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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第11章 鉄道の延伸計画
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第259話・一連の報告

これからも、頑張っていきます。

ご感想などがございましたら、どんどんお寄せ下さい!

「・・・・痛いよアリア・・。」


「お兄ちゃん、よしよし。」


カイトです。

グレーツクから帰った途端、嫁から拳骨が飛んできました。

なんとなく避けてはならない気がして、彼女の鉄拳は、俺の顔の真ん中に衝突しました。

正直、けっこう痛いです。

ヒカリが、俺をなぐさめて足を撫でてくる。

頬まで、手が届かないようだ。

心がホッコリするけど、頬の痛みは晴れない。

赤くはれた頬を押さえ、アリアに抗議に似た眼差しを送る。


「今日のところは、これで勘弁して差し上げますわ。 二度はございませんので、肝に銘じてくださいませ。」


「・・・何の話さ?」


少なくとも今日、俺は後ろめたいことは何もしていない。

グレーツクには行ったが、それは彼女は知らないはず。

というか、やっぱり怒られるような事は、何もないけど。


「カイト様、後でこちらをお読み下さい。」


「えう・・・・何コレ?」


俺が治癒魔法を行使しようとすると、間髪居れずにアリアが、一冊の本を差し出してきた。

えーと『亜人全図鑑』?

亜人って、グレーツクのおっさんとか、獣人さんとかの事だよね?

なんだか、とっても分厚いな。

1000ページ以上はありそう。

これを、全部読めってか??


「カイト様におかれましては、もう少し見聞をお広め下さい。 でなくては、領主は務まりません。」


「ふ~ん?」


俺に拒否権は、ないらしい。

この領地には、多くの人種の方が住んでいるからな。

俺は未だこの世界で、知らないことの方が多い。

頑張って、読みましょう。

そのまえに、頬の治療をさせてもらう。


「亜人といえばさ、メルシェードは? まさか追い出してないよね??」


「ご安心下さい、彼女ならば今ごろ、クレアの元で精進いたしていることでしょう。 教養もあるようですし、良き使用人となってくれそうですわ。」


「それは良かった。」


俺が拾ってきたフサフサ耳の獣人女性は、はれて屋敷の一員となったらしい。

善良な人だったようだし、俺としては彼女の願いがかなって良かったという他ない。

クレアさんの下で指導、という事は彼女は、メイドになるのだろうか?


「フフフ・・・」


「・・・何?」


アリアが、俺に向かって黒い笑みを浮かべる。

なんか知らんが、怖いよ。


「何でもございません、それよりバルアはどうでしたか?」


石神様いわがみさまなら、地図にあるとおりの場所に送り届けたよ。 半月ぐらいかかるってさ。」


ホッと安堵のため息をもらす彼女。

鉄道の燃料確保に関する、重要なことであるからな。

重くのしかかっていた肩の荷が、下りた感じなのだろう。


「それはご足労を、お掛け致しました。」


「いやいや。」


先ほど拳骨をとばしてきたのとは、まるで別人だ。

いつもこうなら、可愛いのに。

いや・・・それじゃアリアじゃないか。


「ヒカリ、カイト様はどうでしたか??」


「アリア!??」


しまった、まだヒカリには口止めしていません!

アリアにしてやられた。

ヒカリ、どうか余計なことは言わないで頂戴!!


「うーんとね、地図を逆さまに見ていて、もう少しで20キロ離れたところに案内するところだったって・・・」


「・・・・カイト様。」


ヒカリ、それ言っちゃアカン!!

