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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第11章 鉄道の延伸計画
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第265話・一歩前進へ

これからも、楽しんで書いていこうと思います。

感想などがありましたら、遠慮なくお寄せください。

バルアの西側に広がる、ビルバス山脈。

そのふもとに広がる、広大な緑の森。

この一角に、魔石の鉱脈が広がっている。

それもこれも、石神様いわがみさまの尽力のおかげだ。


『遅いぞバカ者めが!!  いつまでワシを待たせるつもりだ!??』


「ごごご、ごめんなさい! 今、お迎えに上がりましたです!!」


目をギラリと赤く輝かせ、大きな怒声を張り上げる仏像に対し、平身低頭の姿勢でのぞむカイト。

くだんの仏像・・もとい石神様が大変ご立腹なのには、理由がある。

『鉱脈が出来たので、迎えに来い』という連絡が彼から来たのは、2日以上前。

理由はさておき、こんな何もない場所に2日も置き去りにされたら、そりゃ怒りますよね。


『こう言ってはビミョーだが、ワシは魔法のたぐいは使えないのだ。 置いていかれたら、この姿では移動もできんのだぞ。 分かっておるか!!』


「すみません、ご不便をおかけしました。」


お詫びと言っては何ですが・・・と石神様へ、大きなバスケットに入ったフルーツの詰め合わせを差し出すカイト。

先ほど王都の商店で購入したものだ。

本来は地球で言う、仏壇のような場所へお供えするためのモノらしいが、だいたい似たようなものだろう。

これで許してとまでは言わないが、少しでも機嫌を直してほしい。


『ふむ、少しはバカな貴様でも分かってきたようだな。 そこはほめてやろう。』


目から漏れていた赤い光が収束し、嬉しそうにカタカタと揺れる仏像。

思ったより、効果覿面こうかてきめんで助かった。


「あの、ところで・・・魔石の鉱脈はどうでしょうか?」


『それならば、ここら一帯の全部がそうだ。 少し大地の龍脈をイジってな、貴様達が「魔の森」と呼んでいる場所の流れをせき止めて、こちらへ流れるようにした。 心配せんでも、空気中の魔素が濃くならないように、調整はしてある。』


「???」


石神様の説明に、首を傾げるカイト。

初めて聞く単語が多くて、内容がほとんど頭に入ってこなかった。

頭上に疑問符を浮かべるカイトに、石神様は呆れ調に、大きくため息をつく。

3歳の子供でも分かる内容で、話したつもりなのに・・・。


『・・・・つまり、この先は半永久的に、この地で魔石を掘れると言う事だ。』


「そうなんですか、ありがとうございます!!」


メンテナンスフリーは、実に助かる。

掘ってもすぐに無くなってしまっては、どうしようもない。

列車の燃料となる魔石は、永続的に採掘できなければ、意味が無いのだ。

お気遣い、ありがとうございます。


「あのぅ・・、話は済みましたか?」


「な・・・まさか今まで、隠れてたの!??」


木陰から、ひょっこりと姿を現すダリアさん。

先ほど石神様が怒っていた時、身の危険を感じて、隠れたようだ。

なんだかな~~。

自分だけじゃなく、ヒカリも避難させていたのは、評価をするけどさ。

ふう・・・と一度ため息をついて、石神様に向き直る。


「では早速、神社へお送りしますね。」


『ああ、そうしろ。 今度ワシを怒らせたら、そこの女と共に呪うからな?』


ビクッと体を震わせるダリアさん。

ダリアさんと入れ替わりは、さすがに勘弁して下さい。

苦笑混じりに、カイトはふと、石神様に疑問を口にする。


「そういえば石神様は、魔法が使えないんですよね? あの『呪い』は、魔法とは違うんですか?」


『そんな事、ワシが知るか。 ただ・・・』


「ただ?」


『ずっと大昔に我が洞窟を訪れた、赤髪の女に「自衛手段にでも使え」と教えられたのだ。 まだ生きているのならば、礼を言いたいところである。』


あの事件は、その女性のせいで、起こった様なものらしい。

恐らくは、グレーツクの住民だろうか。

まったく、余計なことをしてくれたと思う。

厳重に抗議したいところであるが、ソレがあったのは恐らく、何百年も前の事だろう。

今の俺には、手の出しようは無い。


仏像を手に、カイト達はグレーツクへと転移していった。




◇◇◇




「ではギルドの誘致は、成功したのですね!?」


「これが、渡された資料だよ。」


つい先ほど、ベアルの屋敷へと帰って来たカイトたち一行。

帰宅早々にクレアさんにしょっ引かれて行った、ダリアさんはさておき。

挨拶もそこそこに、カイトは自室にて結果報告をアリアに行っていた。

口頭で伝えるより、渡された書類をまじえて説明した方が良いと、判断したのだ。

渡した書類に、目を通す彼女。


「・・・これによりますと、ボルタにもギルドを造るとなっているようですが?」


「そうなんだよ、話がトントン拍子に進んでね・・・。」


「それは、また・・・」


ペラペラと書類をめくっていき、中の確認を行っていくアリア。

ほぼ二つ返事で受けてしまったのだが、彼女の目にはどう、映っているだろうか?


