第253話・新たな仲間?
これからも、頑張っていきます。
感想などがありましたら、どんどんお寄せ下さい!
「カイト殿様、まだ探索をしているのですか? 早くしないと置いて行きますよ!?」
「待てよダリアさん、記録と平行作業なんだから、早くしても精度が落ちちゃ、意味がないだろう??」
「むー。じれったいですね~~!!」
ダリアさんは仁王立ちして、俺たちが追いつくのを待つ。
少し進んでは『早く、早く』と急かしてくる。
先ほどまで『疲れた』とプログラムされたロボットように、同じ言葉を連発していた彼女は、今は目を見張るように活動的だ。
表情からはどこか、余裕を感じる。
「ダリアさん、ご機嫌だね。」
「ふっふ~、今の私ならば、カイト殿様にも負けはしませんよ?」
そうかい、元気で何より。
でも勝負は、また今度にお預けね。
昼食以後、彼女はずっとこの調子だ。
見るからに肌はツヤツヤだし、精力に満ち溢れているし・・・・
まったく、何を食ってきたのやら。
「昼ごはんは、おいしかったかい?」
「ええ、なかなかあのような美味なるものは、そこらには居りません。 とても運が良かったです。」
恍惚の表情を浮かべながら、ダリアさんはやれ良き魔力の味がしただの、活きが非常に良かっただのと、説明を続ける。
やはり自然素材は、美味かったらしい。
苦笑を浮かべながらカイトは、それを聞きつつ地盤調査を続ける。
結局『魔族』とやらに遭遇することはなかったのが、俺の唯一の心残りだ。
まあ、こればっかりは時の運だし、シェラリータであったのはただの『目撃情報』だった訳だし。
だがしかし・・・とため息が漏れてしまう。
ここで何を思ったのか、慌てた様子でダリアさんが弁解し始めた。
「も、もちろん『いただきます』『ごちそうさま』は忘れておりません! 食材も骨の一片も残さず、完食致しましてございます!!」
「・・・・そう。」
俺が漏らした溜め息を、誤解したらしい。
『お残しダメ』と言いはしたが、まさか骨まで食い尽くすとはね。
俺には到底出来そうにない芸当である。
そこはさすがは、ダリアさんと言ったところか?
特に気にしては居なかったのだが、まあ、言いつけを守ってくれてありがとう。
いい返答を思いつかないので、せめて目一杯の笑顔を返してやる。
「そうだカイト殿様、お背中の2人をぜひ我が背中へ!! その方が『地盤調査』とやらに集中できるのではないですか!?」
「ええ!? いいよそんな・・・!」
どうせ後で『借りを返せ』とか言って、決闘を申し込む口実にする気なのだろう。
悪いがそんな見え透いた罠にかかる気は、毛頭ない。
「そのような事はいたしません! 決闘は正々堂々、お互い時間のある時に申し込ませていただきます!!」
「・・・・だから、心を読むなって。」
屈託のない笑顔をこちらへ向け、背中を差し出してくるダリアさん。
面倒くさい。
本人がヤル気なのだから、やらせてみようではないか。
ベアルまで、そう遠くはないし。
「じゃあダリアさん、よろしくね・・・。」
「私、歩く!!」
「「え・・・・?」」
背中の2人を下ろして、ダリアさんに引き継ごうとしたら、ヒカリが声を上げた。
自分が荷物になるのが、イヤという事だろうか?
まあ、それも良いか。
ベアルまで、そう遠くはないし。
「・・・という訳でダリアさん、このお客さんだけ、頼むよ。」
「はい!!」
獣人の方はダリアさんに預け、ヒカリとは逸れないように手をつないで、一行はベアルへとひた進む・・・
◇◇◇
「やーカイト殿様、着きましたね!!」
「はは、そうだね。」
ダリアさんのテンションが異様に高いまま。
一行はベアルの街の門をくぐった。
通過する時に門番の人、スゴイ驚いていたな・・・
何かを聞こうとして、ずっと口をパクパクさせていたっけ。
はっはっは。
「調査は済みましたか?」
「ああ、バッチリ。 これもダリアさんのおかげさ。」
ダリアさんが獣人さんを引き受けたおかげで負担が減り、より早くより正確に測定できた。
距離は短いが、とても感謝している。
「思う存分感謝して下さい! なんなら崇め奉っていただいてもかまいませんよ?」
「ははは・・。」
あまり調子に乗らないでほしい。
昨日までの2日、俺の背中でグッタリしていたのは、誰であるか?
それを思い出してくれ。
「お兄ちゃん、屋敷はこっちだよ??」
「いや、まずはこっちに用事があるんだ。」
「?」
門をくぐった俺たちは、屋敷とは反対の方向に歩いている。
向かっているのは、この街の市役所のような場所だ。
この街の警備兵団の人たちが運営しており、住民登録などを行う。
今連れている獣人の女性の身分証明証を、ここで作ろうというわけだ。
ここでは同時に職の斡旋も行っているので、アフターケアもバッチリ。
そういえば結局、この人の名前を聞けてなかったな・・・
「さ、着いたよ。 ここが君の目的地。」
「私の・・・・?」
ベアルはそれ程大きな街ではないので、ものの数分で目的地に到着した。
このような役所は、他の領には無いらしいので、それで驚いているのだろう。
「心配しないで、中に入って『住民登録したい』と言えば、すぐに話が通るようになっているから。」
「・・・。」
建物の入り口を指し示すカイト。
これで俺がこの人に出来ることは、全て終った。
隷属契約書もあのときに燃やしてしまったし、この人を縛るモノは何も無い。
これからは、どうか自由に生きてほしい。
「この街でもどこでも良いから、頑張ってね?」
「・・ま、待って! あの・・・」
「ん?」
この場を離れようとすると、獣人女性がそれを呼び止める。
まだ何かあったろうか?
