した彼女。
告白・・・
まさかそう来るとは、思っても見なかった。
「・・・。」
しかし気付くべきだったかもしれない。
思えば今までの彼女の行動に、イロイロ現れていたではないか。
俺はなんて、バカなんだろうか。
俺が混乱している間でも、彼女は話を続ける。
「仰っていましたよね、自由が欲しいって! 私とベアルを離れませんか!? 身分も地位も全て捨てて、でも愛さえあればいいと思うんです!!」
「・・・。」
ダメだ。
彼女は、本当に本気らしい。
でも俺は、そのようなことは望んでいない。
だが思わせぶりなことをしたのは、他でもない俺だ。
下手にオブラートに包むなどと言うことをすれば、彼女を傷つける事になってしまう。
それは残酷だ。
これ以上、彼女にひどいことは出来ない。
「フォウちゃん、聞いてくれ。」
「は、はい・・・!!」
だから伝えなければならない。
俺はアリアたちを、そしてベアル愛しているんだって事を。
「まずは君の気持ちに気付いてやれなくて済まない。 でも分かって欲しい、俺は今の生活が、大好きなんだ。 出来れば俺たちだけじゃなく、皆にも幸せになって欲しいと思っているんだ。」
「それは・・・どういう意味ですか?」
彼女の瞳から光が消え、代わりに涙を潤わせる。
説明が、回りくどすぎた。
もっと、短絡的な表現でリベンジだ。
「フォウちゃん、こんな俺を好きになってくれてありがとう。 でも今の俺に、その気持ちに応えることは出来ないんだ。」
「!!!!」
首を横に振って、否定の感情を表すカイト。
彼女はそれを見て、何を感じたのだろうか?
顔をうつむかせているため、その表情を窺い知ることは出来ない。
体が震えているように見えるが、もしや彼女は泣いている・・?
「フォウちゃん、分かって欲しい。 俺には既に、愛している妻が居るんだ。 他の女性を側に置くことは、俺には出来ないんだ。」
畳み掛けるように、彼女へ自分の気持ちを話すカイト。
だが彼女は、返答することなく、森の中へとその姿を消していった。
とても、俺が引き止めるようなことは出来なかった。
時間が来れば、また戻ってくるだろう。
また仲間たちと一緒に、仕事に励んでくれるだろう。
再び、変わらぬ日常が風のように流れていくのだ。
俺はそう、楽観視してしまっていた。
しかし彼女が、俺の前に姿を現すことは、もう二度と無かった・・・・・
これからもp、楽しんで書いていこうと思います。
感想や気になる点などがありましたら、遠慮なくお寄せください。




