表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第12章 延伸そして進展
288/361

第270話・不穏な魔の森


パソコンが動きを停止してしまった事により、投稿が遅れてしまったことを、この場を借りてお詫び申し上げます。

今後も、似たようなことが発生するかもしれません・・・



ベアルから王都へ、鉄道の延伸工事が始まって半月。

カイトたちは、ある問題に直面していた。


「大公殿下、お忙しい中、大変恐縮でございます。 北方の森にて、襲撃事件が発生しました。」


「え、またぁ!??」


騎士さんの報告に、思わず悪態をついてしまうカイト。

何が起こったのか、その概要を問いただす。


「はっ、報告によりますとマジックタイプのゴブリン3体が現れ、工事従事者の数名が軽症を負っています。 我々の手で魔物は、撃退いたしました。」


事態は収拾したものの、ケガ人が出ているのか。

軽症・・・

ここは大きな怪我でなくて良かったと、喜ぶべきだろうか?


「そっか・・・後で詳しい報告書をお願い。 重傷を負った人は、治療院で治療を受けさせて。」


「ははっ、仰せのままに!」


報告に来た騎士さんが去ると同時に、大きくため息をつくカイト。

これで一体、工事中のこういった事件は何度目だろうか?

鉄道建設団の人たちが、ベアルから工事現場を魔の森に移して以降、このようなことが3日も続けて起こっているのだ。

現在はゴーレム兵を量産し、対処をしているのだが・・・。

今一度、対策を練るべきだろうか?

考えにふけるカイトの元に、多くの書類を抱えたアリアが、やって来る。


「カイト様、先日の襲撃事件に関する被害報告などの取り纏めが終わりました。 あの、何か・・・・?」


「いや、また魔物の襲撃があったみたいで・・・。」


カイトからの報告に、顔色を悪くさせるアリア。

彼女もたぶん、俺と同じことを感じたのだろう。

暗い表情を浮かべながら、手近な机に、持っていた書類を置く彼女。


「これで3日連続・・・いくら魔の森でも、あまりにも不自然です。 カイト様、原因などが判明するまで、工事の中断を提案したいのですが。」


「うん、俺も同じことを考えていたんだ。 任せられるかな?」


「ただちに、手配します。」


命より大切なものはない。

今のところ、誰かが命を落とすような事件には発展していないが、いつそうなるとも限らないだろう。

念には念を入れるべきだ。

原因の調査を、行わなければならない。

ダリアさんを誘うか。


「アリアは、原因の目星はついているかい?」


前にダリアさんたちと地盤調査をしたとき、もちろん魔物などの襲撃は予想していた。

その上での、冒険者の手配やゴーレム兵の配備である。

しかし、現実に無視できないほどの被害が出ている。

しかも出没しているのが、もっぱら強力な魔物ばかりなのは、あまりにも不自然に映った。

その辺りの事情は、生粋のこの世界の住民のアリアの意見が、俺にとって大変に重要になる。


「魔物災害は、ひとつの原因として考えられます。」


「アレか・・・。」


俺がこの世界にやってきた頃に遭遇した、ゴブリンキング由来の魔物災害。

あれが、この領地近くで起きているというのだろうか??

しかしと、話を付け加える彼女。


「魔物災害は、ひとたび起きればもっと、顕著な被害が出るものです。 いくらカイト様のゴーレム兵がいても、負傷者だけで済むことは無いでしょう。」


魔物災害にしては被害が小さすぎるし、通常時にしては被害がありすぎる、という事か。

だとしたら、ますます原因が分からない。

やはり現地調査するしかない、という事だろうか?


