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オタクはチートを望まない  作者: 福島 まゆ
第11章 鉄道の延伸計画
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第253話・新たな仲間?

これからも、頑張っていきます。

感想などがありましたら、どんどんお寄せ下さい!

「カイト殿様、まだ探索をしているのですか? 早くしないと置いて行きますよ!?」


「待てよダリアさん、記録と平行作業なんだから、早くしても精度が落ちちゃ、意味がないだろう??」


「むー。じれったいですね~~!!」


ダリアさんは仁王立ちして、俺たちが追いつくのを待つ。

少し進んでは『早く、早く』と急かしてくる。

先ほどまで『疲れた』とプログラムされたロボットように、同じ言葉を連発していた彼女は、今は目を見張るように活動的だ。

表情からはどこか、余裕を感じる。


「ダリアさん、ご機嫌だね。」


「ふっふ~、今の私ならば、カイト殿様にも負けはしませんよ?」


そうかい、元気で何より。

でも勝負は、また今度にお預けね。

昼食以後、彼女はずっとこの調子だ。

見るからに肌はツヤツヤだし、精力に満ちあふれているし・・・・

まったく、何を食ってきたのやら。


「昼ごはんは、おいしかったかい?」


「ええ、なかなかあのような美味なるものは、そこらにはりません。 とても運が良かったです。」


恍惚こうこつの表情を浮かべながら、ダリアさんはやれ良き魔力の味がしただの、活きが非常に良かっただのと、説明を続ける。

やはり自然素材は、美味かったらしい。

苦笑を浮かべながらカイトは、それを聞きつつ地盤調査を続ける。

結局『魔族』とやらに遭遇することはなかったのが、俺の唯一の心残りだ。

まあ、こればっかりは時の運だし、シェラリータであったのはただの『目撃情報』だった訳だし。

だがしかし・・・とため息が漏れてしまう。

ここで何を思ったのか、慌てた様子でダリアさんが弁解し始めた。


「も、もちろん『いただきます』『ごちそうさま』は忘れておりません! 食材も骨の一片も残さず、完食致しましてございます!!」


「・・・・そう。」


俺が漏らした溜め息を、誤解したらしい。

『お残しダメ』と言いはしたが、まさか骨まで食い尽くすとはね。

俺には到底出来そうにない芸当である。

そこはさすがは、ダリアさんと言ったところか?

特に気にしては居なかったのだが、まあ、言いつけを守ってくれてありがとう。

いい返答を思いつかないので、せめて目一杯の笑顔を返してやる。


「そうだカイト殿様、お背中の2人をぜひ我が背中へ!! その方が『地盤調査』とやらに集中できるのではないですか!?」


「ええ!? いいよそんな・・・!」


どうせ後で『借りを返せ』とか言って、決闘を申し込む口実にする気なのだろう。

悪いがそんな見え透いた罠にかかる気は、毛頭ない。


「そのような事はいたしません! 決闘は正々堂々、お互い時間のある時に申し込ませていただきます!!」


「・・・・だから、心を読むなって。」


屈託のない笑顔をこちらへ向け、背中を差し出してくるダリアさん。

面倒くさい。

本人がヤル気なのだから、やらせてみようではないか。

ベアルまで、そう遠くはないし。


「じゃあダリアさん、よろしくね・・・。」


「私、歩く!!」


「「え・・・・?」」


背中の2人を下ろして、ダリアさんに引き継ごうとしたら、ヒカリが声を上げた。

自分が荷物になるのが、イヤという事だろうか?

まあ、それも良いか。

ベアルまで、そう遠くはないし。


「・・・という訳でダリアさん、このお客さんだけ、頼むよ。」


「はい!!」


獣人の方はダリアさんに預け、ヒカリとははぐれないように手をつないで、一行はベアルへとひた進む・・・




◇◇◇




「やーカイト殿様、着きましたね!!」


「はは、そうだね。」


ダリアさんのテンションが異様に高いまま。

一行はベアルの街の門をくぐった。

通過する時に門番の人、スゴイ驚いていたな・・・

何かを聞こうとして、ずっと口をパクパクさせていたっけ。

はっはっは。


「調査は済みましたか?」


「ああ、バッチリ。 これもダリアさんのおかげさ。」


ダリアさんが獣人さんを引き受けたおかげで負担が減り、より早くより正確に測定できた。

距離は短いが、とても感謝している。


「思う存分感謝して下さい! なんならあがたてまつっていただいてもかまいませんよ?」


「ははは・・。」


あまり調子に乗らないでほしい。

昨日までの2日、俺の背中でグッタリしていたのは、誰であるか?

それを思い出してくれ。


「お兄ちゃん、屋敷はこっちだよ??」


「いや、まずはこっちに用事があるんだ。」


「?」


門をくぐった俺たちは、屋敷とは反対の方向に歩いている。

向かっているのは、この街の市役所のような場所だ。

この街の警備兵団の人たちが運営しており、住民登録などを行う。

今連れている獣人の女性の身分証明証を、ここで作ろうというわけだ。

ここでは同時に職の斡旋あっせんも行っているので、アフターケアもバッチリ。

そういえば結局、この人の名前を聞けてなかったな・・・


「さ、着いたよ。 ここが君の目的地。」


「私の・・・・?」


ベアルはそれ程大きな街ではないので、ものの数分で目的地に到着した。

このような役所は、他の領には無いらしいので、それで驚いているのだろう。


「心配しないで、中に入って『住民登録したい』と言えば、すぐに話が通るようになっているから。」


「・・・。」


建物の入り口を指し示すカイト。

これで俺がこの人に出来ることは、全て終った。

隷属契約書もあのときに燃やしてしまったし、この人を縛るモノは何も無い。

これからは、どうか自由に生きてほしい。


「この街でもどこでも良いから、頑張ってね?」


「・・ま、待って! あの・・・」


「ん?」


この場を離れようとすると、獣人女性がそれを呼び止める。

まだ何かあったろうか?

