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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第12章 延伸そして進展
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閑話・ラブラブカップルをくっつけよう! その4

これからも、楽しんで書いていこうと思っています。

作品に対する感想や気になる点などがありましたら、遠慮なくお寄せください。

励みになります!




ある晴れた日の昼下がり。

焼け付くような暑さにもかかわらず、街の各所では人だかりが出来ていた。

そんななか、定時出勤を目標にギルドへ歩を進めていたレンさんが、そのウチの一つの人だかりの前で、足を止める。


「う~ん、」えっと・・・」


何度となく背伸びをしてみるものの、前の人が障害となって、ここからでは人だかりの中心は見えなかった。

せっかく面白そうなモノを発見したというのに、これでは何も分からない。

仕方がない、誰かに聞いてみよう!

私から見て、右隣のお兄さんなんか、背が高くて丁度よさそうだ。


「あの~・・何かあったんですか~~?」


「ギルドマスターのお姉さんか。 この貼り紙だよ。 あんたも知っているだろう?」


彼が指を差すと、そそくさとバージンロードのように、一本の道のようなものが出来た。

おかげで、建物に貼られていた貼り紙まで、近づくことまで可能に。

背が高い人って、頼りになりますねぇ。


「えーと・・・なんですか、これは~~?」


商会の壁に貼り出されていたのは、カイトさ・・領主様からの、お触書のようでした。

内容は『領内の法律改定について。 女性の雇用促進を求む!』


んん?

・・・これは・・えーと・・・・・どういう事?

ん~、分かりません。

彼の考えは、元々不明な点が多かったですが、これも前例に漏れずです。

こんなもの、私は初めて見ます。


「どうやら既婚女性も、フツーに働いて良いって事らしい。 まったくここの領主様は、変わったことばかりを、やりやがる。」


「そうですねー。 でも良いことですよー。」


ナルホド、ようやく合点がいきました。

ようは皆、平等にと言うことですか。

前例が無いわけではありませんが、このようなお触れは人の少ない、主に農村地帯で多く用いられている手段。

半ば、働くのは強制なのが実状です。

ベアルのように大きな街でのコレは、珍しいのではないでしょうか?

特に働くのは、強制では無さそうですし・・・

面白い人ですねー、ホント。


「ギルドの前にも人だかりができていたけど・・・ホントに見たこと無いのか?」


「おかしいですね~、私の記憶違いでしょうか~~??」


確かにコレだけ街中に貼り出されていて、人が多く集まるギルドに配布されていないのは、おかしいな話だ。

そういえば先日、領主様の使いの方と名乗る方が訪れたと、副ギルドマスターが言っていたような・・・

『掲示物があるから、どこか目立つ場所を・・・』とか右往左往していた様な・・・


・・・・・・・・・ソレですかね?

んー、こればっかりは自分の目で確かめないと、分かりません。

早くギルドで、見てみましょう。

あ、考えてみれば、ちょうど良かったですね!


