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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第11章 鉄道の延伸計画
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第255話・幸せなひと時

これからも、がんばっていきます。

感想などがありましたら、どんどんお寄せください!

「カイト様、お茶が入りました。」


「どうもありがとう。」


ルルアムがれて来てくれたお茶を、美味そうにすするカイト。

横に、アリアの姿はない。

どうやら彼女はグレーツクに居る間に、石神様いわがみさまと魔石の話をしたらしい。

話が通りやすくするためにと、アリアは単独で神社へと向かった。

つまり今度は、俺が研究所に残されるという形となる。


「俺のせいで、大変ご迷惑お掛けしました。」


「いえいえ、アリアとゆっくり話が出来て、とても楽しかったですよ? まるで昔を思い出すようでした。」


「それは良かった。」


ルルアムとアリアを引き会わせた、一番の目的がソレだった。

目的を達することが出来たことが、せめてもの不幸中の幸いだ。

・・・それで俺がアリアを、グレーツクへ置き去りにした事は、とても帳消しにはならないけれど。


「カイト様が居なくなってから・・・アリア、結構大変だったんですよ?」


「・・・・そっか」


相当に、怒っっていたろうな。

目を閉じれば、その光景が浮かぶようだ。

おっさん達にも迷惑を掛けてしまったことだろう。

今度会ったときには、謝らなければいけない。

お酒を持っていったら、喜ぶだろうか?


「カイト様にお聞きしたい事があるのですが・・・」


「何? 何でも聞いて。」


ルルアムの淹れてくれた美味しいお茶を楽しみながら、彼女の質問を待つカイト。

最近こうして、俺におくすることなく対応してくれて、素直に嬉しい。

彼女のことは信頼しているし、答えられる範囲なら、何でも聞いてほしい。


「私のような者が聞くのもおこがましいかと思うのですが、カイト様はアリアを愛しておりますよね?」


「げぶほっ!?? どどど、どうしてそんなこと聞くの!!?」


思わず、むせてしまった。

彼女がこのような私事を聞くなんて、珍しいこともあるものだ。

しかし改めて聞かれると恥ずかしいな・・・

でも俺は、日ごろからの気持ちを、ルルアムに聞かせることにする。


「もちろんアリアは大好きだよ。」


怒ると怖いけど。

せっかくキレイなのだから、彼女にはいつも笑っていてほしい。

そのためにも、なるべく怒られるような事はしないよう、善処しよう。


「良かった・・・。」


「急にどうしたんだい? ルルアムがそんな事を聞いてくるなんて。」


ホッと胸をなでおろすルルアムに、カイトが苦笑をもらす。

日ごろ鉄道作りなどに骨身を削ってくれている彼女だが、こういう側面を見ると一丁前に彼女もフツーの女性なんだなと感じる。


「カイト様が行ってしまわれた夜・・・アリアはカイト様が自分を置いて行ったのは、邪魔だからなのではないか、もう私は彼の足手まといにしかならないのではないかと・・・」


「アリアが!? そんな訳が無いじゃないか!!」


冗談ではない。

俺がアリアを邪魔に思うだと?