「土地と建物を、どうにかしないといけないんだ。 大丈夫かい?」


「それは問題ございません。 お疲れ様でございました、カイト様。」


アリアの感謝の言葉に、首を横に振るカイト。

これは、俺の力ではない。

謙遜けんそんとかではなく、これはアリアたちが頑張ってくれた賜物なのだ。

俺のしたことは、最後のプレゼンだけである。

魔石に関しては、報告レスでいいだろう。

彼女には別に、言わなければならないことがある。


「それともう一つ、アリアに報告があるんだ。」


「まだ、何かあるのですか?」


一転して、不安げな表情を浮かべるアリア。

日ごろがあるので、悪い方向に考えたのだろう。

気にせず、アイテムボックスに入れた紙の一枚を、彼女に見せつける。


「・・・・『来たれバルアへ、南国のリゾートへ!!』これは・・・・?」


「これを、世界中のギルドのボードに貼ってもらうんだ。 既に話はつけてある!!」


貼り出されていた、依頼の紙をヒントにさせてもらった。

ギルドは世界中、どこにでもあるので宣伝効果は抜群。

これも『依頼』という形で、手続きさせてもらった。

おかげで半永久的に、この宣伝ポスターが、あらゆるギルドの掲示板に、貼り出されることになるのだ。


これぞまさに、逆転の発想!

依頼料は、冒険者を雇うなどの依頼でないので、銀貨3枚で済んだ。(※日本円で3万円ぐらい)

低コストで、効果絶大が期待できるのである!!

・・たぶん。

少なくとも、悪い結果になるようなことは無いだろう。


「そうですか・・・頑張って下さいませ。」


「うん。」


何を頑張るのかは分からないが、これで第一歩は踏み出すことができた。

依頼をした紙は、そこそこ多量に複製してある。

これをこの街においても、駅などの人が多く集まる場所に貼り出していただきたい考えだ。

それについては、街の人たちと追々・・・


「そういえばアリア、王都に行く前に俺に、何を伝えようとしていたの?」


途端に凍りつく、辺りの空気。

俺は何か、マズイ事でも言っただろうか?


「実は、メルシェードの雇用の件なのです。」


「使用人として、ダリアさんみたく働くんでしょ?」


自分から買って出たのだ。

前例にならい、きっとそうに違いないと、判断を下していたカイト。

だがアリアは、それを否定するように首を横に振った。


「私は、彼女をあなたの秘書役にと、考えています。」


「・・・・・ひしょ?」


秘書とは、彼なりの解釈で説明すると、どっかの大きな会社の社長に付き従う、有能な女性である。

つまり。


『君、アレを。』(カイト)

『はい、どうぞ。』(メル)

あるじの要望にあわせ、サッパリ目のうまいジュースを瞬時に差し出す彼女。

気が利くではないか。

たったこれだけで、会話が成立する。

さらに。


『君、次の予定はどうなっている?』(カイト)

『はい領主様、次は王様との謁見の予定になっています。』(メル)

『気が利かないな、私は疲れている。 予定はずらせないのか?』(カイト)

『仰せのままに尽力いたします、領主様。』(メル)

こちらの要望には、何でも応える。

そんな存在。

それが『秘書』!!


・・・突込みどころが満載だが、カイトの認識は、そんなものだった。

ダメだ、秘書は人間をダメにします!!

もともと、イロイロな事がダメではあるけど。


「アリア、皆が一生懸命やってくれているおかげで、今の俺があるんだ。 俺にとっては、皆が秘書だよ。」


徹底回避のため、良い感じのセリフを吐くカイト。

しかし、言葉の意味は全くもって分からなかった。

は?と首を傾げてみせるアリア。


「何をおっしゃっているのですか、カイト様? 秘書はあなたの政務の補佐役です。 他の領主に関しましても、1人は配置しているのです。 事後承諾となってしまいますが、どうかご理解下さい。」


「うそー・・・。」


どこで、墓穴を掘ってしまったのだろうか。

キラリと光る、アリアの瞳の奥。

これはつまるところ、俺への監視役が付けられるという認識でよいだろう。

監視役。

今まで隠していたことや、秘密裏に動いていたことが、これを機に崩壊するかもしれない。

大きなところでは、グレーツクなどとか。

しかし、どう考えても最良の回避術は、ナシのツブテだ。


「彼女も領主の秘書官たるスキル習得のため、粉骨砕身、努力に身を削っております。 彼女のためにも、どうかご理解下さい。」


「・・・そ。」


彼女が俺に、懇願をしてきた光景が、目の前にちらつく。

自分の都合でそれを取り消すなど、ありえない。

そんなヤツがいたら、俺はそいつを殴るだろう。

今はこの状況を甘んじて、受け入れるほかに無さそうだ。


しっかし俺に『秘書』・・・ねぇ~~。




カイトの『秘書』は、あくまで妄想です。

妄想の中にあるような業務は、存在しませんのでご注意下さい。

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