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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第11章 鉄道の延伸計画
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第254話・妻を迎えに・・・

これからも、頑張っていきます。

感想などがありましたら、どんどんお寄せ下さい!

グレーツクの一角に現れた青い光と共に、白服の青年が転移してきた。

彼はここの領主であり、国王。

彼はベアルという土地を本拠にしているため、この土地にはこうして定期的に、転移を使って訪れているのだ。

こういう場合、普通であれば何人かの従者を連れているものだが、彼の傍らには誰も居ない。


「はあ・・・気が重いな~~。」


大きくため息をつき、重い足を引きづる。

先日、魔石関連でグレーツクへとやって来たカイト。

しかしその時はタイミング悪く、街を上げた祭りの真っ最中であり、祭りが終わるまでと、街を離れることを余儀なくされた。

その際、諸都合で連れて来ていた妻であるアリアの事を、失念してしまっていたのだ。


ざっと説明をすると、愛妻を1人で、グレーツクに置き去りにしてしまったのである。

ベアルからグレーツクまでの行程を考えると、彼女が既にってしまっている確率は、まずない。

屋敷に帰ってようやく、この事に気がつき、彼女を迎えに来たというわけだ。

恐らくアリアが居るであろう鉄道研究所に、今は向かっているのだが・・・


「怒ってるよな、きっと。」


置き去りにした期間、おおよそ3日半。

この街はいい人ばかりだし、そもそもルルアムと一緒だったはずなので、安全面は心配ない。

あの時に置いて行ったのだって、良い感じにいっている2人の邪魔をしたくないからだった。

だが置き去りにしてしまったのは、紛れもない事実。

せめて声を掛けてから行くべきだったと思うが、今さら後の祭りであろう。


「お、小僧じゃねぇか。 こんなところで何やっているんだ??」


「あ・・皆さん・・。」


声を掛けてきたのは、グレーツクに住むドワーフさん一行。

鉄道研究所で働いてくれている人たちだ。

顔が赤いところを見ると、酒で飲んできたのだろうか?

うらやましい・・・


「こんにちは、良い天気ですね。」


「なんだその、定型的なつまらん挨拶は。 もっと気の利いた挨拶は出来ねえのか??」


『ははは』と乾いた笑みを漏らすカイト。

おっさん達は、相変わらずのようだ。

今はそんな心境ではないので、勘弁してほしい。

はあ・・・とため息をついて、肩の力を抜く。


「おう、何しなびたモヤシみたいになっているんだ、小僧?」

「とうとう領民に見放されたか?」


「ははは・・・もしかしたら、そうなるのかもしれません・・・」


まだ確定ではないが、きっと彼女はスゴイ剣幕だろう。

現状で彼女に見放されれば、ベアルやグレーツクはどうなる事やら。

想像に難くはない気がした。

俺なんかに、責任が取れるか心配。


「・・・何かあったのか?」


「俺の奥様がちょっと・・・そうだ! アリアを知りませんか!? おたくの研究所に居るはずなんですけど!!」


空けた期間は3日間。

その間に一度くらい、彼らは研究所に足を踏み入れたはず!

今、アリアがどうしているのかを知っているかもしれない。


「『ありあ』ってのは、地震の時にお前の横に居た別嬪べっぴんさんの事か?」

「ああ、そういえばこの数日間、ルルアムと一緒に赤毛の女が居たっけな。」


ええ、間違いありません。

その人がアリアです。

彼女がどのようにしていたか、お聞かせ願いたい。

そして、心の準備をしておきたい。


「あー、どうしていたっけな?」

「んーーーーーー。」


「「「・・・・・・・・・。」」」


「あ、そういえば・・・」


酒が回っているせいか、思い出すのに時間がかかった。

自分で聞いておいてなんだが、聞くのが怖くなってきた。

事件化していない事を、望みます。


「小僧。」


「はい!」


何を言われても関係ない。

どんな結果が待っていようと、俺は妻を迎えに行くのだ!!

