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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第11章 鉄道の延伸計画
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第262話・片隅で

これからも、楽しみながら書いていこうと思います。

感想などがありましたら、お寄せください。

日が落ち、徐々に暗がりを見せる世界。

王都アルレーナでは、魔力灯が灯り、街は昼のように明るい。

特に王宮へと続く通り沿いでは、多くの店が夜でも軒を連ね、活気に満ち溢れている。

その通りの一角にある大きな建物に、ベアルの大公様の姿があった。


「ふああぁぁあ・・・・。」


用意されたベッドの上で、泥のようになっているのが、その大公様だ。

寝間着に着替えずに横たわっている辺り、彼の訴える『疲れ』が顕著に現れている。

彼の本名、カイト・スズキ。

イロイロあって今の身分に登り詰め、またイロイロあって現在、王都にいる。

説明すると長くなるので、内容は省く。

今日も今日とて、日が暮れるまで、領主としての責務に、身をさらしていたのだ。

ご苦労様です。


「もう・・、つかれた・・・・」


アドリブと、『手元の資料をご覧ください』をうたい文句に、どうにかギルドの総督会を切り抜けることが出来た。

どうしてそれで切り抜けられたのか、記憶は定かではない。

上手くいったのかも、不明。


「審議には数日かかるか・・・。 上手くいっているといいけど・・・」


あと数日間、このような心理状況が続くのだろうか?

いつ呼ばれるのか分からない以上、街に出て気分転換をする時間など、俺には無い。

アリアたちが長い期間を掛けて作った資料が、効果を成さないとは思わない。

・・・が、それを宣伝したのは、俺。

結果を聞くのが、とても怖い。


「せめて、いやしがほしい・・・」


くそぅ・・・。

もっとゆっくり、ベアルを出れば良かった。

今回は急な話で、いつも連れているヒカリたちが、一緒ではない。

せめてダリアさんでもいれば、気分転換ぐらいにはなったのだが。

・・・今、呼んだらマズイよね?

よしておこう。

癒しは、諦めるほか無い。


「・・・仕方が無い、仕事でもするか。」


こんな暗い気持ちでは、とても寝付くことなど出来ない。

先日に行った地盤調査結果を纏めて、ルートを地図に起こす作業でもしよう。

よっこらせと、スローな動きでベッドから起き上がる。

すると見計らったように、戸をノックする音が響いた。

・・・・タイミングよし。


「はい、なんでしょう?」


「失礼いたします殿下、お食事の用意が整いましてございます。」


入ってきたのは、ここに来てからお馴染みのメイドさん。

もう、そんな時間なのか。

昼食事もそうだったのだが食事をするのは俺1人で、屋敷で使用人たちとも一緒に楽しく食べていることを考えると、どうにも寂しい。


「ごめん、今は胸がいっぱいなんだ。」


「失礼いたしました。 では御用がありましたら、なんなりとお申し付け下さい。」


彼女が部屋を出て行くと、再び静かになる。

せっかく用意してくれたのに、ごめんなさい。

どうにもイケないな・・・


「さあ~、地図作り、地図作り!」


くさっていても、どうにもなりはしない。

仕事をして、気をまぎらわせよう。

元となる地図をアイテムボックスから出して、調査結果を記した地図と合わせる。

ここから、ルートの細かい修正を入れていくのだ。


「・・・・。」


耳が痛くなるほど、静かとは、この事を言うのだろうか?

ここは王都のど真ん中に位置しているというのに、この部屋には物音一つ、聞こえては来ない。

ベアルだと部屋には、多くの音が束となって、聞こえてくる。

街の喧騒。

ヒカリやダリアさん達が、何かをする音。

などなど・・・


こうも静かだと、逆に仕事がはかどらないぞ。

慣れってフシギ。


「やめやめ、もう寝よう!!」


地図をしまって、ベッドへ寝転がる。

アイテムボックスにしまった寝間着に着替えれば、寝る準備は万端だ。

今日はゆっくり、ベッドでぬくまろう。

そうして居れば、じきに睡魔に襲われてくるだろう。

オヤスミ。


コンコン!


「・・・。」


またも戸をノックする音が・・・

屋敷でも、そうなのだ。

彼らは簡単には、寝かせてくれないらしい。

気だるそうに起き上がり、そのままの格好で返事をするカイト。


「失礼いたします、大公様にお客様が見えております。 お通しますか?」


「お客?」


こんな場所で、客が?