・・・・あ。
「ごめんごめん、枷がそのままだったね。 すぐに外してあげるよ。」
ウッカリしていた。
これがあると、奴隷と分かって何かと不利になると言っていたっけ。
バカだなー俺は。
なぜ今まで、気がつかなかったのだろう?
「え、でもこの枷は特殊加工がされていて、どんな方法でも外せないと・・・」
バキン!!
「おし終了。 痛くなかった?」
「・・・。」
真っ二つにされた奴隷の証である枷が、彼女の足元に転がる。
今は残骸となり、原型はとどめていない。
なるほど、外せないなら力づくで壊せば良かったのか・・・
いや、そもそもコレは、そんなに簡単なものだったろうか・・・?
「じゃあ今度こそ、俺はこれで。 困ったことがあったらいつでも、ウチを訪ねてくるといいよ。」
「ま、待ってください! 私、メルシェードって言います。 まだ困っていませんけど、どうか私をご一緒に連れて行ってはくれませんか? きっとお役に立ちます!!」
再び呼び止められ、顔を赤らめながら何かを訴える彼女。
何これ、告白?
いや、どう考えても違うよな。
「・・・えーっと、つまり、どういう事?」
「ほほう、これはまた数奇な・・。」
「?」(ヒカリ)
頭に疑問符を浮かべ、カイトは説明を求めた。
彼はまた、一種の『病気』を振りまいたようである・・・
◇◇◇
「そっか、俺の屋敷で働きたいと言っていたのか。 まーこればっかりは、メイド長のクレアさんに聞かないとねぇー。」
「ご、ご迷惑おかけします・・・。」
俺の隣にいる獣人の女性。
名前を『メルシェード』と言うらしい。
森で魔物に襲われているところを拾い、現在に至る。
どうやら俺の屋敷で、ダリアさんのように働きたいらしい。
俺を貴族と見込んで、安定狙いでこんな事を言い出したのだろう。
見た目に反して、ハングリーな人だ。
「カイト殿様、なぜこの者を屋敷に置くのに、クレア様のご許可が必要なのですか?」
「何を言っているんだよダリアさん。 ウチの屋敷の中で働いている中で一番偉いのは、クレアさんじゃないか。」
クレアさんは、王宮から付いて来た、有能なメイドさんだ。
俺の屋敷では、使用人の取りまとめ役を買って出ている。
いわば社長。
彼女の許可なしに、新しい使用人は雇えない。
「カイト殿様は、その使用人を使う立場に居るのでは?」
「いや、この際それは関係ないでしょう?」
「・・・。」
関係、大アリである。
カイトは屋敷の中で一番上の立場に居る人間である。
クレアさんが社長なら、カイトは大統領。
少なくともこの領内では彼こそ法であり、秩序なのだ!!
文字通りの意味で。
カイト大公様は、露ぞ、そのような考えを持っては居ないようだが。
「さて着いたよ、ここがウチ。」
「ここが、ですか・・・」
ベアルの街のど真ん中に居を構えるその豪邸に、彼女は感嘆の声を漏らす。
本当は小さい方が落ち着いてよかったのだが、この領に来たときにあった住めそうな建物が、半壊した前領主様宅のここしか無かったのだ。
今さら建て直すのは勿体無いので、恐らくこの先もここが俺の家だろう。
この建物、結構頑丈そうだし。
「ただいまー。」
彼の帰宅を知らせる声と共に、ガチャっと玄関のドアが開けられる。
いつも思うが、終始誰かが張り込んでいるのだろうか?
自動ドアみたいで、なんかスゴイ便利。
「これは旦那様! お帰りなさいませ、諸々の準備は整っております。」
「お、ありがとう。」
出迎えてくれたのは、セリアさんだった。
諸々の準備と言うのは、お茶や風呂の準備の事。
毎日そうなんだけど、俺のせいで『骨折り損のくたびれもうけ』のような事になってはいまいか?
ちょっぴり心配。
「ねえセリアさん、クレアさんは居るかい?」
「クレアならば、中庭のほうに居るはずでございます。 お呼びしてきましょうか?」
「いや、俺が行くよ。 ありがとう。」
これは完全に私用なので、俺が向かうべきだろう。
こうして、カイトは知らぬ内に使用人たちの仕事を奪っていく。
アリアがよく、彼に注意する案件だ。
使用人慣れしていないので、是正にはしばらく掛かるモノと思われる。
「おや旦那様、奥様はご一緒ではないのですか?」
「え、奥様?」
セリアさんの言う『奥様』
俺はこれまで、バルアから鉄道の地盤調査をしてきた。
これに抜かりは無い。
はて、そもそも俺は、どうして屋敷を出たんだったか?
「あ゛。」
「どうしたの、お兄ちゃん?」
「あ、アリア忘れてきたーーーーー!!」
「「「え゛ーーーーーーーーーーー!!???」」」
グレーツクにアリアを、そのまま置き去りにして来てしまった。
ヤバイ、どうしよう。
出発から3日が経っているから絶対に、怒ってるよな・・・
一体、どう弁解したモノか。
背中を走る悪寒に、カイトは体を震わせるのだった・・・・
3月より、更新頻度がさらに落ちるかもしれません。
あらかじめ、この場を借りて、ご報告させていただきます。