・・・・あ。


「ごめんごめん、枷がそのままだったね。 すぐに外してあげるよ。」


ウッカリしていた。

これがあると、奴隷と分かって何かと不利になると言っていたっけ。

バカだなー俺は。

なぜ今まで、気がつかなかったのだろう?


「え、でもこの枷は特殊加工がされていて、どんな方法でも外せないと・・・」


バキン!!


「おし終了。 痛くなかった?」


「・・・。」


真っ二つにされた奴隷の証である枷が、彼女の足元に転がる。

今は残骸となり、原型はとどめていない。

なるほど、外せないなら力づくで壊せば良かったのか・・・

いや、そもそもコレは、そんなに簡単なものだったろうか・・・?


「じゃあ今度こそ、俺はこれで。 困ったことがあったらいつでも、ウチを訪ねてくるといいよ。」


「ま、待ってください! 私、メルシェードって言います。 まだ困っていませんけど、どうか私をご一緒に連れて行ってはくれませんか? きっとお役に立ちます!!」


再び呼び止められ、顔を赤らめながら何かを訴える彼女。

何これ、告白?

いや、どう考えても違うよな。


「・・・えーっと、つまり、どういう事?」


「ほほう、これはまた数奇な・・。」

「?」(ヒカリ)


頭に疑問符を浮かべ、カイトは説明を求めた。

彼はまた、一種の『病気』を振りまいたようである・・・



◇◇◇



「そっか、俺の屋敷で働きたいと言っていたのか。 まーこればっかりは、メイド長のクレアさんに聞かないとねぇー。」


「ご、ご迷惑おかけします・・・。」


俺の隣にいる獣人の女性。

名前を『メルシェード』と言うらしい。

森で魔物に襲われているところを拾い、現在に至る。

どうやら俺の屋敷で、ダリアさんのように働きたいらしい。

俺を貴族と見込んで、安定狙いでこんな事を言い出したのだろう。

見た目に反して、ハングリーな人だ。


「カイト殿様、なぜこの者を屋敷に置くのに、クレア様のご許可が必要なのですか?」


「何を言っているんだよダリアさん。 ウチの屋敷の中で働いている中で一番偉いのは、クレアさんじゃないか。」


クレアさんは、王宮から付いて来た、有能なメイドさんだ。

俺の屋敷では、使用人の取りまとめ役を買って出ている。

いわば社長。

彼女の許可なしに、新しい使用人は雇えない。


「カイト殿様は、その使用人を使う立場に居るのでは?」


「いや、この際それは関係ないでしょう?」


「・・・。」


関係、大アリである。

カイトは屋敷の中で一番上の立場に居る人間である。

クレアさんが社長なら、カイトは大統領。

少なくともこの領内では彼こそ法であり、秩序なのだ!!

文字通りの意味で。

カイト大公様は、露ぞ、そのような考えを持っては居ないようだが。


「さて着いたよ、ここがウチ。」


「ここが、ですか・・・」


ベアルの街のど真ん中に居を構えるその豪邸に、彼女は感嘆の声を漏らす。

本当は小さい方が落ち着いてよかったのだが、この領に来たときにあった住めそうな建物が、半壊した前領主様宅のここしか無かったのだ。

今さら建て直すのは勿体無もったいないので、恐らくこの先もここが俺の家だろう。

この建物、結構頑丈そうだし。


「ただいまー。」


彼の帰宅を知らせる声と共に、ガチャっと玄関のドアが開けられる。

いつも思うが、終始誰かが張り込んでいるのだろうか?

自動ドアみたいで、なんかスゴイ便利。


「これは旦那様! お帰りなさいませ、諸々の準備は整っております。」


「お、ありがとう。」


出迎えてくれたのは、セリアさんだった。

諸々の準備と言うのは、お茶や風呂の準備の事。

毎日そうなんだけど、俺のせいで『骨折り損のくたびれもうけ』のような事になってはいまいか?

ちょっぴり心配。


「ねえセリアさん、クレアさんは居るかい?」


「クレアならば、中庭のほうに居るはずでございます。 お呼びしてきましょうか?」


「いや、俺が行くよ。 ありがとう。」


これは完全に私用なので、俺が向かうべきだろう。

こうして、カイトは知らぬ内に使用人たちの仕事を奪っていく。

アリアがよく、彼に注意する案件だ。

使用人慣れしていないので、是正にはしばらく掛かるモノと思われる。


「おや旦那様、奥様はご一緒ではないのですか?」


「え、奥様?」


セリアさんの言う『奥様』

俺はこれまで、バルアから鉄道の地盤調査をしてきた。

これに抜かりは無い。

はて、そもそも俺は、どうして屋敷を出たんだったか?


「あ゛。」


「どうしたの、お兄ちゃん?」


「あ、アリア忘れてきたーーーーー!!」


「「「え゛ーーーーーーーーーーー!!???」」」


グレーツクにアリアを、そのまま置き去りにして来てしまった。

ヤバイ、どうしよう。

出発から3日が経っているから絶対に、怒ってるよな・・・

一体、どう弁解したモノか。

背中を走る悪寒に、カイトは体を震わせるのだった・・・・



3月より、更新頻度がさらに落ちるかもしれません。

あらかじめ、この場を借りて、ご報告させていただきます。

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