誰だろうと思っていると、間髪いれずに、室内に2人の小さな人影が入ってきた。


「お兄ちゃんヒドイ! また私のこと置いていった!!」


「逃がしはしませんよカイト殿様? 楽しいことをお1人でなさるなど、許しません。」


「うそぉ!??」


俺をビシッと指差し、あらん限りに抗議の声を上げるヒカリ。

そしてフフフフと、恐ろしい限りの笑みを漏らしてくるダリアさん。

彼女の転移で、やって来たのだろう。

ははは・・・マジかい。


「やー、ゴメンなヒカリ。 ちょっと時間に余裕が無くて。」


「むうぅ・・!」


むくれるヒカリ。

不機嫌な彼女は、それはそれで愛くるしい。

今はダリアさんが魔法を掛けてくれているようで、胸の魔石は隠れている。

ありがとう、ダリアさん。

・・・と彼女に感謝しようとしたが、そんなモノは必要ないらしかった。


「ところでカイト殿様、私は腹が減りました。 何かありませんか?」


「・・・何も食べてこなかったのかい?」


空きっ腹を抱え、食事を懇願してくるダリアさん。

彼女にしては珍しく、メシ抜きでここまで来たらしかった。

そう言われると俺も、なんだか腹が減ってきたな・・。


「すみません、食事をお願いできますか? 3人分。」


「かしこまりました、こちらへどうぞ。」


ずっと入り口付近に控えていたメイドさんに、夕食を頼むと、イヤな顔一つせずに、食堂の方へと案内してくれる。

急にお願いしたのに、この対処。

スゴイの一言に尽きる。

俺達のために、ありがとうございます。


食事を取るために、俺達3人は、食堂へと向かうのだった・・。


「ところでカイト殿様、その格好はどうしたのですか?」


「あ・・、イケね。 そのままだった。」


アブなく寝間着のままで、食堂に行くところだったよ。

カイトは体裁を正して、ヒカリたちを引き連れるのだった・・・




◇◇◇




「遅い・・・! 商隊の到着はまだなのか!??」


ちょうど同じ頃。

ベアル領内にある港町ボルタでは1人の男が、いきどおっていた。

血圧上昇を抑える薬の袋が、床に無造作に散らばる。


「申し訳ございません闇貴族様、かの商隊はシェラリータからの定期通信以降、音信不通でございまして・・・・。」


「ぐぬぬぬ・・・!」


部下からの素っ気無い報告に、さらに怒りを増長させる闇貴族こと、バルカン。

納品予定から、既に10日以上がすぎている。

いくらなんでも、遅すぎる!!


「うるせーな、テメーって奴は。 少しは黙れ。」


「これが悠長に構えていられますか!!?」


珍しく怒鳴り声を上げるバルカンに、闇大帝は肩をすくめる。

いつもは大きく構えているバルカンが、ここまで落ち着きがないのには、理由があった。

遅れている商品というのは、『密輸の奴隷』なのである。

人数は30人そこそこだったろうか?

脱税に未申告、他にも違法な箇所が、数多あまた存在する。

もしバレれば、奴隷を使った『不死の軍団』どころではない。


「つったって、音信不通なんだろう? もしかしたら、そこまで来てんのかも知れねぇわけだし、動かないほうがいいんじゃねーのか?」


「むうぅ・・・・!」


彼の言うことも、一理ある。

ここで変に行動を起こせば、逆に危険なのだ。

シュンと体を小さくする闇貴族。

調子を崩さず、高級茶をたしなむ闇大帝は、『それに』と会話を続ける。


「テメーは『ボルタ商会』のかしらだろう? そわそわせずに、ドンと構えてりゃ良いのさ。」


そうだ、ゆくゆくは私は、世界の富を我が手に治めるのだ。

それがこのような事で、どうする?

さすがは、闇大帝。

しがない一領主だった私とは、ふところの大きさが違う。


「・・・そうでしたな、申し訳ない。 闇大帝殿。」


「・・・フン!」


悪態をつき、そっぽを向く闇大帝。

長い期間を過ごしてきたことで、2人の間は良き、悪友となっていた。

これからも自己の権益を追い続けることには、変わりはないが。


「確かに来ないモノは仕方がありませんな。 今は出来る事を致しましょう。」


「ああ、そうしろ。 お前はうるさくてかなわん。」


これから、商会の仕事は格段にいそがしくなる。

奴隷に飲ませる薬物の手配、そして教育。

武器や魔石も、入り用になることだろう。

カモフラージュのため、ダミーの商店も設置した方がよいだろう。

そのためにも、早く奴隷が到着してほしいところではある。


「闇貴族様に、ご報告申し上げます!」


「どうした?」


息を切らせ、1人の男が室内へ入ってきた。

念のため、歩哨ほしょうに立たせていた者だ。

ここまで待たせたのだ。

やっと、商隊が到着したのかもしれない。

途端に上機嫌になる、バルカン。

しかし男の口から出てきたのは、それとは全く異なるモノだった。


「今すぐお逃げ下さい! ベアル領の警備兵団の輩が、血眼ちまなこになって、ここを探しています!!」


「な、何!??」

「なんだと!??」


報告に、目をむく闇トリオ。

表ざたになるような行動は、今までつつしんできたはずだ。

そう言いつつ、思い当たる節ならば湧くように出てくるのだが・・・

それでも、足をつかまれないようには、してきた。


いや、待てよ。

まさか・・・。

とても嫌な予感がする。


「例の商隊が魔物に襲撃を受け、警備兵団の奴らに調査されたようです!」


「ち、ちい! 最悪だ!!」


予定ルート上の魔の森は、多くの魔物が出没する。

危険なルートなので商人は通らないのだが、事情があり、そういうわけにもいかなかった。

今回は、それが裏目にでてしまったよう。

なんと、運が悪い。


「ええい撤退するぞ! 皆のもの、金品を纏めよ!!」


「それどころではありません! ともかく今は逃げましょう!!」


男数人に抱きかかえられる、バルカン。

闇大帝も、座っている椅子ごと、持ち上げられる。

街では兵士達が『ボルタ商会』を探しており、ここに辿り着くのは、時間の問題だ。

そのまえに、一刻も早くなるべく遠くへ、逃げなければならないのだ。

金は、置いて行くしかない。

それよりも今は、命が大切なのです。


「ま、待て! 金が、金がーーーーーーー!!!?」


「俺の利権は、どうなるんだーーーーーーー!!???」


闇トリオの絶叫を残し、闇夜へと消えていく彼ら。

兵士達が、もぬけの殻になった地下室になだれ込むのは、そのまもなくの事だった・・・・




最近、マナーの悪い鉄道ファンの話を聞きました。

同じ鉄道ファンとして、とても残念に思います。


ルールは守って、皆が気持ちよく、趣味は楽しもうではありませんか。

(誰に対してのコメントか、不明)

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