「すみません。 私そういえば、出勤途中でした~。」


「え、こんな時間に!?」


「寝坊してしまって。」


「ああ・・・。」


本人的には急ぎ足で。

客観的にはゆっくりとした足取りで、レンさんはギルドの方へと向かっていった。

なお、この後に冒険者ギルドから、副ギルドマスターの悲痛な叫び声のような怒鳴り声のような、大きな声が上がったのは、また別の話である・・・



◇◇◇



「下準備は、これで整ったな。」


「ええ、これまで大変お疲れ様でございました。」


『ふぅ』と一息つくカイトに対し、労いの言葉を掛けるアリア。


彼らがやり遂げたと言うのは、ベアル領の法律改定である。

あの鈍器の読破と書き換えには、丸1ヶ月以上の月日を要した。

他にも何かと仕事があり、実際に読んだのは時間にして、およそ短い。

これだけの作業を、わずかな期間で消化できたのは、何と言ってもアリアの存在が大きい。

彼女がいなかったら、マジで読破だけで100年を要していた事だろう。


「領内への周知は、進んでいるかい?」


「触れを出したのは3日前ですが、街の各所に触書を貼り出しております。 おおむね順調ではあるかと。」


よしよし。

別に住民達へは、今は『なんか変わったらしい』ぐらいの認知で、それで構わない。

このまま周知が進めば、じきに活用され始めることだろう。

あくまで目的は、別にあるのだから。


「セリアさん達は? 今は忙しいかな??」


「先ほどクレアにことづけしておきました。 まもなく来るでしょう。」


「オッケー。」


俺一人で、彼らと相対するのは不安でしかないので、彼らへ話をする時にはアリアにも同席していただく。

いつか、彼女の手をわざらわわせないように、出来るようになる時が来ると良いな。

・・危険だからダメか。


彼女と物議を交換している間に、セリアさん達が2人揃ってやって来た。

指名での呼び出しは初めてなので、彼らの表情は非常に硬い。

・・・緊張しているのか。


「2人とも楽にして。 少し込み入った話になると思うから。」


「いいえ大公様、私どもはこのままで結構です!」

「どうかお気になさらず、何なりともお申し付けくださいませ!」


ピシッと背筋を伸ばして、直立不動の体勢をとる彼ら。

押し問答するだけ、時間の無駄か。

このまま、話を始めよう。


「じゃあ始めるけど、単刀直入に聞きたい。 2人はお互いを、どう思っている? 俺の存在とか関係なく、本当に思っている事を、話してもらいたい。」


俺の質問に、顔を見合わせる2人。

彼等の浮かべる表情からは、『言って良いモノか?』といった感情が、顕著に現れていた。

俺には大なり小なり、言いにくい内容なのだろう、かなり動揺をしているっぽい。

アリアは少しも口を挟まず、今は静観の構えである。

しばらくの沈黙の後、先に口を開いたのは、ゼルダさんであった。


「大公様、私は彼女を、同じ大公様の下で働く同僚として・・。」


「ストップ。 俺が聞きたいのは、ゼルダさんたちが押し殺している感情のほう。 第三者が口を挟むことじゃないと思うけど、それを胸の中に仕舞ったままにするのだけは、ヤメてほしい。」


彼らの顔色が、急激に変わる。

後ろを振り向くと、アリアも首を縦に振った。

単刀直入すぎかと思ったが、このまま続けて良いらしい。

では、用意してきた文言を、オリジナルそのままで。


「俺はさ、目が届くところ皆に幸せになってもらいたいと思っているんだ。 アリアも、住民も、もちろん君たち使用人も。」


「「・・・。」」


俺のセリフに、顔をうつむかせる彼ら。

そうして、観念したように少しずつ話し始めた。

お互いに、ライクというよりラブな感情を抱いていること。

他の人たちに悟られぬよう、気持ちを押し殺していたことなど・・・。

一通り話し終えると、彼らはそろって、俺へキレイな礼とともに謝罪を述べた。


「申し訳ございません旦那様、ご法度はっとごとの恋愛をした以上、私はこの屋敷で働き続けることは出来ません。 どうか・・」


「待ってくださいセリアさん! 大公様、この一件は元をただせば、私の浅はかな行動が発端です。 私はどんな罰でも受ける覚悟があります、どうか彼女は・・・!!」


自分は良いから、どうか相手だけはと、お互いをかばい合う彼ら。

微笑ましい光景・・・などと言っている場合ではないな。

ちっとも話が進まない。


「あー2人とも、この件で俺は、誰かを処罰しようとか考えてないから。」


「では・・・?」


俺の言葉に、頭に疑問符を浮かべるゼルダさんたち。

ここからが、本題である。


「ずけずけと悪いとは思うんだけど、2人は結婚したいんだよね? そこだけ、ハッキリさせてほしい。」


俺の質問に対し、何も言って返さない彼ら。

これは肯定ととって、いいだろう。

よしよし。


「俺はともかく、王宮のことを考えるとね・・・、ゼルダさんは問題ないんだけど、セリアさんが・・・。」


「・・・・はい、存じ上げております。」


まあ、その辺りの事情は、承知していて当然か。

だから今まで、隠していたのだろうし。

聞きたいことは聞けたので、もう出し渋りはせずに、アリアに頼んでいた書類を出してもらう。

それを一度、中身の確認を行ったうえで、彼らに提示する。


興味ありげに、それに目を通す彼ら。

その表情は、みるみるうちに変わっていくのが見て取れた。

不得手分野なので、俺は口を挟まない。

代わりに補足説明とばかりに、アリアが口を開いた。


「それは、あなたがたの婚姻に関して、非常に重要となるモノです。 よく、目を通しておいてください。」


「「!!」」


アリアの説明が終わると同時に、2人がカイトの方へ視線を送る。

勝手に話を進めていたので、怒ったか?


