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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第12章 延伸そして進展
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閑話・ラブラブカップルをくっつけよう! その1

これからも、楽しんで書いていこうと思います。

感想等がありましたら、遠慮なくお寄せください。


ウチには、多くの使用人が日夜、汗水たらして一生懸命働いてくれている。

彼らの屋敷での仕事は、多岐にわたる。

屋敷の雑用などを一手に引き受けるメイドさん。

不審なことなどがないか、屋敷を見回ってくれる守衛さん。

毎日、うまいご飯を作ってくれるシェフさんなどなど・・・

メイド長のクレアさんを始めとして王宮からやって来た人材が9割を占める中、ダリアさんや先日仲間に加わったメルシェードなど、この屋敷では実にたくさんの人が働いているのだ。


ところでメンバー中、同じく王宮から連れてきた『ある2人』の存在を、皆さんは覚えているだろうか・・・?






「この辺りは、4年前とは見違えるようだね。」


「どれも皆の努力のおかげですわ。」


「そうだね。」


アリアと2人で、俺たちはベアルの街を散歩している。

一時期は、ゴーストタウンと化していた街は、この数年で大きく発展を遂げた。

中でもここは、街の中心近くであり、たくさんの店がのきを連ね、多くのヒトでごった返している。

俺はにぎやかなのが、大好きだ。


「それにしても急に『休め』とは・・・一体どういう事ですの??」


「ま、まあ良いじゃないか!」


アリアは働きすぎだ。

でも彼女に『休日』なぞを与えても、きっと休みはしまい。

そこで、俺が彼女をエスコートして、街へ連れ出す事としたのだ。

もちろん今までに放っておいた詫びも兼ねて、連れ出したというのが、今回の目的である。

ヒカリやダリアさんたちも、今回の主旨を考えて、屋敷においてきた。

考えてみたら、こうして2人きりで外出って、初めてでは無かろうか?

やべ、そう考えるとちょっと、緊張してきた!

落ち着くため、何度か深呼吸を繰り返す。


「と、ところでアリアは、どこか行きたい場所はあるのかい?」


「そうですね・・・では南の住居区に。 現在の工事の進捗状況しんちょくじょうきょうを確かめたいですわ。」


しかしせっかくの休日だというのに、彼ら夫婦がしているのは専ら、このような街の視察。

アリアに『行きたい場所』を聞いていることも踏まえると、これを『エスコート』とは言えないだろう。

カイトたちは気にした様子はないので、外野が口を挟むことはないかもしれないが・・・。


「団地に行くなら、こっちかな?」


「あ、お待ち下さいカイト様!!」


『うわっ』とうめき声のようなモノを上げ、カイトはアリアに路地裏に連れ込まれた。

急な事だったので体勢を崩し、彼女のほうへ倒れこんでしまう。


「申し訳ございませんカイト様、大丈夫ですか?」


「ああ、大丈夫。 でも急にどうしたの?」


彼女の柔らかな体の中から身を起こし、指差す方向へ視線を向けてみる。

すると街の喧騒のなかで、2人のカップルらしき人物がこちらへ歩んでくるのが見て取れた。


「あっ、セリアさんとゼルダさん!」


2人ともいつもと違って私服姿なので、最初は気がつかなかった。

奇遇だねとか、挨拶をしなくていいだろうか?

俺の考えを読み取ったのか、アリアが小声でおれをたしなめてくる。


「カイト様は見えないのですか、休日を楽しんでいる、あの2人の姿が!!」


「え、またあの2人は休日がかぶってるの!??」


あの2人の休日が一緒になるのは、これで何回目だろうか?

ここまで来ると、意図的に操作されているのではと考えてしまう。

まあ、それでも別に構いはしないのだけどさ。

今日は2人で街へショッピングにでも来ているのだろうか?

傍目から見ても、実に楽しそうだ。

路地に隠れる俺たちに気づくことなく、彼らは街の喧騒の中へと再び消えていった。


「ふー、行ったか? いつも仲いいなーあの2人。 ねぇアリア?」


「そう、ですね・・・あのカイト様、ちょうど昼時ですし、どこかで食べてから住居区へ向かいませんか?」


アリアからそんな提案が出るなんて、珍しい。

もしかしてあの2人に、対抗心でも燃やしているのか?

