表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第11章 鉄道の延伸計画
274/361

第256話・隣にいれば

これからも、頑張っていきます。

感想などがありましたら、どんどんお寄せ下さい!

「アリアは、行かないのかい?」


「申し訳ございません、メルシェードの件など、整理しなければならないことが多くあるので、私はベアルに残ります。」


何度かの念押しをすると、仏像を抱えたカイト様は、転移でバルアへと向かわれました。

これから仏像・・もとい石神様いわがまさまに、鉄道の燃料にする魔石の鉱脈を作っていただくのです。

バルアの採掘予定地の地図は、カイト様にお渡ししてあるので、特に問題は無いでしょう。


「あの獣人の女性は、今どこにいますか?」


「客間に通しています。」


さて、私には私の仕事があります。

メルシェードという名の、元奴隷だったらしい女性の処遇についてです。

どうやら私がグレーツクへ行っている間に、カイト様が道中で拾ったよう。

一体、道中で何があったのか、実にフシギです。


「いつものことですけどね・・・」


ヤレヤレと、ため息をつくアリア。

このような事は、これで何度目だろうか。

仕事を、次から次に増やさないでほしい。


「・・・・!」


目的地の客間へ足を踏み入れると、まず真っ先に目に飛び込んできたのは、床に額をこすりつけてひざまずく女性。

頭の上のピンと立った犬のような耳が、彼女の精神状態を顕著に表しています。

最初からこれでは、話を進めるのは難航しそうですわね・・。


「クレア、あなたは私たちのお茶の用意を。 少し多めにお願いしますわ。」


「かしこまりました。」


一礼して、退室するクレア。

部屋の戸が閉められると、室内は私と彼女の、2人だけになります。

彼女は、ピクリとも動きません。


「私はアリア・スズキと申します。 カイト様から話は聞き及んでおります、あなたがメルシェードですね?」


「は・・・はい。」


消え入りそうな声で、メルシェードと名乗る女性は肯定の意を表します。

こうして見ると、彼女は成人のようです。

獣人ということは、これまで奴隷として、良い人生は歩めてこなかったことでしょう。

彼女のこの態度も、うなづけはします。

ですが、せめて頭を上げていただきたいです。

これでは、話がしにくいですよ。


「どうか、顔を上げて下さい。 私はあなたと、ゆっくり話がしたいのです。」


「もったいなき言葉です。 ですが私は、事もあろうに大公様に失礼を働いてしまいました。 どうか、このままで・・・・」


恐縮しきりといった態度の彼女。

カイト様は一体、この女性に何をしたのでしょうか?

追々、彼女に聞いてみるとしましょう。

なおも、床へ跪いた姿勢のままの彼女。

このままでは、ラチが明きません。

最初だけ、強硬姿勢をとらせていただきましょう。


「メルシェードさん、では顔を上げて下さい。 私の願いを、聞いてくれますね?」


「は、はい! 命令とあらば・・・。」


恐る恐ると言った風で、顔を上げて、私と視線を合わせる。

び・・美人・・・。

少し汚れてはいますが、彼女の顔立ちはとても整っています。

ルルアムお姉さまとはまた違った、純朴な美しさと表現できましょうか・・・

改めて思いますが、カイト様は面食いなのでしょうか?

私はさておき、お姉さまを始めとして、彼の周りの女性の美人率がハンパない気がするのですが・・・。


今は関係ないので、横においておきましょう。

先ほどの調子を崩さず、彼女をソファへ案内します。


「どうぞメルシェードさん、あなたはこちらへ。」


「し、失礼・・・します。」


低い机を挟んで、向かい合う形になる2人。


「「・・・・。」」


ガチガチです。

極度の緊張で、彼女の顔が引きつっています。

話がしたくても、今のままでは話を聞き漏らしてしまう恐れが・・。

元の立場が立場なだけに、こうなってしまうのは仕方が無いのですが。


こういった場合、カイト様ならばどうするでしょうか?

『彼が隣にいれば・・・』そんな事を考えながら、アリアは1人、メルシェードとの対談に臨んだ。




◇◇◇





『ここで、本当に良いのだな?』


「お願いします。」


アリアが頭を悩ませていた、ちょうどその頃。

カイトと仏像は、バルアで押し問答を繰り広げていた。

仏像さんが、カイトの言うことを、なかなか聞いてくれないのである。


『本当に間違いはないのだろうな? 言っておくが、間違えていてもワシは知らないぞ??』


「アリアから地図はもらってます、寸分の違いもありません!」


先ほどから、仏像さんがしつこい。

前に『魔石の鉱脈を造ってやる』と言った仏像さんに、鉱脈の最適地へと案内したカイト。

アリアたちが長い時間を掛けて、選定した場所。

だが彼は『本当にここなんだろうな、間違えていてもワシは関係ないからな』と連発する。

アリアと何があったかは知らないが、少しは俺を信用してほしい。

少なくとも、俺は方向音痴ではないぞ。


『知らんからな? 苦情は受け付けんぞ。』


「分かってますって、何かあったら、俺が全部の責任を取りますから。」


間違いなく、場所はここで合っているのだ。

地図が狂っていない限り、まず間違いなし!


「お兄ちゃん、その地図、反対じゃない?」


「え・・・・?」


顔を覗かせてきたヒカリが、恐ろしいことを指摘してきた。

うっそ、これ反対??

何度かクルクル地図を両手で回転させ、現在の位置をもう一度、把握するカイト。

そして・・・


「あ、しまった。 これじゃ東西が逆だ。」


ヒカリの指摘どおり、俺は上下逆さまに地図を読んでいた。

東西南北、すべて逆。

あっはっはっはは。

いやー、アブなかった。

指摘されなかったら、20キロも違う場所に、魔石の採掘場所を頼むところだったよ。


「ありがとうヒカリ! もう少しで大きな過ちを犯すところだったよ。」


「うん。」


大丈夫。

まだ何も始まっていないから、いくらでも取り返しがつく。

3人寄れば文殊もんじゅの知恵って本当だね。


「すみません石神様、もうすこし西みたいです。」


『ナニ!?? 貴様は地図すら読めぬのか!』


呆れ口調で、仏像が大きな声を上げる。

人聞きが悪いな・・・

ちょっと見間違えただけじゃないか。

地球のと違って、文字や方位とかの特徴が無くて、上下とかが分かりにくいんだよ。


『ワシにも地図を見せよ、貴様は信用ならん!!』


「大丈夫ですよ、今度こそ間違いないですって!」


『つべこべ言うな小僧! さっさと地図を渡すのだ!!』


どうせ石神様に地図を見せても、何にもならない。

結局は俺が全て説明する事になるのだ。

俺は口下手なので、そこそこ時間がかかるだろう。

そんな無駄、しても意味が無い。


こういった場合、アリアなら分かりやすく説明出来るんだろうな・・・・

いや、そもそも地図を見間違えたりはしないよね。

『彼女が隣にいれば・・・』そんな事を考えながら、カイトは石神様との押し問答を続けるのだった。



夫婦、二人三脚?

・・・な回でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