「旦那様、我々のためにここまで・・・・?」


「いいや、領内の法律の改正を行っていたら、タマタマ小耳に挟んだ話に、ちょっと横槍を入れただけさ。」


俺がやったことは、おせっかいにもホドがある行為だ。

怒られても何も言えないのだが、2人は怒りというより、感動している様子。

アリアは当然の事とばかりに視線を送ってくるが、俺には、何も伝わってこない。

デリカシーというモノを、少しは身につけるべきか?

ともかく、伝えるべき事だけは、ひとまず伝えておこう。


「それは強制じゃない、2人でよく話し合って、決めてほしい。」


これ、何度も言うけど大事。

俺が粉骨砕身がんばったとか、夜もロクに寝ずに頑張ったとか、関係ないのです。

それはそれ、これはこれ。

彼らの沽券や、将来に関わる話を、押し付けるようなマネはしてはいけない。

そこは、履き違えてはならない一線だ。

・・・が、返事は聞くまでも無いようだった。


俺が渡した書類に、一心不乱に目を通す2人。

その表情は、喜びに満ち溢れているように見えた。

うん、ここまで頑張ってよかったな。

彼らの処遇(主にセリアさんの)などに関しては、内容に精通しているアリアに任せる形をとらせていただく。


俺は、蚊帳かやそと

椅子の小さなホコリを数える作業でもしてみる。 チマチマチマ・・・。

うん、こうしてよく見ると、小さなミクロのゴミがちらほら・・・


「旦那様、本当に・・本当によろしいのですか?」


「えっ、ホコリは少ないよ?」


途端に、キョトンとした表情を浮かべる、セリアさんたち。

しまった、今はホコリの話ではない。

これではまるで、小姑である。

アリアが、こちらへ呆れたような視線を向けてきた。

咳払いをして、体裁を正す俺。


「いやいや、もちろんだとも。 椅子のホコリを例に、大いなる幸せは、それぞれの幸せから始まるのだから。」


「「ありがとうございます!」」


揃って感謝の礼を尽くすセリアさんたち。

フ、何とか誤魔化せたぜ・・・。

しかし対照的にアリアはこちらへ、ゴミを見るような視線を向けてくる。

罪は、免れないようです。

ごめんなさい。


「大公様のご慈悲、我々は一生涯忘れません! これからはより一層、命をかけて仕えさせて頂きます!」

「旦那様わたし達、精一杯幸せになって、この領に貢献いたします!!」


「う、うん・・・頑張って?」


どうやら彼らのスピリッツに、火が点いたようだ。

見える、2人の瞳の奥に、燃える闘魂が見えるよ。

第三者の俺が言うのもアレだが、幸せになってください。


「そうと決まったら早速、挙式の準備だ! 場所は・・」


「お待ちくださいカイト様、性急に過ぎます! 彼らの挙式の前に、段階を踏まねばなりません。」


「え・・・まだ何かあるの?」


俺の爆走を、馬の騎手のように止めるアリア。

だいぶ今までに、イロイロとやって来た気がしていたのだが、王様へ提出しなければならない書類など、手続きがまだ多く残されているようだ。

丸投げは良くないので、俺も頑張ります。


とりあえず、セリアさんの今後の雇用方式などを話し、イリスさんに話を通すまでで、今日は終了。

結婚の式を挙げられるのはまだ、先っぽいが、しばらく辛抱してください。

今回の一件の副産物として、領内に住む女性の社会進出の促進にもつなげる事が出来たし、めでたし、めでたし!


皆幸せになって、万々歳だね!!








それは、魔族の侵攻が始まる、わずか数日前の出来事である。

彼らはまだ、目前に迫る脅威に、気付いていない・・・・・・・・。



今日は『あこがれ』という帆船のペーパークラフトを作っていたのですが、いつの間にか、かなり時間が過ぎていました。

時間が経つのは、あっという間ですね。

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