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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第12章 延伸そして進展
298/361

第276話・戦後処理といいましょうか・・・

本策の前半部分における、アドリブが過ぎてハチャメチャだった一部分を、書き直しました。

大よそ1万字分ほど。

その関係で、内容に矛盾点などが生じていると思われます。

できる限りチェックしてはいますが、見落としなどがありましたら、感想などでお寄せいただけると幸いです。

これからも、『オタクはチートを望まない』を、よろしくお願いいたします。


『あの、俺カイトって言います。 こっちはメイドのダリアです、よろしく。』


『・・・。』


必死で笑顔を取り繕い、何度もこうべを垂れる俺。

魔王は寡黙で、重々しいオーラを放つ人物だった。

息をするのすら苦しい言いますか・・・

相対したときは、思わず食われるかと思ってしまったよ。


『モノは相談なんですけど、意味の無い戦争はやめませんか? お互いに平和に行きましょう。』


毅然とした態度で、しかし体は大きく震わせた状態で、臨ませてもらった。

俺の出方しだいで、たぶんベアルの将来が決まる。

しかし彼らも彼らなりに、、相応の言い分があった。

いはく。

どこかの冒険者が、彼らに不利益を被らせ、殺しまでやってのけたのだと言う。

さらに、魔族の1人が人間領に出かけたっきり行方不明に。

言い分はよく分かったが、それで戦争はあんまりだ。


『彼らに代わり、私が代表して謝罪いたします。 でも戦争は良くありません!』


ダリアさんが、なぜか後ろで笑い転げてピクピクしていたがそれは無視。

いつしか彼の横には、地位の高そうな5人の魔族(?)が取り巻いていた。

静観を貫く彼らを尻目に、俺と魔王は対話を続ける。


『貴様に思惑があるように、我々にも信念がある。 さらわれ、行方不明となった魔族の捜索も、我々の任の一つだ。 その落とし前は、どうつけるつもりだ人間よ?』


『俺が・・・それは私が責任持って、その魔族を捜索します。 それではダメですか?』


この時、こちらへ向けられた鋭い眼光。

あの時はもう少しで、チビッてしまいそうだったと記憶している。

あれ、絶対に視線だけで人を殺してるって。

マジで。

弱いトコを見せるわけに行かず、俺がどんな思いで彼に視線を集中させたことか。


・・・話を戻そう。

このやり取りの後、魔王は右手で顔を隠し、大きな体を震わせた。

地鳴りのような、この世のものとは思えない唸り声。

最初は怒っているのだと思ったが、すぐに違うと分かった。


『くっははは! よかろう、兵を退かせよ。 全軍を撤退させるのだ!!』


『魔王陛下、まさか・・・!』


傍らの魔族の驚愕の声に答えることなく、魔王は俺へ、その大きな双眸そうぼうを瞬かせた。

先ほどのそれより、眼光の鋭さは減って居た気がする。


『取り決めは交わされた、此度こたびの侵攻は取り止めとする。』


ダリアさんの言うとおりでした。

魔王、話せば分かるというか、怖いぐらいすんなり話がまとまりましたよ。

そうしてビデオの巻き戻しのように、ザーッともと来た道を戻り始めた魔王軍。

顔は怖いけど魔王様、、けっこう良い人でした。

以上、魔王との談話終了。

別行動だったノゾミとヒカリを、途中で回収して帰ってきましたとさ。

めでたし、めでたし。


「はあ、そうですか。」


俺の命を掛けた話を、聞き流すようにするアリア。

あ、信じてないな!?

確かに信じられないような話だけど、これは真実なんだ。

真実は小説よりも奇なりとも、言うだろう!


「申し訳ございませんカイト様、信じていないわけではないのですが相手は魔王なので、どうも・・・・」


まーね。

確かに、彼は怖かった。

俺も気迫で、押しつぶされそうになったし。

でも、それは過去の話。


「安心してくれ、魔王軍は森の奥に帰って行ったよ。 脅威は去ったんだ!」


「本当ですか!?」


確認のためなのか、アリアはダリアさんへ視線を向ける。

首を縦に振り、肯定を示すドラゴン。

それに補足するように、ノゾミが俺の武勇(?)をアリアに語って聞かせる。


「私は遠くから見ていたんだけど、カイトがダリアちゃんと転移した後すぐ、魔王軍がサッと退いて行ったんだ! カイトの姿はよく見えなかったんだけど、かっこよかったよ!!」


目をキラキラさせて、熱く語る彼女。

よく見えなかったけど、かっこよかったって、何なのだろうか?


「いいなー、私は見られなかった・・・」


対比するように顔をうつむかせて、指をくわえて羨むヒカリ。

恥ずかしいから、やめてくれ。

俺がやったのは、ちょっと魔王さんと話し合いをしただけです。

でも3人が一様に、同じようなことを言ったおかげかアリアは、一応の納得をしてくれた。


「まあ、カイト様ですし・・・? ではカイト様、その魔王と交わしたという約束は、果たせそうなのですか?」


「ああ、アテはある。 という訳でダリアさん、頼んます!!」


「は、わわ、私が!??」


うろたえるなダリアさん、君には世界随一の探索魔法があるではないか!!

