閑話・ラブラブカップルをくっつけよう! その2
これからも、楽しんで書いていこうと思います。
感想等がありましたら、遠慮なくお寄せください!
「セリアの仕事ぶり・・・ですか??」
「そう、なにか悩んでいる事とか無いかなーと思って・・。」
状況の把握には、まずは情報収集が基本だ。
本人達に直接聞くことはせず、メイド長であるクレアさんに近況を聞いてみることとしたカイト。
彼女の知識量と洞察力なら、分かることも多かろうという考えによるものだ。
・・・だが。
「もしやセリアが、大公様に失礼をしましたでしょうか!? そのような事ならば、すぐに彼女を呼び出し、然るべき対処を・・!」
「ああ違う違う! 興味、俺の興味なんだ!!」
俺の口下手で、危うくセリアさんが何も始まらぬまま、クビになってしまう所であった。
オブラートに包んで聞くのは、危険だな。
今後は、アメリカ式で行こう。
回りくどく聞くのではなく、直球で質問を投げかけるのだ。
「セリアさんとゼルダさんが好き合っているのを見てさ、何とかならないかなーと俺なりに・・」
「あの2人が恋愛を!? お待ち下さい大公様、すぐに呼び出して、あの2人に然るべき対処を・・」
アメリカ式、大失敗。
ド直球過ぎて、制裁対象がゼルダさんまで拡大した。
職場内の恋愛は、公衆秩序などのためにも、禁止となっている。
それをカイトは、ガッツリ見落としていた。
クレアさんの肩を掴み、強制的にその足を止めさせる。
「憶測だから、俺の勝手な妄想!!」
「ですが、大公様にそのような疑惑を抱かれるような行動を起こすこと事態に・・・」
「俺が容認する、俺が容認しているから、それなら問題ないでしょ??」
「はあ・・・」
問題大アリだが、ひとまず矛を収めるクレアさん。
第一に大事なのは、主人の命令である。
その内容が、どのようなモノであれ。
「あの2人、よく一緒に居るのを見るからさ。 王宮での一幕もあるし、もしかしたらって。」
「確かにあの2人は、仲が良いですが・・・男女の関係にあるなど、聞いたことがありません。 ゼルダがよく、我らの仕事を手伝うことはありますが・・・」
「そこ! そこの所、もっとよく聞かせてくれるかい?」
重要情報がもたらされた。
ゼルダさんが、セリアさんの手伝いをするという行為から、何かが分かる糸口が見えるかもしれない・・・
クレアさんは少し驚いたような表情を浮かべたが、すぐに平常心を取り戻し、再び淡々と説明を続ける。
「手伝うのは専ら力仕事の場合で、それもセリアに限ったことではありません。 もちろん彼らの感情を推し量ることなど、一使用人の私にはとても・・・」
「うーん・・」
皆平等じゃ、何か分かる糸口にはなりそうに無い。
ゼルダさんって、女性に優しいんだね。
誤解して彼らを罰したりしないようにクレアさんに言い含め、カイトはこの場を後にする。
さて、どうしたものか。
まさか本人達に聞くなどという愚行は出来ない。
ド直球過ぎて、デッドボールになること間違いナシ。
ユーアーデッドの対象は、俺になるのだけど。
「あの2人って、そもそもお互いをどう思っているんだろうか・・・・」
そもそもの話。
先ほどのクレアさんの口ぶりから、そもそも2人が好き合っているのかさえ、怪しくなった。
考えてみれば『好き合っている』と考えたのは状況証拠からであり、本人達から聞いた訳ではない。
彼らは単にウマが合うから、よく2人で居るだけなのかもしれないではないか。
所謂『友達』として。
だとしたら変に勘ぐって行動をしていた俺は、とんだアホウである。
デッドボールどころか、即退場ものだ。
「カイト殿様、そこで立ち止まられると、掃除の邪魔なのですが。」
「あ、ゴメン!」
屋敷のお掃除中らしいダリアさんを避け、廊下の端に寄るカイト。
傍から見ると、かなりシュールな光景だが、これがこの屋敷の日常である。
広い廊下を、超スピードでせっせと乾拭きしていく彼女。
彼女もメイド仕事が板に・・(以下略)
少し進むと掃除の手を止め、こちらを振り返って俺に視線を合わす。
「どうぞカイト殿様、掃除が終ったので元の場所で立ち止まり下さい。」
「・・・いや、いい。」
誰が好き好んで、廊下の真ん中に立ち止まるか。
こっちは真剣に悩んでいたと言うのに。
相変わらずだな、ダリアさんは!!
「悩むなどあなたらしくもない、今度は何を考えておいでなのですか?」
せっせと床を乾拭きしながら、ダリアさんが疑問を投げかけてくる。
あなた、本当に興味あるんですか?
まあ、話すだけ、話してみるか。
何かの解決の糸口が、見えてくる可能性がないとも言い切れないし。
「ある2人の動向が気になってね・・本当はどうしたいのかが、全く分からないんだ。」
「ホウ、何とも人間とは難儀な生き物ですね。」
いやいやダリアさん。
自分に正直に生きるなど、そうそう出来る事ではないのですよ。
本心は胸の底に・・・と言うことは、人生でよくある話なのだ。
理想的な生き方が出来るヒトなど、稀なのです。
「それは難儀なことで・・・相手の心を読めば、苦労などせぬモノを。」
「いやいやダリアさん、それじゃ風情ってモノが・・・あ!?」
カイトの脳裏に、あるモノが浮かんだ。
そうだ、俺には魔法がある。
ゼルダさんとセリアさんの考えていることなど、言ってしまえばお見通しだ。
そうか、すっかり忘れていた。
これならド直球どころか、変化球まで全て対処が出来る!