ああ、アリアが死んだ魚のような視線を、こちらに向けて来てるよ・・。

俺はここで死ぬんだろうか・・・。


「他には、ありませんか?」


「うーん、無い。」


グレーツクに関しては、黙秘してくれるよう。

ありがとう。

でも前者の方が、どちらかといえば黙秘してほしい内容だったな。

いまさら、遅いけど。


「ちゃんと最終的に、案内はしたよ。」


「それならば良いのですが?」


笑顔だけど、アリアの顔が笑っていない。

アブない事して、申し訳ないです。


「あまり肝を冷やすようなことは、自重してください。」


「ごめんなさい、以後気をつけます。」


地図の表示方式を変えよう。

方位とか都市名とかを書き込んで、現在位置を分かりやすくする工夫が必要だ。

いつか、そのうちに。

『それから・・・』と、話を付け足す彼女。


「実はカイト様、事後承諾となってしまうのですが・・・」


「ん、何?」


一転、アリアが謝罪をしてくる。

彼女がこんな態度をとるなど、珍しいこともあるものだ。

別にどんなことであっても、俺は気にしない。

アリアに何事も無いなら、俺はどんな事であっても、大きな心で受け止めよう!

・・・と言うセリフを、ドラマかなんかで昔、見た気がする。

うん、クサすぎ。

俺は俺の懐で、受け止められる範囲で受け止めてあげよう。


「実は、カイト様のお傍に・・・」


「申し訳ございません奥様、緊急でお耳に入れたき事柄が・・・!!」


アリアが途中まで言葉を発したところで、後ろから騎士さんが会話に割って入ってきた。

どうしたのだろうか?


「なんですか、今はカイト様とのお話の途中ですよ?」


「申し訳ございません、実は例の件なのですが・・・」


周りに聞こえないための配慮か、アリアに耳打ちをする彼。

みるみる内に、アリアの顔色が変わっていくのが見て取れた。

コレは、あまり良くない兆候だ。


「どうしたんだい、アリア・・・?」


「申し訳ございませんカイト様。 少々、席を外させていただきます!!」


話が済むと、彼女はたたずまいを正して後、脱兎のごとく屋敷の奥へと引っ込んだ。

あんなに取り乱す彼女は、とても珍しい。

しかし事情を聞こうにも、騎士さんまで一緒に行ってしまった。

俺は行かなくて大丈夫なのだろうか?


「ねぇお兄ちゃん、汗かいた。 おフロ入りたい。」


「あぁそっか、ゴメンゴメン。 俺の部屋に行こうか。」


俺とヒカリは、帰ってから着替えすらしていない。

特に彼女はグレーツクで働いたので、どっと汗をかいたことだろう。

労働のあとはフロで汗を流し、あらゆる原動力となるメシを食う。

これ基本。


とりあえず今のところは、ゆっくりさせていただく事にした。




◇◇◇




「調べましたところ、奴隷の商隊に関わる届け出は、ありませんでした。」


「やはりですか・・・。」


街の警備兵団の面々を前にして、一考するアリア。

彼らに調べさせていたのは、メルシェードが連れられていたと言う、奴隷の商隊について。

走っていた場所から見て、目的地は間違いなく、ベアル領方面。

我が領を通過する以上、商人は積荷等に応じた『税金』を治めるようになっています。


ようするに私たちが把握していない商取引など、無いはずなのです。

まして積荷は、最近やっと解禁になった奴隷の取引。

ここから考えられる、このナゾの商隊の存在は。


「奥様、これは間違いなく密輸でございます。」


「ええ、発展というモノは光が大きくなると共に、闇を育てるのですね。」


この領地でも、とうとう密輸が・・・

残念です。

ですがこれは、王都などでも同じこと。

住む人間が多くなれば、これは避けられぬ事態と言えます。

問題は、なぜ奴隷を、密輸したのか?

単なる脱税のためなのか、あるいは他の思惑があるのか・・・・


「この商隊の目的地は、何か分かりましたか?」


「大公様からのご報告の場所に、多くの馬車の残骸が見つかりました。 目的地の商会についても、既に特定されております。」


「分かりました、ただちに逮捕して下さい! 決して逃がしたり、殺すことのないように!!」


「「「了解!!」」」


こういった事には、大きな闇が存在している事が多いモノ。

これを期に、一網打尽にしてしまいます。


疑わしきは検挙、これが領内の平和の鉄則です!!




ちなみにですが、こういった検察的な指示はフツウ、カイトなどの領主が行うものです。

今さらですが。

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