アテにしていますからね!?


「我が探索魔法は、私が知っている相手にしか使えません! 人間世界に紛れた魔族一匹を見つけるなど、鬼畜の所業です!! それは海に落とした水を探させるようなものですからァァ!!!」


半ベソをかきながら、俺をポカポカ殴りつけてくるダリアさん。

俺が悪かったって、泣く事ないだろ・・・?

しかし彼女がダメとなると、その行方不明の魔族というのは、探しようが無いな。

俺?

ダメダメ、ドラゴンの彼女が出来ないことが、人間の俺に出来るわけないだろ??

しょうがない。

魔王さんには『すんません』と詫びを入れに・・・


「かか、カイト様、魔王に詭弁きべんを申したのですか・・・・?」


アリアが顔を真っ青にして、俺を指差す。

詭弁とはまた、聞こえの悪いことを・・

ちょっと、急に事情が変わっただけだよ。


「命知らずですね、カイト殿様は。」


「俺、そんなに変なこと言った!?」


なぜ、メイドさん含め皆、揃ってそんな真っ白になるのか、分からない。

確かに怖い人ではあったし、侵攻もしてきたけど話せば分かる人だったよ。

今回のコレだって、きっと早いウチに話せば分かってもら・・・


「魔王がソレを知れば、きっと烈火のごとく怒るでしょう。 そうなればベアルは・・・ベアルは・・・!!」


「え、ウッソ!??」


ヤバイ、またも知らずに地雷踏んだの俺!?

何かに追い詰められたように、涙を流すアリア。

使用人さんたちもそうなのが、現状を色濃く物語っている。


「カイト殿様、ご心配には及びません。 魔族の探索に期限は設けられておりませんでしたから、このまま知らん振りしておけばいいのです。」


「あぁあ・・。」


危険な香りしかしませんが、そんな方法で大丈夫なんですかね?

アリアたちも、顔をひきつらせているし・・・

いや、深く考えるのはよそう。

成せば成るとも言うではないか、はっはっは!


「命知らずだね、カイト。」


「・・・。」


ノゾミ・・・

今後が、今後がすごく不安だよぉー。




◇◇◇




「魔王様、我が全軍の後退、完了しましてございます。」


「ご苦労、貴様は隊を引き連れて人間勢の観察を続けよ。」


「御心のままに。」


サッと翼を広げ、窓から外へ飛び出す『風翔の』魔将。

それを一瞥すると、魔王の後ろを歩いていた一人の魔族が、魔王の横へと歩み寄る。


「魔王陛下、よろしかったのですか? なぜ人間の小童一匹こわっぱいっぴきごときに・・・」


「あの人間に手を出してはならぬ。」


疑問を口にする参謀の魔族に、クギを刺す魔王。

その射抜くような強い視線に、言葉を失う彼ら。

魔王様がこんな態度を示されるのは、初めて見るかもしれなかった。


「あれは人間ではない、ヤツは人間に見えるが人間を超えた存在だ。」


「はあ・・・」


言っていることが分からず、生返事をしてしまう彼ら。

魔王様には、恐らく自分たちには、とても理解の及ばないモノが見えているのであろう。

それ位しか、自分たちには分からなかったのだから。


「魔王様、かの者からはエルガンティア様の残痕ざんこんが垣間見えました。 恐らくは、ごく最近に接触したように見えましたので・・・」


「・・・・分かっている。」


魔将の1人、『闇獄』からの報告に、首を縦に振る魔王。

なぜあの人間から、彼女の気配がするのかは気になるところではある。


だがあの人間の力は、我が魔王軍が束になってかかっても、かなわないほどのレベルだった。

その圧倒的な力と、一瞬で間合いを詰めた、あの魔力センス。

そして魔族の王を前にして物怖じしない、その豪胆さ。

あれは、決して敵対してはならない存在。

そう、本能が訴えかけてくる。


「闇に紛れ、かの者を離れたところより観察せよ。 しかし決して、機嫌を損ねるようなことをしてはならぬ。 他の魔将は軍のとりまとめをせよ。」


「「「ははっっっ!」」」


闇の中に溶けるようにして、姿を消していく3人の魔将。

世界を崩壊に導くほどの力を持つ、摩訶不思議な人間の男。


魔王の懸念事項は、それだけに止まらなかった。

彼がその傍らにおいていた、使用人の格好をした幼女。

巧みに魔力を隠していたが、あれは間違いなく『要のドラゴン』であった。

内包する圧倒的な魔力と、撒き散らしていた殺意。

数百年前に相対した、破壊竜のソレに酷似していた。

ドラゴンは、世界一プライドの高い生き物である。

なぜそれが、人間に付き従っているのかは、まったく分からない。


今はエルガンティアどころではないのは、確かだ。

魔族、そして未来のこの世界にすら、影響が出かねないこの事態。

世界に終末をもたらす存在が、魔族の土地から近い場所に、2人もいるのだから・・・・。



ちなみに今は、六魔将は5人となっています。

欠員分は、ダリアさんに食われました。

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