第264話・再会
これからも、楽しんで書いていこうと思います。
内容に関する不都合な点や、感想などがありましたら、どんどんお寄せ下さい。
王都に、ギルド総督会への出席のためにやって来た、ベアルの大公様。
それも先ほど終り、今は付き従う2人の女子と談笑(?)しながら、少しだけ街中を散歩している。
「カイト殿様、ちっとも面白くありませんでした。」
「それは、残念だったね。」
知らないよ、そんな事。
ギルドの総督会に面白みを求める、ダリアさんがまずもって、おかしいのだ。
ご苦労さまです。
ダリアさんが期待していたような結果にならなくて、本当に良かった。
あの後に受けた『頼み』というのは、ボルタにもベアル同様に、商業ギルドを作るということ。
それだけだった。
商業ギルドというのは、流通物品の商取引を統括する、商人達の協同組合。
その主な業務は、物品の卸業から各商会間の取引の円滑化、駅馬車手配代行などなど・・・
俺にはあずかり知らぬ業務が、多くあるようだ。
ボルタに出来たら、多分、いい結果につながるのだろう。
「屋敷へは、帰らないのですか?」
「うん、ここのギルドで申請したい事があってね。」
大したことではない。
建設工事時の護衛依頼を、ギルドへ提出しに行くのだ。
鉄道建設中に、盗賊や魔物が出てこないとも限らない。
その対策である。
ちなみにアリアからの許可は、既に取り付けてあるので、その点は何も心配はない!
「あ、そうですか。」
そっぽを向き、大きな欠伸をする彼女。
分かっているよ、自分の出る幕がないから、興味がないんだよね。
でもそうやって悪態をつかれると、地味に傷つくので、やめて下さい。
まあ、そこはダリアさんだから、しょうがないのかな・・。
「すぐに済むし、終ったら昼ごはんでも食べに行くかい?」
「ホゥ、それはつまり、何を食してもよろしいと?」
口からよだれを、ダラダラ垂らすダリアさん。
興味ある話題になった途端、コレだよ。
まったく、しょうがない人だ。
俺の横を歩いている人の意思確認も、念のためしておこう。
「あなたも、ご一緒にどうですか?」
「いや・・・残念ながら時間がないので、私はご一緒できそうにありませんな。」
隣を並んで歩いているマントを風なびかせた男性が、大きな笑い声を上げる。
彼は総督会にて、あの場に居た人物の1人。
関連の用事で冒険者ギルドに行かねばならないらしく、俺と一緒にいくことになったのだ。
「それにしても君・・いやあなたが『慈愛の大公様』だったとは! 噂はかねがね聞いていますよ。」
「もうその、敬語は止めて下さい。 顔から火が出そうです。」
「はっははは、これは失礼!」
誰だよ、『慈愛の大公様』って。
顔を真っ赤にして、にらみを利かせた視線を、横の男性へと送るカイト。
彼の名は『ガジェット・サグロン』だ。
とても大事なことなので、もう一度いう。
彼の名は、『ガジェット』。
「シェラリータでギルマスをしているはずのガジェットさんが何故、ここにいるんですか?」
「どうして、そんなビミョーな顔をするんだね? 久しぶりの感動の再会ではないですか。」
この男性は、シェラリータでギルドマスターをやっている人物。
なんでも冒険者ギルドの中では、そこそこ重要なポストにつく人物だったよう。
今回の総督会でも審議員の1人として、他のギルドの人たちと肩を並べていたのだそうだ。
ビックリだよ。
「どうして最初に、言ってくれなかったんですか?」
「いや、私はとっくに気がついているものと。 それにも係わらずカチコチになっている君の姿が愉快でして。 いやはや申し訳ないことをしました。」
冗談じゃない、こっちはちっとも愉快なんかじゃありませんでしたよ。
笑われている自分が、なんとも言い表せない。
あの時は本当に、胸が張り裂けてしまいそうだったのだから。
「ねえお兄ちゃん、このおじさん知ってる人?」
「まあな・・・。」
ヒカリが彼に指を差して、疑問を口にする。
彼女たちは、ガジェットさんとは初対面だ。
ダリアさんも同調して、しきりに首を縦に振る。
「私の名はガジェットだ。 大公様とは旧い付き合いなのだよ。」
「そうなんだ?」
「つまりこの方は、カイト殿様の、少ないご友人の1人というわけですね?」
し、失礼な!!!
なんという事を言うんだろうか、ダリアさんは。
泣くぞ、このヤロウ。
確かに俺は、この世界で『友』と呼べるヒトは、少ないけどさ。
もう少し、言い方というものがあるだろう、君ィ!??