そんなバチあたりな事をするはずが無い。

無能な俺を、愛想つかしたアリアが邪魔に思うならまだしも。


「それは分かっております。 ですがアリアの抱いた不安は、日を追うごとに増すばかりで・・・」


「『心配』って、そういう事だったのか・・・。」


ここに俺が着いたとき、アリアに言われた言葉。

自分が置いていかれ、不必要になってしまったではという、不安感情から湧くモノだったとは。

まったく想像できていなかった・・・

俺ってば、そういうのを読むのは本当に苦手だ。


「アリアに、本当に悪いことをしちゃったな・・・。」


何年も連れ添った、妻一人の感情すら分からないとは。

いやスキルで心の中を覗くことはできるけど、そんな事は怖くて、とても出来ない。

なにより何でも魔法頼りというのは、良くないと思う。


「アリアは、見かけによらずとても寂しがり屋なんです。 私がこのような事を言うのは、おかしいと思うのですが、どうか出来うる限り、アリアの傍に居てあげて下さい。」


「アリアが・・・。」


ちょっと・・いや、かなり意外だ。

アリアが寂しがり屋とは。

しかしこうして思い返すと、思い当たる節々の数々があるような、無いような・・・

彼女が言うことが本当だとすると、今まで用事で俺が出かけるという事も、彼女にとってはかなりの負担になっていたのではないか・・・

最悪だ。

とんだ夫婦だな、俺たちって。


「はああぁぁあ~~~・・・。」


大きくため息をつき、反省するカイト。

ようするに彼女は、今まで我慢していたのだろう。

今度からはヒカリ同様、必ず連れて行くという風にするか。

いや、それだと『私には仕事があります』とか言って、付いて来ないよな・・・

本人をどう言いくるめるかが、目下の問題となるだろう。

どうしてくれようか?


「フフ・・カイト様は本当にアリアの事を大切にしているのですね。」


「もちろん。」


『彼女のおかげ』という部分は、数知れず。

アリアには感謝しても仕切れない。

俺にできる範囲なら、彼女の願いはかなえてやりたい。

そうだ今度、彼女に休暇をあげるというのはどうだろう!?

いや、もらってくれないかな・・・。


「ご心配には及びません、アリアには帰宅の際にご自分の存在を示して差し上げれば、安心しますので。」


俺の存在をアリアに・・・か。

何をしたらいいか、思い浮かばないな。


「・・・具体的に何をすれば良い?」


「難しいことではありません、しかと抱いて差し上げれば。」


笑顔を浮かべ、ルルアムはそれだけを言った。

だ、抱くの・・・?

何ソレ、なんだか外国っぽい。

テレビでだけ、見たことがある。

恥ずかしくて、実際に俺なんかが出来るか心配だ。


「・・・頑張ってみるよ。」


「アリアは、幸せですね。」


2人はアリアが戻ってくるまでの間、もう少し『お茶の時間』を楽しむことにするのだった・・・




◇◇◇



西日が森へ隠れ、夜の闇にベアルが包まれ始めた頃。

領主夫妻が街のメインストリートを仲睦まじく歩んでいた。


「お姉さまとは、どういった話をなさっていたのですか?」


「うん・・・大したことじゃないさ。」


あれからすぐ、アリアは仏像・・・

もとい石神様いわがみさまを連れ、戻ってきた。

少しアリアとは話がしたかったので、転移の座標はベアルの街の外れにした。

もう夕方なので、バルアに行くのはまた明日になるだろう。

俺たちに気を利かせてくれているのか、石神様は何もしゃべらない。


「アリアはどうだった、ルルアムとは話せたかい?」


「ええ、おかげさまで。 カイト様の方も、鉄道の地盤調査はいかがでしたか?」


「特に何も。 問題なく鉄道を敷けそうだよ。」


その件は、そもそも俺がアリアを置いて行ってしまった発端である。

おかげさまでというか・・・地盤調査は滞りなく終了した。

屋敷に帰った後に、少し整理はしなければならないが、そう時間がかかるモノでもない。

後は鉄道の敷設工事を始めるだけだ。


そういえば、もう一つ報告しなければならない事があったっけ・・・

屋敷に帰り着く前に、話しておかねば危険だ。

これは地雷である。


「実はアリア、その地盤調査中にちょっとした事件があってさ・・・」


「はい? あなたはまた・・・心臓に悪いですので、少しは自重して下さいませ。」


「ごめん。」


大きくため息をつく彼女。

俺は特にアブない目には遭っていないが、それは結果論。

もし目論見もくろみどおり魔族に会えていたとして、無事だったかどうかは不透明のままだ。

ヒカリでさえ、あの強さなのだし。


「それで、今度は何をやらかしたのですか? 正直に申して下さいませ。」


「えぇっと、シェラリータを出た後だったんだけど・・・」


3体のブタみたいな魔物に襲われている、奴隷の商隊を見つけたこと。

ただ一人の生き残りだった獣人の女性を救ったこと。

紆余曲折あって、屋敷に連れ帰ったこと、などなど・・・

屋敷に着くまでの間、カイトの弁解は続いた。



鉄道から、話がそれがちです・・。

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