第263話・希望を
これからも、楽しんで書いていこうと思います。
その過程で投稿が滞る事もあるかもしれませんが、少なくとも打ち切りなどは、無いのでご安心ください。
ベアルの領主である、カイトは現在、冒険者ギルドの誘致のため王都にいる。
このギルドの誘致は、魔の森近くに存在するベアルにとって、必要不可欠なものだ。
先日そのための審議が行われた。
2日間の審議の末、今日はついにその結果を、告知される。
・・・・のだが。
「楽しみですね、とくと傍で見させていただきますよ?」
「いや、ダメだからね? 付いて来ちゃ。」
家でメイドをやっているはずのダリアさんは、目の前で黒い笑みを浮かべて立っている。
俺が王都へ行った旨を聞きつけ、ここまでヒカリを引き連れ、追ってきたよう。
彼女たちの行動力は、ハンパないな。
素直に、嬉しかった。
・・・・だけどね。
「これから始まるのは、大事な話なんだ。 俺以外、入室は許可されないんだよ。」
「そのような人間共が決めた事など、この私には関係ございません。」
そういうわけには、行かないんだって。
ヒカリはすぐに分かってくれたのに、どうしてもダリアさんは、それを良しとしない。
今も付いて行く気、マンマンだ。
悪いが、聞ける願いと、聞けない願いがあるのだよ。
分かってくれたまへ。
「ヒカリ様も、出来ればカイト殿様と居たいですよね?」
「・・でも、お兄ちゃんはダメだって・・・。」
う・・マズい流れ。
最近ダリアさんは、力だけではなく戦術に頼る機会も増えている。
ヒカリからの、攻略をかかるとは卑怯な。
ダリアさん、俺を崩しにかかったな?
「大丈夫ですよ、我々は希望を持たなくてはなりません!」
「・・・そうなの??」
俺に期待に満ちた眼差しを向けてくる、すっかり焚き付けられてしまったヒカリ。
く・・・どうしよう?
あんな視線を向けられて『ダメ』とか言うのは・・・
いや、ここはビシッと言わなきゃ、彼女の教育上も良くないのではあるまいか!?
「いやヒカリ、残念だが今回は・・!」
コンコン!
「む・・。」
タイミングを見計らったように、ノックされる扉。
多分、議会へのお呼び出しだろう。
しょうがない・・。
「どうぞ。」
「失礼いたします、大公殿下。 お呼びに参りました。」
呼びにきたのは、ここ数日間一緒(?)のメイドさんだ。
押し問答は終わり。
話の途中で悪いが、ダリアさん達はここに残って・・・。
「・・・!!」
「おや? 殿下お付の者たちは、お手洗いですか??」
先ほどまでそこに居たはずの、ヒカリとダリアさんが居ない。
いや・・・正確に言うと『見えない』のだ。
そうまでして、付いて来たいとは。
さすがはダリアさん、ヒカリの気配まで消すとは恐れ入ったよ。
「分かった、絶対に悟られないようにしろよ?」
「・・・?」
何もない空間に、話しかけるカイト。
メイドさんは疑問を感じながら、彼を総督会が開かれる大部屋へと、案内していった。
◇◇◇
今日は、なんだかスッキリしている。
俺がいるのは先日同様、多くのギルドの審議員に囲まれた大部屋だ。
部屋を取り巻く、重い空気。
しかし今日は、前回のような息苦しさはない。
明らかに前と違う点。
「「・・・・・・。」」
後ろへ視線を向ければ、そこにあるのは壁と出入り口だけ。
だが、何も見えないように見えるそこには、間違いなく彼女たちがいる。
俺を追って王都へとやって来た、ヒカリとダリアさんが。
視認は出来ないのだが、『間違いなく居る』というだけで、心強い気がする。
2人に、俺のカッコイイ姿を見せたいというのは、ワガママだろうか?
「ではこれより、ギルドの審議を始めようと思う。」
「!」
視線を、前方へと戻すカイト。
これから行われるのは、ギルド創設に係る結果報告。
答え次第で、ベアルの行く末が決まる。
「まず殿下には、結果報告から致しましょう。 ベアル領の2地域に、当該施設の設置をさせていただく運びとなります。」
「それじゃあ・・・!」
スッと耳に飛び込んできた、『結果報告』
俺に対し、彼らは一様に首を縦に振る。
や、やったよアリアーーーーーーーーー!!!
ニヤけそうになる顔を、必死でこらえる。
今は心の内で、ガッツポーズをとらせていただく。
「冒険者ギルド設置に係る権限などに関しては、後で資料をお渡しいたします。 施設の設置場所の選定は、そちらに委ねられます。」
「は、はい・・!」
頼んでいたギルドの設置箇所は、まさかの2箇所。
ベアルは広いので、東と西に1箇所ずつ、という事だろうか?
どちらにしても、今は素直に嬉しい!
「ギルド職員の人選は、こちらで行います。 それでは殿下、後の事はよろしく頼みます。」
「あ、ありがとうございます! 手際よく処理いたします。」
ベアルの冒険者ギルドを設置する用地は、街が出来た頃から既に、確保済みだ。
建物を建てるのは、そのスジの方々がやってくれる手はずになっている。
アリアたちに報告すれば、すぐに話が済むだろう。
歓喜に打ち震え、今はそれを隠そうともしない彼を静観する、ギルドの審議員たち。
「さて殿下にはもう一つ、頼みたいことがあるのですが・・・よろしいですか?」
「は、はい! なんでしょう!??」
声のトーンを、一段と低くさせる議長さん。
今度は彼らからの、願いがあるという。
まさか、ギルドの承認は交換条件によるもの・・・!??
バカのようにクルクル回っていたカイトは一転、毅然とした態度で望む。
それらを、背後のダリアさんは満面の笑みで、眺めていた・・・
今後、当作品の話数がかなり膨大になってしまう可能性が浮上したため、一丹の最終話というのを設定してみました。(おおよそ数千話という規模)
ちなみに投稿は、早くても十数年後となりそうです。
気長に、お待ちください・・・。