彼女のことは、本日は無視しよう。
「ガジェットさんは、これから何をするんですか??」
「今回の件で、ギルドへ報告をしに行かねばならないのだ。 ややこしい話をしなければならないから、時間がかかる。」
それぞれの職業、責任が生じているというわけか。
ギルド設立関係で、彼らには人材手配など、イロイロあるのだろう。
おれ、そういうの苦手。
なんでそんな俺が、領主なんかやっているのか、世界の七不思議だ。
「ふぅ・・・」とためいきを漏らすカイト。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「心配しなくていいよ。 ただの気疲れだから。」
ギュッとヒカリが、服の裾をつかんでくる。
一つ一つのしぐさが可愛い。
彼女は本当に俺を心配しているので、口には出さないけど。
いつまでも、そのままで居ておくれ。
「いやはや、慕われておりますなァ。 この2人は、従者ですかな?」
「ヒカリは家族です。 あっちのメイド姿の方は、どちらかと言うと居候です。」
「はっははは! 領主邸に居候とは!!」
間違ったことは言っていない。
従者の代わりとして連れて来ている覚えはあるが、厳密にはダリアさんは従者にアラズ。
彼女的にも、俺が主人などとはカケラも思っていないだろう。
ヒカリは言わずもがな。
そんなに、おかしい事だろうか?
「カイト君は面白い。 大きな地位を得ても、何も変わっていませんな。」
「それは、どうも・・・。」
よく分からないが、相槌を打っておく。
イロイロあったけど、2人の事は大好きだ。
このまま、この状態が続いてほしいという俺の考えは、自分勝手に過ぎるだろうか?
そんな話をしているうちに、いつの間にか俺達は、王都のギルドへと着いていた。
「もっと君と話をして居たかったが、約束があるのでな。 またいつか、どこかで会おう。」
「はい。 お元気で。」
ここでガジェットさんとは、お別れである。
手を振りながら、彼はギルドの奥へと入っていく。
俺もギルドへ依頼を出す手続きを、しなければならない。
建物内の様子を確認すると、端のほうにある窓口へ、まっしぐらに向かう。
「すみません、臨時の依頼を出したいのですが。」
「はい、ではこちらの用紙に・・・ぅ!?」
俺の姿を見て、大きく目を見開かせる、受付の女性。
「お久しぶりです。」
「ああ、あの・・あぅ・・・!??」
動揺しすぎて、声が出せないよう。
でも、俺も彼女も、互いを覚えているのは確か。
彼女は、俺がこの王都でノゾミと冒険者をやっていた頃、お世話になったヒトだ。
幾ばくかして、深呼吸をして落ち着きを取り戻した彼女。
「すみません、取り乱してしまって・・。 そういえば大公様になられたのでしたね、おめでとうございます。」
「いえ・・・あの時は、とんだご迷惑をお掛けしました。」
彼女は、俺の事情を知っている。
王都を離れる際、ご挨拶に伺ったのだ。
あの時は完全に、仕事の手が止まってしまっていたな。
だいぶ心配を掛けてしまっていたようだし、今でも彼女には、頭が上がらない。
「今日は少々、特殊な事情がありまして。 建設現場で護衛を雇いたいのです。」
「長期ですね? 依頼の場所はお決まりですか??」
「建設現場に応じて、移動の予定です。」
身分証明を済ませ、依頼の手続きを進めていく。
依頼報酬などの段取りは、既に決めてあるので、スムーズだ。
依頼を出す際の保証金として、余裕を持って金貨2枚を懐から出す。
これで、依頼の受付は完了だ。
「迅速に処理いたしますので、少々お待ち下さい。」
紙の束などを片手に、彼女はギルドの奥へと引っ込んでいく。
なんでも提出された依頼を、他のギルド支部へも流し、情報共有するのだとか。
待っている間、俺達は他の冒険者に混ざって、ギルドの中に常設されている丸テーブルへと腰を下ろす。
他の職員が俺のために待合室を用意してくれたようだが、それは丁重に断った。
ダリアさんは席につくと、キョロキョロと周りをうかがい始める。
「まるで宿屋のホールのようですが、ここがギルドですか?」
「そういえばダリアさんは初めてだったね。 ちなみに料理も注文できるよ?」
「ホウ、それは妙な・・・。」
目をキラキラ輝かせ、こちらを凝視する彼女。
昼食の場所は、決定のようだな。
「すみません、メニュー表をください。」
「「「え!???」」」
ギルドの中を、驚愕に似た声が、響きわたる。
皆様方、おくつろぎのところ大変、お騒がせします。
登録を待っている間、カイトたちは、ここで昼休憩をとる事にした。
最近忙しく、更新が滞りがちになってしまい、申し訳ございません。