倫理的な問題があるが、そこは2人に後で謝っておこう。
「ありがとうダリアさん、悩みが吹っ切れたよ!!」
「それはようございました、タマに見ると、なかなか人間の心というモノは面白きもので満ち溢れておりますよ?」
なんだか背後から、不穏な単語の数々が聞こえたような気がしたが、それは無視してカイトは、2人を探しに出るのだった・・・
◇◇◇
「これ、先ほどシェフに厨房を借りて作ったんです、良かったら食べて下さい。 下手ですけど・・・」
「ありがとうございます。 セリアさんの作るものなら、きっとおいしいでしょう。」
「・・・。」
目的の2人は案外、早く見つかった。
しかし、出て行くのにはマズイ気がする。
セリアさんが、ゼルダさんになにかを渡している風にも見えるが・・・
なんだろう、俺は見てはいけないモノを見てしまっているのではないか?
今は、そっとしておいた方が良いと、俺の本能が告げている。
「仲、いいな・・・」
俺は一体、何をしようとしていたのだっけか?
それすら分からないぐらい、周囲には、あの2人だけの世界が構築されていた。
恋に恋する男女・・・
うーむ、危険な香り。
使用人にふしだらな妄想を展開し、茂みの影に身を隠す、この領地の領主様。
ガサッッ!
「!!!」
しまった、物音を立ててしまった!
すっかり2人に対して注意が向いてしまい、足元にまで注意が向いていなかったのが、災いした。
この音で、物陰に隠れる彼の存在に、2人は気づいてしまった。
隠れるならば、魔法でどうとでもなったろうに・・・
カイトは、隠密行動には向いていなさそうだ。
「旦那様、そのような場所で何を・・・?」
「あー・・・あはははは。」
特に怒るような素振りは見せず、疑問をぶつけてくるメイドのセリアさん。
ゼルダさんも、ほぼ同じ反応だ。
一瞬にして彼らの間に見えていた、いい感じの空気は霧散してしまう。
いいところを、邪魔してしまう格好となってしまった。
「ご、ごめん2人とも。 俺は消えるから、どうぞごゆっくり!!」
逃げるように、この場を後にしようとするカイト。
だがそれを、セリアさんの呼び止める声によって、阻まれてしまう。
いいところを邪魔してしまったのだ、怒っているのだろうな。
「旦那様にも、これを・・・。」
「ん、これって・・・?」
そう言ってセリアさんが差し出してきたのは、小さな包み紙。
先ほどゼルダさんに渡していたモノに、似ている気がするがコレは・・・
「あの、シェフに厨房を借りて作ったんです。 日頃お世話になっている皆様にお配りしていて・・・」
「・・・俺にも?」
ゼルダさんの右手にも、やはり同じ物が握られている。
ウッソ、セリアさんは皆の分まで用意していたのか!??
ゼルダさんが特別とかじゃなく!?
「す、すみません、旦那様はクッキーはお嫌いでしたか?」
「いや・・・大好き。 ありがとうセリアさん。」
満面の笑みを、こちらへ向けてくる彼ら。
俺は一体、ここで何をしている?
2人の邪魔をして、クッキーをもらって、そのまま帰るのか?
思い出せ、俺は何をしたくて、何をしようと考えているのかを!!
聞こう、2人の心に。
・・・・・だが、その前に。
「セリアさん、ゼルダさん、ごめんなさい。」
「「?」」
2人には聞く前に、詫びを入れた。
◇◇◇
「どうしたんですの、カイト様。 そちらからお呼びするなんて珍しい・・・・」
先ほど、急にカイトに部屋に呼ばれたアリア。
こちらから出向くことはよくあるが、彼から呼び出しなど、今までほとんどなかった。
こちらから出向かざる負えない、事象が多くあったとも言いますが。
カイトは何も答えることなく、机の上に資料を出す。
「俺の書斎から見つけてきたんだけど・・・今日は俺の領主としての権限を、フルに活用したい。」
「・・・一体、何をお考えなのですか?」
彼がこんな事を言ってくるのは、コレが初めて。
せっかくヤル気を出してくれたのなら、それに精一杯お力添えするのが、妻たる私の務め!
フツウの貴族夫人が行うことではないなど、今さらです。
「あの2人が不遇すぎなんだ。 使用人の願いを何とかするのも、俺の務め!!」
ズビシッとポーズを決め、威厳に満ちたせりふを吐くカイト。
いつにも増して、彼がかっこよく見える。
・・・が、何やら不穏なせりふが混じっているように聞こえた。
『不遇すぎ』とは、もしや・・・
「お待ち下さい、まさかとは思いますがカイト様・・・セリアたちにお互いの関係を聞くようなことはしていませんわよね?」
「はは! もちろん・・・・シテナイヨ。」
「カイト様、こちらに視線をください。」
聞いてはいないが、心は読みました。
でもきっと、それを話したらカイトは地獄を見るだろう。
ジッと彼を見つめるアリア。
どうこの窮地を切り抜けたモノかと、考えるカイト。
いつしか、彼の背中は汗で、ジットリと濡れていた・・・・
思えば一年前の今頃、この物語の草案のようなものができました。
今や別モノですが。