可愛いところもあるじゃないか。


「うん、俺も腹減った。 どこが良いかなー?」


こちらの2人も、思い思いに行動を始めるのだった・・・・



◇◇◇



夕方近く。

屋敷へ戻ってきたカイトたちは、今日の取りまとめにかかった。

街を視察したことによる改善点などを、まとめるのだ。


「申し訳ございませんカイト様、私の我がままで視察が・・・」


「気にする事は無いよ、もともとそういうつもりだったんだから。」


結局あの後は、アリアとは街の散策だけで時間がつぶれてしまった。

それを彼女は、とても気にしているらしい。

だが今日は、元々『アリアに休日を!』という主旨で街へ行ったのである。

だと言うのに、いつの間に彼女の中では『視察』という文言にすり替わっていたのか。


それを指摘したら、さらに彼女が恐縮すること間違いなしなので、黙っておく。

街でセリアさんカップルに遭遇後は、俺たちは服飾店などに行って楽しく過ごせたので、結果オーライである。

2人には今度、お礼を言っておこう。


「でもまさか、街で使用人さんにバッタリとはねー。」


「街の中心はヒトが多く集まりますから。 特に不思議なことは無いでしょう。」


まあ、確かにベアルはそんなに大きな街ではないから、そう言われればそうなんだけどさ。

屋敷でいつも顔を合わせるヒトと、雑多な場所で会うと嬉しい気持ちになるとかいう感じの、あるじゃない?

それにしても、あの2人は本当に仲がいいな。

出会いは、すさまじい感じだったけど。


「そういえばセリアさん達って、この屋敷に住み込みだよね? いつか結婚するなら個室をあてがってあげないとだよね??」


あれだけ好き合っているのだ。

いつかは結婚することだろう。

俺の屋敷に住み込みとはいえ、家族は一緒に居るべきだ。

子供ができた時の対策で、広めの部屋を間仕切りしてあげるのベストかも・・・


「・・・はい? カイト様、何をおっしゃっているのですか? あの2人は婚姻を結ぶ事など出来ませんが??」


「え、それどういう事!!?」


あの2人が結婚を出来ないとは一体、どういう事か!?

衝撃のカミンングアウトに、椅子から勢いよく立ち上がるカイト。

対して彼の勝手な早とちりに、辟易へきえきするアリア。

このヒト、いつも思うが無知すぎる。

せっかく屋敷には彼専用の書斎があるというのに、全く活用されて居なさそうだ。


「屋敷護衛のゼルダは心配ございません、彼は届け出れば、自由に所帯を持つことが可能です。」


彼女の口ぶりからして王宮で『セリアに怪我をさせてしまった』と大騒ぎしていた例の騎士さんは、大丈夫らしい。

王宮お抱えの騎士だったのになぜか、俺なんかに付いて来るのを熱望し、今は屋敷の見回りをして頂いている。

とんだ左遷させんではなかろうかと、未だに思っている節がある人物だ。(※他の使用人たち含め)

彼は、問題なく結婚ができるという。


「セリアさんは?」


「それより前に・・・そもそもカイト様は、『メイド』というのがどのような存在か、ご存知ないのですか??」


日本人である俺の『メイドさん』知識は2通り。

1つは、屋敷などで働いてくれる、女性の使用人さん。

もう1つは、メイド喫茶などで「お帰りなさいませ、ご主人様」と出迎える、従業員さん。

この世界に、オタがこよなく愛する喫茶があるはずないので、この世界のメイドさんとは、もっぱら前者に寄るものと考えられる。

この認識で、間違いは無いはずだが。


「いいですか、『メイド』というものは、上流階級のものが雇う、独身女性のみがなる事のできる職業です。 もし仮に、セリアがゼルダと結婚した場合、彼女はメイドの資格を喪失し、この屋敷を去らねばならなくなるのです。」


「何それ!? それって万国共通!??」


カイトの質問に、首を縦に振るアリア。

メイドとはそもそも、独身女性をさす言葉だ。

もともとは花嫁修業のため、貴族の屋敷などに独身女性が一定期間、奉公にでるようになったのが、その始まりとされる。

いつしかそれは職業となり、これを志す女性も珍しくは無くなった。

だが、メイドたる本質は変わっていない。

結婚したら、相手に尽くすのが、この世界において美徳とされているのだ。


「男女共同参画の考えは無いの?」


「何ですの、その男女共同の三角形というのは?」


カイトは頭を抱えた。

なるほど、現況は飲み込めた。

家庭か仕事か、セリアさんは二者択一するしか無いらしい。

まさかメイドがそんなものだったとは、露ぞしらなかった。


「もし彼らが好き合っているとして・・それでも尚、使用人に留まるという事は、それなりの事情があるはずです。 我らが首を突っ込むようなことではないかと。」


「う~~~・・」


アリアの言う事は、正論だ。

第三者である俺が、とやかく言うことでない事は分かる。

だが『へえ、そうなんだ』で片付けられるほど、俺は諦めがよくないのだ。

世間様では、バカとも言う。


「よし、そうしよう。」


「カイト様、何をなさるおつもりで・・・・?」


まずは、今の状況を把握してみることにする事にした。



しばらく、閑話が続きます。

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