「ありがとうアリア、俺もちょっと、調査をしてみるよ。」


「失礼いたします。」


一礼して、後方へと去っていくアリア。

それと入れ替わるようにして、ダリアさんが俺の横に並ぶ。


「カイト殿様、呼びましたか?」


アリアと話している間に、念話で呼び寄せたダリアさんだが、仕事中に呼び出されたので不機嫌そうだ。

まあ、そう怒るなよ。


「どうにも気にかかる事があるんだ。 ダリアさんも付いて来てくれない?」


「先日から森で騒ぐ、ゴミ虫どもの件ですか?」


顔色一つ変えずに、淡々と言ってのけるダリアさん。

魔物をゴミ呼ばわりとは、さすがです。

でも今回の目的は、あくまで調査なので、もし魔物が見つかっても追撃などはしないよう、そこのところを彼女にはよく、言い聞かせる。

渋々ながら、これを承諾する彼女。


事件の真相究明のため、カイトたちは転移で魔の森へと向かった。




◇◇◇



時を同じくして。

アーバン法国の王宮は、大騒ぎとなっていた。


「それはまことか!??」


「多くの魔物が、魔の森全体を一定の間隔で、散開しているもようです。 魔王城においても、魔族が集結しつつあるとの調査結果が・・・」


もたらされた情報に、頭を抱える国王。

『下がってよい』という宰相の言葉を聞くなり、報告に来た密偵はその姿を消していった。

とたんに静まり返る、玉座の間。

最初に口を開いたのは、衛士のような格好をした男だった。


「国王陛下、発言してもよろしいでしょうか?」


「騎士団長、申してみよ。」


「失礼いたします! この一件、おそらく魔物災害ではありません。 ヤツらの侵攻の前触れでは無いかと。」


騎士団長と呼ばれた衛士の発言に、玉座の間に集っていた国の重鎮たちが、一斉にざわつき始める。

国王も一転して、神妙な面持ちになる。


法国の西側に広がる、広大な魔の森。

ここは魔族たちとの境界線となっており、ほかと比べて多くの魔物が出没することで知られる。

しかし出没するのは、もっぱら野生の魔物ばかり。

組織的に森に散開して、集団で人間側の動向を伺うなどという事を、する事はまずない。

するのは、魔王軍の前衛ぐらいか・・。


「しかし陛下、まだ彼らとは『不可侵条約』が結ばれたままとなっております。 下手に騒ぎたてをすれば、いたずらに国民に不安感情を植えつけることになります。」


「その考えは楽観に過ぎる、奴らは蛮族だぞ!? 国王陛下、出兵のご準備を。 直ちに魔の森への派兵を進言いたします!!」


双方の意見に、静かに耳を傾ける王。

事態は、一刻を争う事になりかねない。

しかし派兵となれば人目につくので、森の異変が、住民たちに嗅ぎ付けられる危険がある。

そうなれば、国中が蜂の巣をつついたような大混乱になってしまう。

今は軍備増強と、いつでも派兵が出来るようにしておく準備が必要だ。


「戦争に備え、戦士国に傭兵ようへいの交渉を入れよ。 王宮の魔法使いを至急、集めるのだ!! この事は、絶対に口外してはならぬ。」


「「「ははっっ!!!」」」


国王の指示に従い、室内にいた者たちは、次々に出て行った。

一番最後に、宰相も一礼して出て行く。

玉座の間には、国王と王妃だけが残る形になった。

沈痛な表情を浮かべる、彼ら。


「ゼイド、戦争が始まるのですか?」


横からの王妃の質問に、一言も言葉を発さない王。

たまりかねたように、彼女は声を荒げる。


「あなたは、アリアたちを見捨てるのですか!? ベアル領は・・・!!」


「分かっている・・・・!」


肩を震わせ、それでいて首を横に振る国王のゼイド。

その気迫に、言葉を失うミカナ王妃。

魔の森に近い土地柄、ベアルは魔の森に出兵した際の、前線の重要な補給基地となる。

それにあそこは、王都に並ぶ巨大な都市だ。

住民が難民ともなれば、国中が大混乱ともなろう。

兵が前線に到着するまでは、どうしてもそのような事態は、避けなければならなかった。


「アリアたちを、時間稼ぎの材料に使うのですね・・!」


「・・・。」


憤慨やるたかないといった王妃。

国王は、さらに顔色を悪くさせる。

自分だって、どうにかしたい。

しかし王と言う立場上、そのような『肩入れ』は出来なかった。


「ミカナ、ベアルの大公宅へ至急、便りを出すのだ。 内容は任せる。」


「・・・分かりました、早急に準備します。」


王妃は一礼すると、自分の私室へと戻っていった。

我々は、あまりにも無力だ。

ただの一つの領地すら、守ることが出来ないのだから。

最後に一人、玉座の間に残った国王は、どこを見るでもなくただ、顔色を悪くさせていくのだった・・・・。



当然、カイトたち一行にはヒカリやノゾミも付いていっております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