うう、でもやっぱり怖いよぅ・・・。


「早く研究所に行け。」


「はい・・・?」


「耳が遠いのかテメエは!? さっさと研究所に行けって言ってるんだよ!!」


「ご、ごめんなさいーーーー!!???」


突如、おっさん達に怒鳴られたカイトは、脱兎のごとく研究所へと向かう。

どうして怒られたのか。

嫌な予感しかしない・・・・



◇◇◇



「思ったより近かったな・・・」


おっさん達に怒鳴られて以後、全力で研究所へ走ったカイト。

おかげでか知らないが、研究所にはあっという間に着いてしまった。

研究所の建物が、いつにも増して大きく見えるのは気のせいか?


「ガロフさん達のあの反応、そういう事なんだろうな・・・」


この研究所に居るはずのアリアの近況を聞いた途端、彼らに早く行くよう怒鳴られた。

メチャメチャ不吉だ。

恐らくは、アリアの怒りで、この研究所が揺れに揺れまくったのだろう。

彼らは俺に、『早くこの事態を収めろ』と言いたかったに違いない。

ウチの者がご迷惑を、お掛けしました。

・・・・いや、そもそも俺のせいでしたっけ。


「最初にアリアに会ったら、まずは謝るか。」


入った後のシミュレートを、脳内で試みる。

まずは渾身のスライディング土下座。

平伏低頭のままで、謝罪をする。

手足の何本かは、覚悟しておいたほうがよかろう。

地震が治まるまで、治癒魔法を使うのは禁止。


まだアリアに会う心構えが出来ていないのだが・・・

否!!

俺は妻を迎えに来たのだ。

先延ばしにして、どうなる!?

自分に発破を掛けて、重い研究所のドアを開ける。


「お邪魔します、アリアは・・・あ。」


ドアをくぐった瞬間、廊下の先に居るアリアと目が合う。

ハンカチで手を拭いているところをみると、お手洗いに行っていたのかな?

いつもながら、タイミングが良いな。

遠目でよく見えないが、あちらも俺を見て驚いている様子。

とりあえず無事のようで、ホッとした。


「・・・アリア。」


俺が声を掛けた瞬間、彼女は俺から視線を外してそのまま行ってしまう。

俺なんか、居ない風を装っているのが分かる。


「待ってアリア! 置いて行かないで、俺が悪かった!!」


どっかのホームドラマのワンシーンでも使われていそうな台詞せりふを吐いて、アリアの左手をつかむカイト。

振り向いた彼女は、プクッと頬を膨らませて俺を睨んでくる。

これはこれで可愛い顔だが、背後に立ち上る怒りの炎で、そんな考えは瞬時に霧散する。

この状況下で最初に、彼の頭に浮かんだ彼女に掛ける言葉は一つ。


「ごめんなさい!!」


「・・・・何がですか?」


アリアは俺に、冷たい視線を送ってくる。

弁解はしません。


「置いて行って悪かったと思ってます。 申し訳ございませんでした!!」


「私が一体、どういう思いでグレーツクに残されたのか、それをよく考えてくださいませ!!」


「ほ、本当に、ごめんなさい・・・!」


怒鳴るように、アリアが俺を叱責する。

黙って、鉄道の地盤調査に行ってしまったものな。

怒られて、当然のことだろう。

先ほどの大きな声を聞きつけてか、ルルアムが扉を開けて出てくると、俺たちの経過を見守る。


「本当に、本当に心配したんですからね・・・・!」


ダムが決壊するように、アリアの目からボロボロと涙が零れ落ちていく。

特に怒られることは無く、終始心配されていた事を思い知らされた。


「置いて行ってゴメン。 さあ、ウチに帰ろう。」


ベアルには、皆が待っている。

早くベアルに帰ろうか、アリア。



今日は、ウチから遠いような近いような場所で、春一番が吹いたそうです。

でもまた明日から、寒くなるそうです。

皆さんも体調管理には十分、気をつけてくださいね。

私も気をつけます・・・

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